<1年半ぶりの爆弾テロが発生したフィリピン。犯人は過去のテロ犯とのつながりをもつ者か──> 8月24日にフィリピン南部スールー州ホロ島のホロ市内で発生した2件の連続爆弾テロ事件を捜査している地元警察や陸軍は26日までに死者が16人、負傷者が75人に達したことを明らかにするとともに、現地スールー州全体で厳戒態勢を敷いてテロ実行犯やその背後組織の摘発を進めている。 これまでに中東のイスラム系テロ組織「イスラム国(IS)」に忠誠を誓い、関係が深いとされるフィリピンのイスラムテロ組織「アブ・サヤフ」の関与が濃厚となるなか、IS関連組織が連続爆弾テロの「犯行声明」をネット上に出したとの情報が流れている。 これはネット上でのISなどテロ組織の動向を監視している米国の組織「SITEインテリジェンス」がフィリピンメディアに明らかにしたもので、「フィリピンの兵士や警察官を標的とした爆弾テロ」を称賛した犯行声明をネット上にアップしている、という。 ただ、フィリピン治安当局はこうした情報の存在は知っているものの、犯行声明と爆弾テロの具体的な関連性については確認していない模様だ。 またこれまでの捜査で、24日午後12時57分に発生した2回目の爆発は「フィリピン開発銀行ホロ支店」のある「ゴテックレン・ビル」の前で、上半身が膨れ上がったような不審な服装をした女性が兵士に接近してきた時に自爆したことが確認されている。 さらに現場近くの屋根で吹き飛ばされた女性の頭部が発見、回収されたことで現在この実行犯の女性の身元確認が行われている。 最初の爆発も自爆テロの可能性 26日のフィリピン各紙、テレビなどの報道では、24日午前11時53分に起きた最初の爆発は当初、兵士が乗った陸軍のトラック近くに不審者が駐車したバイクが爆発したといわれていたが、バイクは無関係で1件目も自爆テロの可能性が強くなったと伝えている。 トラックの近くにあった食堂も兼ね備えた食料品店「パラダイス」の内部に爆発でできたと思われるクレーターがあり、そこで犯人が自爆したとの見方が強まっているのだ。 当初「即席爆発装置(IED)」が仕掛けられたとみられていたバイクは、IEDが爆発したにしては原型をとどめていることから爆発によって焼けただけであるとの見方が強まっている。 このため今回の2件の連続爆弾テロは2人の自爆テロ犯による犯行との見方が現時点では強くなっている。 1回目の自爆テロ犯に関しては、爆弾が強力で自爆犯の体がバラバラになっており、性別の判定も難しい状況と地元メディアは伝えているが、一部未確認情報として最初の自爆犯も女性ではないかといわれている。 【話題の記事】 ・コロナ感染大国アメリカでマスクなしの密着パーティー、警察も手出しできず ・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ ・韓国、新型コロナ第2波突入 大規模クラスターの元凶「サラン第一教会」とは何者か ・韓国、ユーチューブが大炎上 芸能人の「ステマ」、「悪魔編集」がはびこる   ===== 比人テロリストの妻かインドネシア人か フィリピン治安当局は26日までに1件目を含めて自爆テロ実行犯は2人とも女性の可能性があるとの見方について否定できないとしている。それによると、2019年6月にスールー州で自爆テロを実行したノーマン・ラスカ容疑者、同年11月に軍との交戦で死亡したタルハ・ジュムサ容疑者という2人の男性テロリストの妻2人が今回の自爆テロを実行した可能性が浮上しているというのだ。 一方でフィリピンのシンクタンクや陸軍関係者は地元ラジオ局に対し、2件目の自爆テロ犯の女性はインドネシア人女性である可能性があるとの見方を示した。 2019年1月27日に今回テロがあったホロ市内のキリスト教会で起きた連続自爆テロ事件(18人死亡、82人負傷)ではインドネシア人夫妻が実行犯とされている。この2人はインドネシアのテロ組織「ジェマ・アンシャルット・ダウラ(JAD)」との関係があり、フィリピンに密入国して「アブ・サヤフ」と連携してテロを実行したとされている。 シンクタンクによると、この実行犯夫妻に娘がいて、その娘が今回の自爆テロ犯である可能性を指摘しているという。 爆弾製造の専門家の関与も指摘 治安当局では今回自爆テロに使用された爆弾、特に1件目の爆弾は非常に威力が強い強力爆弾だったことから「アブ・サヤフ」の爆弾製造担当者として知られるムンディ・サワジャン容疑者の関与を強く示唆している。 サワジャン容疑者をめぐっては2020年6月29日にホロ市内で同容疑者らの捜査に向かう途中の陸軍諜報部の私服兵士4人がテロリストと誤認されて追跡された警察官9人に射殺される事件も起きている。この事件も勘違いによる偶発的な事件なのか、テロ組織と気脈を通じた一部警察官による計画的犯行なのか、事件の真相はいまだに明らかになっていない。 首都マニラも厳戒態勢 ホロ市内での24日の連続爆弾テロ事件を受けてマニラ首都圏でも25日から軍や警察によるテロへの警戒態勢が強化されている。 陸軍のソベハナ司令官は25日、ホロ市だけでなくスールー州全域で犯行に関わった可能性が極めて高い「アブ・サヤフ」に対する捜索活動を続けていることを明らかにするとともに、地元ラジオ局に対して「スールー州全域に戒厳令を布告する必要がある」との考えを示した。 戒厳令を布告する権限のあるドゥテルテ大統領はこれまでのところ戒厳令に関しては言及していないが、25日にレニー・ロブレド副大統領は爆弾テロを強く非難し「コロナウイルスによるパンデミックの最中に起きた恐るべき事件である。国民の健康、国の経済が悪化している今、さらにダメージを与えるような事案に対しては断固として正義を実現させなくてはならない」とテロに対する政府の強い姿勢を示した。 コロナウイルス感染に関してフィリピンは8月6日にそれまで最悪だったインドネシアを抜いて感染者数では東南アジア諸国連合(ASEAN)のトップになった。また死者数ではまだインドネシアに次ぐ2番目ではあるが、政府による段階的な防疫地区の設定、衛生保健ルールの厳格化、ルール違反者への罰則強化など、あの手この手の感染拡大対策もあまり成果を挙げていないのが実状だ。 そうした最中の連続爆弾テロ発生という治安悪化で、欧州連合(EU)、米政府、英政府などからも「テロ非難」が表明されており、早急な対処がドゥテルテ政権に求められる事態となっている。 [執筆者] 大塚智彦(ジャーナリスト) PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など 【話題の記事】 ・コロナ感染大国アメリカでマスクなしの密着パーティー、警察も手出しできず ・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ ・韓国、新型コロナ第2波突入 大規模クラスターの元凶「サラン第一教会」とは何者か ・韓国、ユーチューブが大炎上 芸能人の「ステマ」、「悪魔編集」がはびこる   ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます2020年9月1日号(8月25日発売)は「コロナと脱グローバル化 11の予測」特集。人と物の往来が止まり、このまま世界は閉じるのか――。11人の識者が占うグローバリズムの未来。デービッド・アトキンソン/細谷雄一/ウィリアム・ジェーンウェイ/河野真太郎...他 ===== 自爆テロ実行犯はかつてのテロの未亡人? 自爆テロ実行犯はかつてのテロの未亡人という情報を伝える現地メディア ABS-CBN News / YouTube 【関連記事】 ・コロナ感染大国アメリカでマスクなしの密着パーティー、警察も手出しできず ・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ ・韓国、新型コロナ第2波突入 大規模クラスターの元凶「サラン第一教会」とは何者か ・韓国、ユーチューブが大炎上 芸能人の「ステマ」、「悪魔編集」がはびこる   ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます2020年9月1日号(8月25日発売)は「コロナと脱グローバル化 11の予測」特集。人と物の往来が止まり、このまま世界は閉じるのか――。11人の識者が占うグローバリズムの未来。デービッド・アトキンソン/細谷雄一/ウィリアム・ジェーンウェイ/河野真太郎...他