<置き去りにされた形のパレスチナはUAEの「裏切り行為」と反発> ドナルド・トランプ米大統領は8月13日、イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)が和平合意を結んだと発表した。イスラエルとアラブ国家の間で和平合意が結ばれたのは、約25年ぶりのことだ。 ホワイトハウスが発表した3カ国の共同声明によると、トランプ、UAEアブダビ首長国のムハンマド・ビン・ザイド・ナハヤン皇太子とイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は同日、「イスラエルとUAEの完全な国交正常化で合意した」という。 声明は「この歴史的な外交成果によって、中東地域の和平は前進するだろう。これは地域の偉大な可能性を切り開くための、大胆な外交、3人の指導者の確固たるビジョン、そしてUAEとイスラエルの勇気の証だ」と述べ、こう続けた。「この3つの国はいずれも共通の難題に直面しており、今日の歴史的な成果は互いにとって有益なものだ」 UAEのユセフ・アル・オタイバ駐米大使も声明を発表。「今日の発表は中東地域と外交にとって重要な前進だ。これにより、イスラエルによるヨルダン川西岸の一部入植地の併合計画は即時停止され、暴力がさらに悪化する可能性が阻止される。アラブ連盟と国際社会が支持する(イスラエルとパレスチナの)二国家共存の実現の可能性も維持される。和平プロセスに新たな動きと可能性がもたらされる」と述べ、こう続けた。「ヨルダンの安定も強化するものだ」 「より良い未来を約束する合意」 イスラエルが併合を検討しているパレスチナ自治区のヨルダン川西岸地区と国境を接するヨルダンは、1994年にイスラエルと和平合意を締結。この他のアラブ国家では、イスラエルの隣国のエジプトも1979年に和平合意を結んでいる。 マイク・ポンペオ米国務長官は声明の中で、「イスラエルとエジプト、ヨルダンの間の平和条約は、まだその可能性を十分に発揮してはいない。だが1978年のキャンプデービッド合意と1994年のワディ・アラバ合意以降、エジプトとヨルダンはかなりの経済発展を遂げ、確かな平和の配当を享受してきた」と述べた。 ポンペオはさらにこう続けた。「イスラエルとUAEの間で今回結ばれた和平合意は、それと同じような潜在的可能性を持ち、中東地域全体のより良い未来を約束するものだ。アメリカは、この重要な成果を達成したイスラエルとUAEを祝福する」 ジャレッド・クシュナー米大統領上級顧問は、UAEに続いて近いうちにもう1カ国も、イスラエルとの和平合意にいたる可能性があることを示唆した。 現在22カ国(主にイスラム国家)で構成されるアラブ連盟は、1948年にユダヤ人が建国したイスラエルに反発し、第1次中東戦争を仕掛けた。同時に内戦状態にあったイスラエルから大勢のパレスチナ人が住むところを追われ、他のアラブ諸国に避難した。アラブ諸国は1967年と1973年にもイスラエルと大規模な戦争になり、パレスチナ人の抵抗運動とイスラエル軍の衝突は今日に至るまで続いている。 トランプは1月に、ネタニヤフと連携して新たな中東和平案を発表。中東地域の多くの国はこの和平案に反発し、ホワイトハウスでの発表式典に代表者を派遣したのは3カ国だけだったが、UAEはその1つだった(あとの2カ国はバーレーンとオマーン)。パレスチナはこの和平案への合意を拒否した。 <関連記事:【レバノン大爆発】日頃の戦争を上回る最大の悲劇に団結する中東諸国> ===== UAEのシェイク・モハメド首相は13日に声明を発表し、今回の合意は「イスラエルによるパレスチナ領土のさらなる併合を阻止するために結んだ」と述べ、「UAEとイスラエルは、協力と二国間関係の樹立に向けたロードマップの策定でも合意した」と続けた。 トランプはツイッターで「アメリカの素晴らしい友人である2つの国」の間で「きわめて大きな進展」が達成されたと投稿。ネタニヤフもこのツイートをシェアし、「歴史的な日だ」とコメントした。 UAEなどの湾岸諸国は、今もパレスチナの国家樹立の大義を支持すると公言しているが、近年は対イラン問題を最優先課題と考えるようになりつつある。イランが国外の複数の組織への支援を拡大し、ミサイル攻撃などの戦闘能力を強化しているからだ。 パレスチナは合意を批判 米国務省の前イラン特使であるブライアン・フックは13日、イランに対するトランプ政権の「最大限の圧力」政策を称賛した。トランプは2015年、中国、フランス、ドイツ、ロシア、イギリスと共に参画していたイラン核合意からの離脱を表明。一方的な制裁の導入を始め、イランのシーア派政権を孤立させることへの国際社会の支持を得ようとしてきた。「私たちが今日、目の当たりにしているのは新しい中東だ」とフックは語った。 しかしパレスチナの各組織からは批判の声が上がっている。レバノンのメディア、アル・マヤディーンによれば、パレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長が率いる政治組織ファタハのメンバーであるアッバス・ザキは、今回の動きについて、パレスチナ人への「裏切り行為」だと批判。ダマスカスを拠点に活動する左派組織、パレスチナ解放人民戦線のアブ・アハマド・フアド副代表は、UAEがパレスチナ人を裏切り、イランに陰謀を企てていると非難した。 カタールの衛星テレビ局アルジャジーラによれば、ガザを拠点に活動するスンニ派組織ハマスのファウジ・バルフーム報道官は、イスラエルはパレスチナ人への犯罪に対して報酬を与えられていると反発した。 <関連記事:【レバノン大爆発】日頃の戦争を上回る最大の悲劇に団結する中東諸国> 【話題の記事】 ・コロナ感染大国アメリカでマスクなしの密着パーティー、警察も手出しできず ・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ ・新たな「パンデミックウイルス」感染増加 中国研究者がブタから発見 ・韓国、ユーチューブが大炎上 芸能人の「ステマ」、「悪魔編集」がはびこる   ※画像をクリックすると楽天ブックスに飛びます2020年8月11日/18日号(8月4日発売)は「人生を変えた55冊」特集。「自粛」の夏休みは読書のチャンス。SFから古典、ビジネス書まで、11人が価値観を揺さぶられた5冊を紹介する。加藤シゲアキ/劉慈欣/ROLAND/エディー・ジョーンズ/壇蜜/ウスビ・サコ/中満泉ほか