<これまで注目を集めることがなかった各種議員連盟の集会などを大勢の人がライブ配信で視聴した> 11月の米大統領選に向けた野党・民主党の全国大会が、8月17日に始まった。史上初めての「バーチャル党大会」となった今年、党関係者や熱心な支持者たちには不安もあったが、この結果は誰も予想していなかった。党の運営に不可欠な全米各地の支持団体からの視聴者が爆発的に増えたのだ。 ヒスパニック議員連盟のライブ配信の視聴者は1万673人、女性議員連盟は1万1039人、労働評議会は1万4176人、黒人議員連盟は1万5910人が視聴した。 2016年にフィラデルフィアで開催された民主党全国大会では、ヒスパニック議員連盟の集会の参加者は50人程度。黒人議員連盟も100人に満たなかった。 公共政策コンサルティング会社レーベン・グループ(ワシントン)の共同創業者で、ヒスパニック議員連盟の集会に参加したエストゥアルド・ロドリゲスは、「これは異例の事態だ」と語る。彼は本誌に対して、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)がその一因だと語った。 コロナ禍による新習慣 「パンデミック以前は、ヒスパニック議員連盟の主催者たちが『ミーティングはZoom(ズーム)でやります』と言っても、仕事や夏の休暇が参加の妨げになった」とロドリゲスは言う。「1万1000人もの人が視聴することはなかっただろう。だが今は多くの人が外出を自粛しており、ほかの人との交流を求めている」 民主党関係者たちは、大勢の人が全国大会に「参加」した大きな理由として、アメリカ人がこれまで以上にライブ配信に慣れつつあることを挙げた。コロナ禍によって、ライブ画面でのコミュニケーションを余儀なくされていることがその一因だ。 「ネット動画でのやり取りは今や普通のことになっている」と、民主党全国委員会の幹部(市民参加担当)であるホルヘ・ネリは本誌に語った。「2016年に同じことができたかどうかは分からない。だが今では仕事も学校も、日常生活でもバーチャルのコミュニケーションが当たり前だ」 党大会の計画立案者たちは、全米から大勢の国民が大会に参加することで、大会の透明性が高まり、民主党が誇りにしている多様性や社会の一体性への注目をさらに高めることができると言う。党大会をバーチャルにせざるを得ないことが明らかになった時点から、彼らはこれらの問題に重点を置くことを計画していた。 <参考記事>黒人女性カマラ・ハリス、実は黒人から人気がない? <参考記事>【パックン予測】カマラ・ハリスは2024年のアメリカ大統領になる! ===== アメリカの政党大会の要である華やかさや荘厳な雰囲気が感じられなくて残念だと考える人々もいるだろう。バーチャル党大会でも、典型的な「党大会効果(党大会後に指名候補の支持率が上昇する現象)」が得られるのか。それについては民主党も共和党も、党大会後の世論調査の結果が出るまでわからない。 だが主催者にとっては、バーチャル党大会にはひとつ大きな利点がある。著名な政治家がリアルの会場に出入りする必要がないから、送迎や警備の手配に苦慮することもないし、それに伴うコストもかからない。そのため今年の党大会には、著名なゲストをたくさんバーチャルで「会場に招く」ことができ、しかもメインステージに登壇して貰うだけでなく、各議員連盟や支持者集会などのより小規模なイベントにも「参加」してもらうことができた。 有権者が身近に 動画視聴に関する統計値は、暫定的だが驚きの数字だ。党大会のウェブサイトを訪れた人は、平均1時間を閲覧・視聴に費やしている。支持者集会の平均的な長さも1時間だ。TikTok(ティックトック)のような短い動画が人気のこの時代に、多くの人がコンピューターやスマートフォンで、(これまでは見もしなかった)党大会の各種セッションを最後まで見たことになる。 2016年の民主党大会のパネル討論会に参加した活動家のジュリッサ・アルセは本誌に、当時その討論会にいったい何人が参加するだろうかと思った記憶があると語った。 アルセは今年の党大会について、より多くの人が視聴しているプライムタイムのプログラムに著名なヒスパニック系の議員がいないと、バイデン陣営や大会事務局を批判してきた。だが自宅からヒスパニック議員連盟の集会を視聴して多くの有権者と意見交換した彼女は、考えを改めざるを得なかった。党大会は今後もライブ配信を駆使し、有権者が自らの生活に影響を及ぼすプロセスに参加し、学ぶ機会をより多く提供していくべきだ、と。 「多くの場合、私たちは実際の議論に参加して意見を交わすことができなかった」とアルセは語った。「だから意見を聞くことができて嬉しい」 <参考記事>黒人女性カマラ・ハリス、実は黒人から人気がない? <参考記事>【パックン予測】カマラ・ハリスは2024年のアメリカ大統領になる! ===== 民主党の大統領候補に指名されたジョー・バイデンは18日、バーチャルで激戦州のペンシルベニア州とフロリダ州の民主党員に向けて遊説を行った。 「皆さんはこれまでで最もクリエイティブで開放的な党大会の一部となっている」と、バイデンはフロリダ州の代議員らに語りかけた。「今後もう、過去に行われていたのとまったく同じ形での党大会に戻ることはないかもしれない」 アメリカの政治もバーチャルにシフトする、その始まりかもしれない。 【話題の記事】 ・科学者数百人「新型コロナは空気感染も」 WHOに対策求める ・中国のスーパースプレッダー、エレベーターに一度乗っただけで71人が2次感染 ・傲慢な中国は世界の嫌われ者 ・「中国はアメリカに勝てない」ジョセフ・ナイ教授が警告 ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます2020年8月25日号(8月18日発売)は「コロナストレス 長期化への処方箋」特集。仕事・育児・学習・睡眠......。コロナ禍の長期化で拡大するメンタルヘルス危機。世界と日本の処方箋は? 日本独自のコロナ鬱も取り上げる。