<コロナのパンデミックが終息して、また海外旅行に行けるようになったらご用心!> インドネシアの世界的観光地バリ島で起きた地元警察官による交通取り締まりで、日本人のオートバイ運転手に法外な現金支払いを要求して違法に搾取していたことがわかった。この際の警察官の顔がハッキリとわかる動画がYouTubeに投稿され、すでに56万回再生されたことで事案が広く知られることになり、インドネシア警察も無視できなくなって当該警察官の配置転換をするなど処分をせざるを得なくなったとみられている。 投稿された動画などによると、事件は2019年12月にバリ島西部にあるジュンバナ郡マデウィーという有名なサーフスポットのある地区の道路で、警察官が検問実施中のできごとだった。 日本人のオートバイ運転手が1人の制服警察官に呼び止められて停車し、「どこから来たのか」「日本から」「日本からか」と会話が始まり、警察官が運転免許証と車両登録証の提示を求めるところから動画はスタートしている。 胸に「MD.WIRADA」と氏名がかかれたメガネの制服警察官は手際よく提示された書類をチェックして「運転免許証はOK」、「登録証はOK」と問題がないことを明らかにしていく。ところがオートバイのヘッドライトが点灯していなかったことを指摘して「これは問題だ」と注文をつける。 バリ島では昼間もオートバイは前照灯を点灯しての運転が義務付けられていることから、この日本人がは前照灯をつけていなかったとしてこの警察官は「ペナルティ(反則)」という言葉を連発して、バリ州の交通ルール違反であることを強調しはじめた。 「ワン・ミリオン」の賄賂要求 その後この警察官は通常の交通違反のプロセスを踏んだ手続きでは40通りの手続きが必要になる、と説明してその煩雑な手続きを省くことを意味する「でも私が助ける」と述べて暗に「もみ消し」「見逃し」を示唆。 そのための手数料として現金、要するに賄賂が「ワン・ミリオン(100万ルピア=約8000円)」であることを日本人に告げる。 インドネシア語が分からないのか、あるいは分からない振りをしているのか、この日本人はまず1000円(約12万ルピア)示すが「ワン・ミリオン」と拒否される。さらに日本円の小銭をみせるとこのメガネの警察官とそれまで横でみていた別の警察官も加わって2人で「ワン・ミリオン」と繰り返し、不足であることをことさら力説する。 最終的にこの日本人は所持していた邦貨の1000円札9枚を手渡した。このメガネの警察官が受け取り「ワン・ツー・スリー」と9枚を数えて「OK、ノープロブレム」となる。 警察官は日本人に「コンテニュー」と言い、このまま旅を続けるように促して去ろうとする。最後に日本人が「ビデオOK?」と尋ねるが「仕事」を終えて用事が済んだと思ったのか、意味がよく分からなかったのか、はっきりとしないが警察官は何気に「OK」と答えた場面で動画は終わる。この間約3分。 なお通常の前照灯点灯義務違反の罰金は10万ルピア(約800円)という。 【話題の記事】 ・コロナ感染大国アメリカでマスクなしの密着パーティー、警察も手出しできず ・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ ・韓国、新型コロナ第2波突入 大規模クラスターの元凶「サラン第一教会」とは何者か ・韓国、ユーチューブが大炎上 芸能人の「ステマ」、「悪魔編集」がはびこる   ===== 国家警察報道官が謝罪する事態に この一連のやり取りが写された動画がSNS上で話題になったことをうけて、8月21日には国家警察のアルゴ・ユウォノ報道官が「こうした事実が起きて申し訳ない」と謝罪したうえで「当該の警察官2人は処分を受けた」と処分内容には言及せずに警察として対応したことを明らかにしたと地元メディアが伝え、一気にこのニュースはインドネシア人の間でも拡散した。 なぜこの動画が「事件発生」から半年以上も経過した8月に入ってから注目を集めるようになったのかはいまだにわからないが、インドネシア国家警察幹部もジョコ・ウィドド大統領の閣僚秘書もすでにこの動画の存在を8月中旬には把握していた。 このうち国家警察幹部は「すでに当該警察官を配置転換して警察監察組織が調査している。とても恥ずかしい警察官の行為である」と話している。 ポストコロナの観光業への影響を心配 閣僚秘書や国会議員の間でもこの動画の存在は広まっており、あまりに反響が大きいことに加えてコロナ禍で現在は海外からの観光客受け入れを禁止しているバリ島だが、観光業が島の主要産業であり、今後観光客受け入れが再開された際の外国人観光客に与える影響などを考慮して、国家警察やその内部組織である監察組織までが動いて対応しているものとみられている。 1998年に民主化の波で崩壊したスハルト長期独裁政権の時代には交通警察官による運転手への違反摘発厳格化と「お目こぼし料要求」は日常茶飯事だったとされている。 しかし次第に民主化が進み、インドネシア社会全体がこうした「賄賂文化」に嫌悪感を示すようになり、国家汚職撲滅委員会(KPK)が創設されて公務員の汚職摘発に国民の支持と期待が高まるようになっていた。しかし地方や末端の警察官などにはまだまだかつての「賄賂習慣」が残っているのも事実。 なおこの事案についてバリ・デンパサールにある日本総領事館でもこのすでに映像に関する情報を認知しており、邦人保護の立場から現地バリ州警察と連携を密にして類似事案の防止に努めたいとしている。 [執筆者] 大塚智彦(ジャーナリスト) PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など 【話題の記事】 ・コロナ感染大国アメリカでマスクなしの密着パーティー、警察も手出しできず ・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ ・韓国、新型コロナ第2波突入 大規模クラスターの元凶「サラン第一教会」とは何者か ・韓国、ユーチューブが大炎上 芸能人の「ステマ」、「悪魔編集」がはびこる   ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます2020年9月1日号(8月25日発売)は「コロナと脱グローバル化 11の予測」特集。人と物の往来が止まり、このまま世界は閉じるのか――。11人の識者が占うグローバリズムの未来。デービッド・アトキンソン/細谷雄一/ウィリアム・ジェーンウェイ/河野真太郎...他 ===== [映像] 賄賂を要求する悪徳警官 賄賂を要求する悪徳警官について伝える現地メディア KOMPASTV / YouTube