<性差別への過剰な反応が、男女互いの批判の応酬になった──> 昨年の韓国コンテンツ輸出額で、全体の67%とダントツの1位となった韓国ゲーム市場。また、『梨泰院クラス』など数々の作品が映像化され、今年あるweb漫画会社の月間売り上げが史上初の1億ウォンを突破したことが話題となった韓国漫画業界。 この二つの韓国人気コンテンツの勢いはこれからも止まることを知らず、右肩上がりが予想される一方で、先月から今月にかけてゲームとweb漫画で女性嫌悪とされる作品が発表され議論を呼んでいる。 ネット業界大手カカオが運営するカカオゲームで配信されているRPGゲーム『ガーディアン・テイルズ』は、先月30日にゲーム内の新たなイベントステージを公開した。しかし、その直後からネットを中心に批判の的となってしまった。 女性嫌悪vs,フェミニスト嫌悪 問題になったRPGゲーム『ガーディアン・テイルズ』の画面より カカオゲームズ/ YouTube ことの発端は、このゲーム内のセリフで「雑巾のようなXX」という女性を卑下する意味を含む単語が含まれていたことだ。韓国で「雑巾」は娼婦を意味する隠語だ。 これを見た女性プレーヤーを中心とした人々がネット上で批判し始め、さらに、このゲームの年齢設定は「12歳以上プレイ可能ゲーム」であり、放送禁止用語は適切でない表現との声も上がった。騒動になり始めると、カカオゲームスは直ちにこの文章を「ピエロのような者」というセリフに修正した。 女性嫌悪の表現から始まったこの騒動。しかし、今度は「ピエロ」という単語が男性嫌悪の表現であると指摘が集まりだした。実は、「광대(ピエロ)」という単語は、一部のフェミニストの間で男性を誹謗するときに使われており、映画「ジョーカー」の主人公から、"恋愛できない男性"の事を馬鹿にしたようにピエロと呼んでいるのだという。 これに怒った男性たちがネット上で呼びかけ、アプリダウンロード元のGoogle Playストアで評価を下げる"評点テロ"が開始された。レビューにも「フェミニストのゲームである」「フェミニズム的修正にがっかりした」などの言葉が付くようになり、それまで5点満点中最高4.9点まで獲得していたのにもかかわらず、一気に評点テロにより1.8点まで下げられてしまった。 ===== 騒動から6日後の8月5日、カカオゲーム側が公式声明を掲載して謝罪した。性別嫌悪に取られる単語を使用したことについては、故意ではないことを強調し、さらに「(ゲーム開発チームの中に)特定の団体に所属している者や、偏向的な考えをもっている職員は一人もいない」「現在信頼回復が難しいと判断して、新しい担当者に入れ替えを行った」と発表した。 急速にフェミニズム意識の高まりを見せる韓国では、性別嫌悪とも取れる表現にとても敏感だ。しかし、今回の騒動の背景にはゲーム業界で働く女性たちの問題も関係しているように思える。 ゲーム業界そのものに問題が 先月14日、全国女性労働組合をはじめとした市民団体が、世宗文化会館前にてゲーム業界の女性嫌悪を根絶するための対策作りを訴えるデモを行った。全国女性労働組合が先月18日発表した調査によれば、ゲーム開発に参加した女性の中でMeToo運動など「女性の人権について、支持すると表明をした後、不当な待遇にあった女性労働者」は、この5年間で少なくとも14人もいたという。 有名な例を挙げると、2016年ゲーム声優であるキム・ジャヨン氏は、女性コミュニティグループのTシャツを着た写真をSNSにアップしたという理由で、決定していたゲームの出演を降板に追い込まれた。 また、あるゲーム会社に勤務していた女性職員は、SNSのフェミニズム関連の書き込みに「いいね」を押したり、女性の人権関連のハッシュタグを付けて写真をアップしたりしただけで、不当な解雇や職場移動を命じられたという。 国家人権委員会は、今月8日報道資料を通じ、これらの件に関して文化体育観光省と韓国コンテンツ振興院に「実態を調査し、差別的慣行を根絶するための対策をとるよう勧告した」と発表した。 ===== 84の『復学王』より、ヒロインがラッコの真似をする場面。 YTN News / YouTube 人気web漫画家が女性差別? 一方で、web漫画での女性嫌悪表現も注目を集めている。問題になったのは、人気漫画家ギアン84(ギアンパルサ)氏が連載中の『復学王』8月11日掲載分だ。 インターン生だったヒロインが、会社の飲み会で場を盛り上げるため、お腹に乗せた貝をラッコのように割ってみせ、これを見た男性チーム長は彼女を社員に採用する。その後、チーム長は「俺は40だけどまだ結婚もしてないじゃないか」と言い、男性主人公は「寝たんですか?」と、あたかもヒロインがチーム長と性的関係をもって就職口を得たような表現を描いた。 この内容が掲載されネット上で批判が集中しだすと、韓国大統領府のWebサイトにある国民請願のコーナーに連載中止を求める請願が投稿された。読んでみると、文章内には直接的に作家の名前や作品名を出してはいないが、誰が見てもこの騒動の中心にある漫画『復学王』を指していることがわかる。 掲載元であるNEVERウェブトゥーンは、すぐに問題のカットを削除し修正したのだが、もともと漫画家のギアン84氏は、バラエティー番組『私は一人で暮らす』にレギュラー出演するなどメディアに数多く登場していた人気者であり、現在番組の公式HPに出演番組降板の要請が相次いでいるという。 差別への過剰反応は新たな差別につながる 嫌悪や差別問題に声を上げ続けることは大事だが、そこへ極端に過剰反応しはじめると逆差別につながる可能性もあるので何事もバランスが大事だ。 ゲーム業界は、今後も韓国輸出コンテンツの中で大事な稼ぎ頭になる分野だろう。また、漫画をオンラインで読むことが当たり前になり、もともとweb漫画に力を入れていた韓国は、多くの作品を翻訳し世界各国に輸出している。 世界を相手にこれからも大勢を楽しませるコンテンツを開発していくためには、男女の嫌悪や差別などで足の引っ張り合いをしている場合ではない。互いに手を取り合って、個人や会社を非難や攻撃するのではなく、問題があれば指摘して修正してもらうようにして、嫌悪などのないコンテンツ作りができる環境になることを期待したい。 【話題の記事】 ・コロナ感染大国アメリカでマスクなしの密着パーティー、警察も手出しできず ・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ ・新たな「パンデミックウイルス」感染増加 中国研究者がブタから発見 ・韓国、ユーチューブが大炎上 芸能人の「ステマ」、「悪魔編集」がはびこる   ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます2020年8月25日号(8月18日発売)は「コロナストレス 長期化への処方箋」特集。仕事・育児・学習・睡眠......。コロナ禍の長期化で拡大するメンタルヘルス危機。世界と日本の処方箋は? 日本独自のコロナ鬱も取り上げる。 ===== 人気web漫画家が女性差別? 女性嫌悪の表現があるとして批判を受けているWeb漫画家のギアン84と問題となった『復学王』 YTN News / YouTube ゲームの中でも女性蔑視のセリフが...... 女性嫌悪の表現があるとして問題になり、修正すると今度は男性蔑視の表現があると散々だったRPGゲーム『ガーディアン・テイルズ』 カカオゲームズ/ YouTube 【話題の記事】 ・コロナ感染大国アメリカでマスクなしの密着パーティー、警察も手出しできず ・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ ・新たな「パンデミックウイルス」感染増加 中国研究者がブタから発見 ・韓国、ユーチューブが大炎上 芸能人の「ステマ」、「悪魔編集」がはびこる