<「監獄式」筋トレの最強トレーナー、ポール・ウェイドが激賞するのがカバドロ兄弟。新著『ストリートワークアウト』を出版した2人に、屋外でトレーニングをする魅力や、キャリステニクスの極意を聞く> 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、自宅でできる自重力トレーニングへの注目が高まっている。本や雑誌、ネットでは、そんなニーズに合わせて、さまざまなトレーニングが取り上げられているが、その中でも最も支持を集めているメソッドの1つが「プリズナートレーニング」だ。 著者は元囚人という異色の経歴ながら、世界中のトレーニーから支持を集めてきた最強のトレーナー、ポール"コーチ"ウェイド。彼によって書かれた『プリズナートレーニング』シリーズは、日本だけで累計16万部を記録。ジム通いのみならず、プロテインも不要とするウェイドのトレーニングメソッドは、2017年(邦訳版)の発売以来、多くの読者に影響を与えてきた。 そのウェイドが激賞するトレーニーがいるのをあなたはご存じだろうか。 「この惑星上で最も偉大な2人のキャリステニクスコーチ」 ウェイドがそう呼ぶ最強の2人、それこそがカバドロ兄弟だ。 彼らはキャリステニクスとパーソナルトレーニングの世界をリードするオーソリティであり、また『プリズナートレーニング』シリーズにも動作指導のモデルとして参加しているので、シリーズの熱心な読者には、よく知られた存在でもある。 ウェイドが提唱する「監獄式」のトレーニングをストリートに移したカバドロ兄弟は、環境にあるものを創造的・即興的に利用しながら体を鍛える、まったく新しいフィットネスをつくり出した。それが「ストリートワークアウト」だ。2人が編み出したこのスタイルは、世界中で熱狂的な支持を集めつつある。 (ニューズウィーク日本版ウェブ編集部より) ◇ ◇ ◇ カバドロ兄弟のどちらかがBodybuilding.comにアップした記事を読んだことがあれば、この兄弟がニューヨーク市のストリートでトレーニングしている――まるで遊んでいるように見えるかもしれない――写真に接したことがあるだろう。 2人はフォトジェニックな写真を撮るためにそこにいるのではない(もちろん、その意味合いも少しはあるだろうが)。実際、彼らはいつも外に出て、公園や、コンクリートジャングルの中にあるパイプや足場を使ってプルアップし、ヒューマンフラッグを挙げている。 2人とも、これまでに何冊かの本を出しているが、具体的なストリートワークアウトのやり方や、なぜストリートでトレーニングするのかという点にクローズアップした本は作っていなかった。 自分たちのトレーニングスタイルを伝えたかった彼らはチームを組んで、初の共同執筆になる『ストリートワークアウト――圧倒的なパフォーマンスで魅せる究極のエクササイズ200』(山田雅久訳、CCCメディアハウス、328ページ・オールカラー)を出版することにした。 この本について、そして、ストリート(都市の屋外)で行うトレーニングの魅力について彼らが話をしてくれた。 【関連記事】全否定の「囚人筋トレ」が普通の自重筋トレと違う3つの理由 ===== ――2人ともジムでトレーニングしたり、ジムで働いたりしたことがあるが、この本の写真はすべて屋外で撮影されている。どうして屋外でトレーニングすることが、あなたたちのメインのやり方になったのだろう? アル・カバドロ ダニーと私は、子供の頃からキャリステニクスに親しんできた。でも、ほとんど屋内でそれをやっていた。それ以降、ジムで多くの時間を費やしてきたし、多種多様なトレーニング法に手を出した。バーベル、ダンベル、ケトルベルなどが私たちのトレーニングに導入されては、消えていったよ。それで、ここ数年はもっぱら体重だけを使ってトレーニングするようになっている。 なぜ屋外でトレーニングするかって? 私は、大箱のヘルスクラブのパーソナルトレーナーとしてキャリアを始めている。指導しているうちに使うマシンがどんどん減っていき、そのほうが、クライアントに良い結果をもたらすことが分かってきたんだ。 ジムでの仕事を辞めたあとは、(ニューヨーク市の)トンプキンススクエアパークを使ってクライアントを指導するようになった。その時点で、そこが私の主なトレーニングスポットになっていたからね。 ずっと同じジムにこもって仕事をしていると、開放的な場所を見つけ、そこでワークアウトすることが刺激になる。それに、外で鍛えたほうが気持ちいいだろう? トンプキンでのトレーニングは2007年に始めたけど、ここ10年でトンプキンのワークアウト文化(※)が、発展していった様はクールの一言に尽きるね。 (※暴力沙汰が多発し、ホームレスのジャンキーがあふれる公園だったが、ここで体を鍛える人が増えていき、今では、世界中のトレーニング愛好家が集まるフィットネスのメッカのような場所になっている) ダニー・カバドロ どこで体を動かすか、どんなマシンやデバイスを使うかということより、やっているエクササイズを動作パターンとして考えることのほうが大切だね。その動作を最もシンプルな形まで削ぎ落としていくと、可能性の幅を広げることができるからだ。 それを突き詰めていくと、ストリートを、無限の可能性を秘めた"ジム"にできるんだよ。 世界中で人気となってきていることにはスリルを感じる ――ストリートでワークアウトすれば、注目を集めるだろうし、オーディエンスから一挙一投足を興味深く眺められると思います。世界を旅していて、ストリートワークアウトをごく普通にやっている場所はありましたか? ダニー・カバドロ ストリートで体を鍛える人が増えている! それは確かだよ。私たちを興味深く眺めている人たちは、ストリートワークアウトに好奇心を持つことに抵抗を感じていない。結局のところ、道路標識を使ってヒューマンフラッグをやっている人がいれば、通りがかった人の頭がそっちを向くのは自然な反応だろうね。 体を横向きにするフラッグを目指す(『ストリートワークアウト』255ページより) とはいえ、それが、一般的なトレーニングスタイルになっているとは思えない。実際にやる人やストリートワークアウトができる施設は増えているし、世界中で人気となってきていることにはスリルを感じる。でも、まだまだ草の根レベルの鍛え方だね。大局的には、商業的フィットネスの周辺にあるものに過ぎないんじゃないかな。 【関連記事】囚人コーチが教える最強の部屋トレ 自重力トレーニングの驚くべき効果とは? ===== ――2人とも、トレーニングの目的とか"腹筋"や"ストレッチ"といった特定のテーマに焦点を当てた本を書いてきています。この本には、それらの全てが含まれている。『ストリートワークアウト』の焦点がそこにあるのは、なぜ? アル・カバドロ 私たちのどちらも、これまで出版したどの本よりも多分野にわたる動作を網羅したガイドを出したいと考えていた。その結果、視野を広げた内容になったけど、今まで本を出してこなければ、これを書くことはできなかったと思う。 著者として、以前の本の制作作業から多くのことを学んでいたし、読者からのフィードバックを注意深く反映することで、この本をベストな状態に仕上げることができたんだ。 ダニー・カバドロ 『ストリートワークアウト』は、私たちが提供できるほとんどのエクササイズのコレクションになっている。しかし、私たちの旅と体験してきたことのアンソロジーにもなっている。 私たちはいろいろな国でDragon Door(※フィットネスにかかわる総合出版社。さまざまなトレーニングクラスも提供している)のプログレッシブ・キャリステニクス認定を教えているので、世界中のストリート系キャリステニクス実践者とつながっている。それも表現したかったんだよ。 エクササイズやコミュニティだけでなく、世界中にあるストリートの雰囲気を感じることもできるよ。「ワークアウトをストリートへ持ち込む」と銘打った章もあり、ここでストリートで見つけた対象物をどう使うかについてのアイデアを出している。過去、こういった類のマニュアルはなかったはずだ。 ボディビルディングとキャリステニクスは反対のアプローチ ――他の誰かがやっているエクササイズを見て驚くことはありますか? アル・カバドロ まったく新しい動作、ユニークなバリエーション......。かなり長い間、ストリートで鍛えてきたけど、今でも見るべきものと出合う。ストリートワークアウトの実践者になると、筋力と創造性の限界が取り払われるからだろうね。 ダニー・カバドロ マッスルアップとワンアーム・プルアップを初めて見たときの衝撃は今でも忘れられない。最近、ワンアーム・マッスルアップを初めて見たけど、それも衝撃的な光景だったね。 マッスルアップ(『ストリートワークアウト』209ページより) アル・カバドロ ちょっと前に、ワンアーム・プランシェをやっている男のビデオを見る機会があった。ブッ飛んだね。両腕でのプランシェを達成することすら、ほとんどの人間にとってとてつもないチャレンジなのに、なんだこれって感じだったよ! プランシェ(『ストリートワークアウト』203ページより) ――キャリステニクスに親しんでいることで、予想外の種類の強さとか成長、身体的変化を得ることはありますか? アル・カバドロ トレーニングがあなたの体に求めてくるものに、あなたの体がどう適応していくか。そこに、キャリステニクスの面白さの1つがある。自分の体重が唯一の抵抗なので、キャリステニクスがやりやすい理想的な着地点を目指して、筋肉がつくられ、脂肪が除かれていく。機能的な意味で最も効率的に動くシャープな体へと無理なく変えていくことができるんだよ。 ダニー・カバドロ あとは、筋肉がどう相互接続しているか、また、ある動作の中でどうしたら可能な限り筋肉を効率的に動かせるかが分かってくることかな。ボディビルディングの基本は、筋肉を分離させて動かすことだけど、キャリステニクスでは、反対のアプローチ法を取る。そのほうがうまく機能するからね。 【関連記事】筋トレは量か強度か 「囚人筋トレ」のポール・ウェイドが全てを語った ===== ――好奇心から、バーベルを挙げることはありますか? アル・カバドロ たまに挙げることがあるよ。長い間、もっぱら体重を使うエクササイズだけでワークアウトを組み立ててきたけど、ジムに行くことがあって、周りに鉄が転がっていたら、それを持ち上げることを拒む理由はないからね。 それに、鉄を挙げると、自重力トレーニングでは絶対的な強さが得られないという話が神話であることも分かる。キャリステニクスがウェイトトレーニングに好影響を与えるのは間違いないと思う。 ダニー・カバドロ 最近、「全身を強くするのに必要な7つの動作」という記事をBodybuilding.com向けに書いたけど、そこで、ウェイトを挙げている写真を何枚か撮影している。普段のトレーニングにウェイトは入っていないけど、体重の2.5倍のデッドリフトが可能だ。 ――あなたたちはストリートワークアウトという旅の途上にありますが、この時点で、誇りにしていることは? アル・カバドロ ワンアーム・プルアップができる。それが、いつも誇りに思っている成果かな。それを手に入れるために一生懸命に努力したし、最初は無理かもしれないと思っていたから。 ワンアーム・プルアップ(『ストリートワークアウト』90ページより) ダニー・カバドロ 片腕でヒューマンフラッグができることだね。 ワンアーム・フラッグ(『ストリートワークアウト』262ページより) ワークアウトで創造的・芸術的でいることにも大きな価値がある ――ストリートワークアウトをやっている熟練者にとって、この本にあるレップやセット、プログラムは、どの程度のガイドになりますか? 一方で、どの程度、直感的あるいは即興的であるべきでしょうか? ダニー・カバドロ これからプログラムを始める人には、特に、レップ数とセット数がとても大切な要素になる。フリースタイルとか高度な動作に乗り出す前に、基礎を固める必要があるからね。エリートレベルに達した実践者であっても、レップやセットという視点と即興という視点の両方あったほうが、間違いなく上達していくだろう。 アル・カバドロ 同感だね。秩序立った何かをトレーニングに持たせることを、常に心がけてほしい。一方で、ワークアウトをやるときに、創造的、さらに芸術的でいることにも大きな価値がある。体を刺激するのと同じくらい、心と精神を刺激するからね。 紙の上のプランが基本になるけど、そこから逸脱し、その瞬間の感じに従って自発的になること。そこに、ストリートワークアウトの面白さがあるんだよ。 ダニー・カバドロ この本は、ごく初心者から高度なレベルに達したアスリートまでを対象にしたものだ。そして、自己評価、ワークアウトサンプル、テンプレートなどのプログラム面にもかなりの紙面を割いている。自重力トレーニングでどこまで行けるかに興味があるなら、ぜひ、手に取ってほしいね。 ◇ ◇ ◇ 屋内の「監獄式」だけでは息が詰まる時がある。ちょっと外に出て、新鮮な空気を吸いながらストリートワークアウトをやれば気分転換にもってこいだ。「監獄式」だけでなく、トレーニングにストリートワークアウトスタイルも加えて、コロナ時代を乗り切ってもらいたい。 From Bodybuilding.com 『ストリートワークアウト ――圧倒的なパフォーマンスで魅せる究極のエクササイズ200』 アル・カバドロ、ダニー・カバドロ 著 山田雅久 訳 CCCメディアハウス 328ページ・オールカラー (※画像をクリックするとアマゾンに飛びます) 『プリズナートレーニング ――圧倒的な強さを手に入れる究極の自重筋トレ』 ポール・ウェイド 著 山田雅久 訳 CCCメディアハウス (※画像をクリックするとアマゾンに飛びます) ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます2020年9月1日号(8月25日発売)は「コロナと脱グローバル化 11の予測」特集。人と物の往来が止まり、このまま世界は閉じるのか――。11人の識者が占うグローバリズムの未来。デービッド・アトキンソン/細谷雄一/ウィリアム・ジェーンウェイ/河野真太郎...他