<文在寅大統領は、就任した17年以降、公式の場の演説で北朝鮮との対話と南北交流の推進を強調してきたが、今年の光復節の演説では日本との対話を強調した。その事情とは...... > 2020年8月15日、文在寅大統領は、日本の統治から独立解放を記念する光復節の演説で、基本的人権を定めた韓国憲法10条に触れつつ、日本との対話を進めたい考えを強調した。一方、就任以来、繰り返してきた南北交流への言及は影をひそめた。 例年に比べて、日本との対話を強調した文在寅大統領 文在寅大統領は、就任した17年以降、公式の場の演説で北朝鮮との対話と南北交流の推進を強調してきた。日本については、わずかに触れる程度だった。 しかし、今年は日本との対話を強調し、北朝鮮に関しては既に合意した事項を点検しながら半島の平和と繁栄を目指すと述べたに過ぎなかった。 日韓関係に関連して、日本の輸出規制を克服して飛躍の機会にしたと述べ、また、韓国政府はいつでも日本政府と向き合う準備ができており協議の扉を開放しているなど日本と対話する姿勢を強調した。 韓国憲法10条は、国民の尊厳や幸福を追求する権利など、基本的人権を保障する国の義務を定めている。 日韓関係は、2018年10月、韓国の最高裁に相当する大法院が、新日鉄住金に対し、4人の原告に賠償金の支払いを命じた判決を機に悪化した。 文大統領は、日本政府が韓国向け輸出管理強化を発表した昨年7月、4人の原告のなかで唯1人存命している李春植(イ・チュンシク)さんの「私の(訴訟を起こした)せいで韓国が損をするのでは」という発言を取り上げて、個人を守ることが国の損害になるということはないと述べ、人権を守る姿勢を強調した。 日本と関連するビジネス従事者に向けたメッセージ? 日本との対話は公式演説のたびに繰り返されてきた発言であり、国内向けメッセージと見ることができそうだ。 韓国の世論調査会社ギャラップが8月11日から13日に行った調査で、文在寅大統領の支持率は就任以来最低を記録した。支持率は39%、不支持率は53%だった。失業者数が過去最高を更新し、不動産価格の高騰で文大統領の最大支持層である20代から30代のマイホーム取得が困難になった。 文政権に不満を持つ人たちに、朴槿恵前大統領の復帰を求める朴正煕元大統領の信奉者と日韓ビジネス従事者が同調した。韓国では、製品や部材の輸入、日本製品の販売者、観光業に加え、日本製品を使っている建築業者や製造業など、日本と関連するビジネス従事者は少なくない。 日本製品販売業や観光業は昨年のボイコット運動で損害を被ったところに、コロナ禍が重なり、破綻が相次いだ。文大統領が強調した日本との対話は、日本と関連するビジネス従事者に向けたメッセージと受け取れる。 ===== 文在寅大統領の退陣を求める集会も 例年の8月15日、ソウル・光化門広場を中心に大規模な反日集会が開かれてきた。ボイコットジャパン旋風が巻き起こった2019年8月15日、その光化門広場で文在寅大統領の退陣を求める集会が行われた。 慰安婦支援を標榜する正義記憶連帯が旧日本大使館前で主催した反日集会は、主催者発表2万人が集まったが、はるかに上回る5万人(主催者発表5万人、警察発表4万人)が文在寅大統領の退陣を求めた。 保守系団体は今年の光復節も文在寅大統領の退陣を求める集会を計画した。26の保守系団体が申告した参加予定者は昨年を大きく上回る12万人に達したが、ソウル市が待ったをかけた。新型コロナウイルスの集団感染が確認されたのだ。 ソウル市は13日、集会禁止命令を発令し、強行する団体に罰金を科すと通知した。ソウル市と警察は、8月15日、光化門広場にバリケードを設置し、大規模集会のたびに参加者が陣取る世宗会館の入り口を封鎖した。 保守系団体は集会を中止すると公式発表した一方、集会が行われるという噂を流し、多くの人が広場を目指した。地下鉄駅は通勤ラッシュを超える混雑となり、周辺道路は遠方の参加者を乗せた十数台の貸切バスが列を成した。 一部で参加者と警察の小競り合いがあったが、全国の高校や中学の校旗が並べられた場所では、記念写真を撮る同窓生の姿が見られ、広場に隣接するカフェや駅近くで販売していたヤクルト、国旗を販売する屋台に向かう人々の姿があった。 撮影:佐々木和義 撮影:佐々木和義 広場周辺が人々で溢れかえり身動きが取れなくなると、警察はバリケードを一部解除したが、雨足が強まって建物の軒下や駅に避難するなど、まとまりがない集まりに終始した。 今年の光復節は大きな混乱はなく、また、成果もなかった 一方の反日団体も大規模集会を開催することはなかった。韓国検察が、例年、大規模な反日集会を主導してきた正義記憶連帯の前理事長で実質的代表である尹美香(ユン・ミヒャン)国会議員を足止めしたのだ。検察は13日午後、不正会計の容疑で尹美香氏に出頭を命じ、14日未明まで14時間半に渡って取り調べを行った。 韓国のデモや集会は時として暴動に向かうが、ソウル市、警察、検察の連携で、20年の光復節は大きな混乱はなく、また、成果もないまま幕を閉じた。光復節翌日の8月16日、ソウルで141人の新型コロナウイルス感染者が確認され、韓国政府は首都圏の防疫レベルを引き上げた。