<多様性を体現するカマラ・ハリスに、トランプ政権下で分断したアメリカを団結に導く期待がかかるが> 民主党が黒人女性を副大統領候補にしようとしていることは、これまでも報じられてきた。しかし実際にそうなることとは、また別の話だ。 何カ月にもわたる熟考の末の決断だった。人種差別抗議デモが全米に広がるきっかけとなった警察官によるジョージ・フロイドの殺害事件と、黒人女性を副大統領候補にしようという民主党全体の組織的な動きに後押しされて、ジョー・バイデンは、カリフォルニア州選出のカマラ・ハリス上院議員を副大統領候補者に指名した。アフリカ系アメリカ人の女性として初めて副大統領候補に選ばれたハリスは、歴史に名を残す存在なった。 「大統領は多くの重要な決定を下す」と、ハリスの指名を発表するメールのなかでバイデンは述べた。「しかし最初に下すのは、副大統領候補を誰にするか、という決断だ。ドナルド・トランプとマイク・ペンスに戦いを仕掛け、2021年1月からこの国を率いるうえで力になってもらう人物として、私はカマラ・ハリスが最高だと判断した」 民主党予備選でハリスの上級顧問を務めたエミー・ルイスは、本誌の取材に「バイデンはアメリカの魂を取り戻すために戦っているし、カマラはまだ実現していないアメリカの可能性を示している」と語った。 いくつもの史上初 「これは歴史的かつ、転換点になりうる選択だ」と、やはりハリスの顧問だったセルジオ・ゴンザレスは言う。「バイデンは経験を象徴し、ハリスは優れた判断力を象徴する。この組み合わせは民主党の未来の世代への懸け橋となる」 ハリスは昨年12月に民主党の候補指名争いから離脱した。しかし、もしバイデンが勝利し、初の黒人女性副大統領が誕生したら、ハリスは民主党の次世代のリーダーとなるだろう。 カリフォルニア州オークランド生まれのハリスは、みずから「オークランドの子供」と名乗っているが、父親はインド出身、母親はジャマイカ出身の移民だ。サンフランシスコ地区の検事長に選ばれた最初の女性で、もちろん白人以外の女性でも史上初だった。その後、穏健派の共和党候補に逆転勝利をおさめ、カリフォルニア州司法長官に就任した最初の女性となった。 バイデン陣営の発表によると、ハリスは「特に上院司法委員会では、汚職、女性の権利、選挙干渉などの問題で、アメリカ国民のために戦う闘士として頭角を現した」という。 最近、ハリスは民主党の警察改革法案の策定を仲間の議員とともに主導した。そこには捜査の際に首を圧迫して容疑者を拘束する「チョークホールド」の禁止、警官が民事訴訟の対象になることを妨げる免責適用の制限、警察官による26歳の黒人女性の射殺事件につながった無断の家宅捜索を可能にする令状の廃止などが含まれている。 <関連記事:バイデン陣営はこれで「ターボ全開」? 副大統領候補ハリス指名の意味> ===== アメリカは今、同時発生した3つの危機にさらされている。国民全体の健康に影響をおよぼすパンデミック、終わりが見えない景気後退、警察による黒人差別の問題だ。ハリスはこうした現状下で、副大統領候補に選ばれた。 しかしこのことは黒人女性を元気づけている。教科書にはほとんど白人ばかりの大統領と副大統領の顔が並んでいるが、そこにもうすぐハリスの顔が加わるかもしれないからだ。 「黒人の少年少女だけでなく、あらゆる人種の子供たちすべてが、どんな外見であろうと、どこに住んでいようと、自分たちは十分に優れた、重要な存在であり、自分たちの声もまた代弁されるべきだと理解できるような、多様性の決定的な具体例になる」と、黒人女性運動家のアンジェラ・ライは語った。 パンデミックの状況次第ではあるが、両候補が手を取り合う伝統的なセレモニーを楽しみにしていると、民主党関係者は本誌に語った。バイデンとハリスがそれぞれの配偶者と共にステージに上がり、バラク・オバマ夫妻もそこに加わって、全員が手に手を取り、腕を上にあげるその姿は、テレビ画面を通じてアメリカ国民に前向きなメッセージを送るだろう、と。 人種の融合を象徴するステージ上の人々の姿は、トランプ政権下のホワイトハウスのイメージとは大きく異なって見えるだろう、と民主党関係者は言う。 「彼らの姿は新たな時代を示している」と、ゴンザレスは言う。「今の大統領(トランプ)は、特定の支持層にしか理解できない表現を用いるだけではない。人種差別的な発言によって人種と階級で国民を分断しようとしている。バイデンとハリスの組み合わせは、アメリカ全体を高揚させる。そこにあるのは国民同士の敵対ではなく、真の団結だ」 <関連記事:バイデン陣営はこれで「ターボ全開」? 副大統領候補ハリス指名の意味> 【話題の記事】 ・コロナ感染大国アメリカでマスクなしの密着パーティー、警察も手出しできず ・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ ・新たな「パンデミックウイルス」感染増加 中国研究者がブタから発見 ・韓国、コロナショック下でなぜかレギンスが大ヒット 一方で「TPOをわきまえろ」と論争に