<心に傷を負ったコメディー俳優の半自伝的映画が話題のアパトー監督に聞く> ジャド・アパトー(52)は『40歳の童貞男』や『無ケーカクの命中男/ノックトアップ』など爆笑コメディーの監督として知られるが、真面目な作品もうまい。全米で配信中の『ザ・キング・オブ・スタテンアイランド』も、そんな才能が光る一本だ。 基になったのは、自殺騒動やリハビリ施設への入所などスキャンダルも多いコメディアン、ピート・デビッドソンの半生。自堕落な若者が幼い頃に亡くした父の死に向き合おうとする姿を描く(デビッドソンの父は消防士で、9.11同時多発テロで殉職した)。 「全てのせりふで笑いを取ろうとしなかったのは初めてだった」と、アパトー。「これまで作った中で最も正直な部類に入る映画」とも言うが、それはこの半自伝的映画で主演するデビッドソンの演技に負うところも大きい。 アパトーに言わせれば「たくさんのディープな対話」から生まれたデビッドソンの演技は、驚くほど悲哀に満ちて......でも、やっぱり笑わせる。本誌H・アラン・スコットがアパトーに話を聞いた。 * * * ――この作品で観客が一番驚いたのは何だと思う? ピートは心の広い素敵な奴だが、問題を抱えている。コメディーをやってきたのも、心の傷から自分を守るため。シニカルな笑いは痛みを表現する手段なんだ。でも彼が具体的に何に苦しんでいるのか、それを知る人は少ない。ピートにとってこの映画は、内面を見せる場になった。あそこまで弱い自分をさらけ出すなんて、本当に勇気がある。 ――この映画を撮りたいと思った理由は? 何よりピートという相棒を得たことにわくわくした。『エイミー、エイミー、エイミー! こじらせシングルライフの抜け出し方』(2015年)の出演者を検討していて、主演のエイミー・シューマーに誰が面白いと思うかって聞いたんだ。彼女が真っ先に挙げたのがピートだった。 だからピートにちょい役で出てもらった。ブレイクしそうな役者に出演してもらうのは楽しい。端役でも、「あいつはビッグになるって知ってたよ」と後で威張れるものね。 その後、何か一緒にやろうとピートと話し合いを重ねるうちに、彼の身の上と気持ちを聞いた。この映画はフィクションなのだけれど、真実にもあふれている。 <関連記事:どの俳優も共演者を6人たどればケビン・ベーコンに行き着く!?> ===== ――コメディアンがヒューマンなドラマで名演技を見せるのはなぜ? コメディアンには正直な人が多い。裏表がなくて、とても知的だ。こうした資質は演技に欠かせない。だから、歴史に残る名演を見せることもある。『トゥルーマン・ショー』のジム・キャリーだとか、『パンチドランク・ラブ』のアダム・サンドラーだとか。シリアスなドラマでは、必ずしも笑いは必要ではない。でもコメディーでは、シリアスな演技と笑いの両方が必要だ。 ――9.11は、映画におけるニューヨークの描き方にどう影響した? 今回消防署での撮影で、あの事件に深い関わりを持っていたり、あのとき大切な人を失った人に大勢出会った。テロからまだ数カ月しかたっていない気がした。あんなに勇敢な人々を、僕はほかに知らない。一緒にいると、自分が変わるのが分かった。 ――新型コロナウイルスの大流行は、いい意味でコメディーを変えるだろうか。 コメディーの見方は確実に変わるね。コロナの力で、今まで隠れていた人間の本質があらわになるから。 <本誌2020年7月14日号掲載> <関連記事:どの俳優も共演者を6人たどればケビン・ベーコンに行き着く!?> 【話題の記事】 ・コロナ感染大国アメリカでマスクなしの密着パーティー、警察も手出しできず ・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ ・新たな「パンデミックウイルス」感染増加 中国研究者がブタから発見 ・韓国、ユーチューブが大炎上 芸能人の「ステマ」、「悪魔編集」がはびこる   ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます2020年8月25日号(8月18日発売)は「コロナストレス 長期化への処方箋」特集。仕事・育児・学習・睡眠......。コロナ禍の長期化で拡大するメンタルヘルス危機。世界と日本の処方箋は? 日本独自のコロナ鬱も取り上げる。