<抱えている責任や住環境によって在宅勤務の負担は人それぞれ。従業員の健康維持のために企業が知っておくべきポイントとは? 本誌「コロナストレス 長期化への処方箋」特集より> 新型コロナウイルスの感染拡大によって世界中で一気に普及した在宅ワーク。感染防止のメリットは大きいが、一方で社員の健康面に深刻なリスクを引き起こす恐れもある。 コロナ禍で初めてリモートワークを経験した人も多いなか、従業員の健康維持のために企業は何をすべきか。人事管理の研究者として企業の取り組みを調査してきた私たちは、社員の健康を守るために企業が知っておくべき4つのポイントをリストアップした。 1. 柔軟な働き方を認める コロナ禍以前のアメリカで、日常的に在宅で働いていた人はわずか5%ほど。リモートワーク開始後の負担は、抱えている責任や住環境によって人それぞれだ。例えば学校や保育園が閉鎖された影響で、幼い子供の親たちは仕事と育児の両立に苦慮している。高齢者の介護をしている人も同様だ。 そこで重要になるのが、社員それぞれのニーズに対応する柔軟性だ。手始めに、部下と率直に対話する機会を設けるよう管理職に義務付けるべき。いつ、どんな形で働けるのかを確認し(ただしプライベートへの介入はNG)、締め切りに余裕を持たせる、育児に時間を回せるよう1日当たりの勤務時間を調整するなど幅広い選択肢を提示するといい。 その際に大切なのは、こうした指示を会社のトップが発すること。中間管理職の中には柔軟な勤務体系を快く思わない人もいるためだ。 また、通常のオフィス勤務が可能な地域でも、勤務時間を短縮する、1日の労働時間を延ばして勤務日数を減らす、休職を認めるといった柔軟な対応を提示する必要がある。 2. バーチャルな交流を推進する 在宅ワークに慣れていない人は社会から切り離された感覚に陥るもの。同僚との日々のやりとりや冷水器前でのおしゃべり、仕事後の一杯をオンラインで再現するのは容易ではないが、そうした交流が社員の健康に関係することは、さまざまな研究でも明らかになっている。 企業は社員に対し、オンラインでのコーヒータイムやランチ会、仕事後の飲み会などの機会を設けるよう働き掛けるべきだ。 3. 社員間のコミュニケーションをサポートする ビデオカメラやチャットアプリなど適切なツールがあれば、リモートワークは順調に進むと考えがちだが、そう簡単な話ではない。コミュニケーションの方法やIT機器の使い方に関する好みが食い違い、衝突の種となる場合もある。 メールを好む人もいれば、Slack(スラック)のようなチャットツールですぐに返信したい人、さらには昔ながらの電話が一番という人もいる。私たちの研究でも、ストレスの強い時期には特に、リモートワークによってこうした問題が一段と深刻化することが分かっている。 企業としてできるのは、オンラインでの効果的な働き方に関する会合をウェブ上で開催すること。その際、ITツールに関する全体ルールを上司が提示し、コミュニケーションをめぐる個人間や文化間の違いへの意識を高めるよう働き掛けるといい。 4. 前向きなストレス対処法を提供する コロナ禍による不安やストレスの高まりは、深刻な事態を引き起こしかねない。人は新たなストレスにさまざまな方法で対処しようとするが、なかにはアルコール摂取の増加といった不健康なものもある。 現状では社会活動やスポーツクラブへの参加支援といった平時のような福利厚生を提供するのは難しいが、代替となるアプリやウェブサイトから厳選したサービスを紹介し、その費用を企業が負担すべきだ。例えば、目の前のことだけに集中するマインドフルネスのトレーニングは、看護師のようなストレスの高い職種を含む従業員のメンタルヘルスの改善に有効であることが分かっている。 健康リスクと予防法、そして提供可能な支援策について従業員に明確な情報を伝え続けること──それこそがコロナ時代の経営者に求められる社員防衛術だ。 Paula Caligiuri, Distinguished Professor of International Business and Strategy, Northeastern University and Helen De Cieri, Professor of Management, Monash University This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article. <本誌2020年8月25日号「コロナストレス 長期化への処方箋」特集より> 【関連記事】ズーム疲れ、なぜ? 脳に負荷、面接やセミナーにも悪影響 【関連記事】頭が痛いコロナ休校、でも親は「先生役」をしなくていい ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます2020年8月25日号(8月18日発売)は「コロナストレス 長期化への処方箋」特集。仕事・育児・学習・睡眠......。コロナ禍の長期化で拡大するメンタルヘルス危機。世界と日本の処方箋は? 日本独自のコロナ鬱も取り上げる。