<「プーチンの毒殺」は失敗したのか?> ドイツ・ベルリンにあるシャリテー大学病院の医師らは8月24日、ロシアの野党指導者アレクセイ・ナワリヌイについて、「コリンエステラーゼのはたらきを阻害する」物質による中毒症状が出ていると認めた。 シャリテー大学病院は、ツイッターに投稿した声明のなかで、「アレクセイ#Navalny(ナワリヌイ)は、#charitberlin(ベルリン・シャリテー病院)で集中治療を受けており、現在もまだ、治療のための人工的な昏睡状態にある」と書いている。 「臨床的知見では、コリンエステラーゼ阻害剤のグループに属する物質による中毒症状が示唆される。具体的な物質はまだ不明で、さらに広範な検査を開始した」 同病院のツイートによれば、毒物の影響は、「いくつかの独立系試験所で実施された、複数の検査により確認された」という。 「この診断の結果、患者は現在、解毒剤のアトロピンによる治療を受けている」と同病院は続けている。 コリンエステラーゼ阻害剤のなかには、殺虫剤や化学兵器等として使われるものがあるほか、アルツハイマー病の治療薬も存在する。アルツハイマー協会(ALZ.org)によれば、「コリンエステラーゼ阻害剤は、記憶、思考、言語、判断、その他の思考プロセスに関連する症状を治療するために処方される」という。この種類の薬に伴う副作用としては、「悪心、嘔吐、食欲減退、排便頻度の増加」などがある。 害虫駆除剤と似た物質? 一方、コーネル大学、ミシガン州立大学、オレゴン州立大学、カリフォルニア大学デービス校の研究者らが発表した報告書では、次のように説明されている。「有機リン(OP)系やカーバメート(CM)系などある種の化学殺虫剤のグループは、コリンエステラーゼのはたらきに干渉、もしくは『阻害』することで、害虫に対して効果を発揮する。コリンエステラーゼ阻害剤の効果は害虫駆除を意図したものだが、こうした化学物質の一部は人間に対しても毒性を持ち、有害となる場合もある」 シャリテー病院はプレスリリースのなかで、ナワリヌイの治療にあたっている医師団は、「ナワリヌイの妻とつねに連絡をとれる状態を保っている」と述べている。「患者の妻との綿密な話しあいを経て、シャリテー病院は、症状の詳細を公表するという決断が、患者本人の希望に沿っていると確信している」 シャリテー病院のプレスリリースが発表される直前、ドイツ政府は、ナワリヌイが毒を盛られた可能性が「きわめて高く」、警護を強化する必要があると述べた。 <参考記事>ロシア反体制派ナワリヌイ、何度も毒物攻撃を生き延びてきた <参考記事>ロシアがベラルーシに軍事介入するこれだけの理由 ===== アンゲラ・メルケル首相の報道官シュテフェン・ザイベルトは8月24日に報道陣の前で、「われわれが対応している患者は、毒を盛られた可能性がきわめて高い」と語った。「毒物による攻撃だったことはほぼ確実と見られるため、警護が必要だ」 ナワリヌイは、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領を批判していることで知られる。ナワリヌイの異変については8月20日、ナワリヌイの広報担当者であるキラ・ヤルミシュが公開した一連のツイートで最初に伝えられた。 「アレクセイ(ナワリヌイ)は、茶に毒を盛られたとわれわれは推測している。当日の朝から、彼はそれしか飲んでいなかった。医師たちの話では、熱い液体により毒物の吸収が速まったようだ」とヤルミシュはツイッターに書いている。 ナワリヌイは最初シベリアの病院で治療を受けていたが、ロシアの医師が信用できない家族と友人からの要望を受け、ドイツに移送された。 ナワリヌイを治療していたシベリアの病院は、毒を盛られたとの主張に異を唱えていた。8月21日には、同病院の副主任アナトリー・カリニチェンコ医師が、患者の血液や尿からは毒物の痕跡は検出されなかったと述べた。 カリニチェンコは地元の記者に対して、「患者が中毒症状だったとは考えていない」と語ったと、CNNは報じている。 シャリテー病院によれば、ナワリヌイは重体だが、「現時点では命の危険はない」という。 (翻訳:ガリレオ) <参考記事>ロシア反体制派ナワリヌイ、何度も毒物攻撃を生き延びてきた <参考記事>ロシアがベラルーシに軍事介入するこれだけの理由 【話題の記事】 ・中国からの「謎の種」、播いたら生えてきたのは......? ・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ ・戦略性を失った習近平「四面楚歌」外交の末路 ・世界が激怒する中国「犬肉祭り」の残酷さ   ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます2020年9月1日号(8月25日発売)は「コロナと脱グローバル化 11の予測」特集。人と物の往来が止まり、このまま世界は閉じるのか――。11人の識者が占うグローバリズムの未来。デービッド・アトキンソン/細谷雄一/ウィリアム・ジェーンウェイ/河野真太郎...他