<自宅待機による子供への影響は性格や年齢によってさまざまだが、大事なのは親が精神的に安定していることだ。本誌「コロナストレス 長期化への処方箋」特集より> 今年3月、新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐため、自宅待機に入った6日目のこと。3歳の娘との散歩から戻るなり、夫が言った。「お隣さんに会ったんだけど、この子のおしゃべりが止まらなくてね。どうやら僕らが相手じゃ物足りないみたいだ!」 コロナ禍で子供同士の「付き合い」が断たれたことに、罪悪感と不安を覚えているのは、筆者たち夫婦だけではない。無理もないだろう。学校は勉強だけでなく、先生や友達との交流を通じて心身の成長を育む場所だと、私たちは散々聞かされてきた。だとすれば、学校に行かないことは、子供の社会化の機会が奪われていることにならないのか。 「『友達に会えなくて、寂しいに違いない』と私たちは思いがちだが、全ての子供がそう感じるわけではなさそうだ」と、児童心理研究所不安障害センター(ニューヨーク)のシニアディレクターを務めるレイチェル・バズマンは語る。「子供によって感じ方は大きく異なる」 ペンシルベニア州立大学児童研究センターのカレン・ビアマン教授(心理学)によると、筆者の娘のように幼稚園に入る前の子供にとって、友達とは「一緒に遊ぶ人」だ。これに対して学齢期の子供にとって、友達は友情や信頼の源になる。 「幼児期よりも学齢期の子供のほうが、友達は人生で重要な存在になっているから、社会的隔離の影響は大きい」と、ビアマンは語る。とりわけ10代の子供は、最も「苦しみ、動揺している可能性が高い」。 重要なのは、親が自分の喪失感や孤独感を子供に投影せずに、子供の本当の気持ちを理解しようとすることだと、複数の専門家は言う。思えば、わが家の娘と隣人のおしゃべりに関する筆者夫婦の解釈も、親の心情を投影しているにすぎない。 もしかすると本人は、保育施設に行くために早起きをしなくていいことや、一日中、家族といられることを喜んでいるかもしれない。「学校や友達付き合いのストレスから解放されて、不安や鬱が軽くなった子もいる」と、ハーバード大学系列のマサチューセッツ総合病院のエレン・ブラーテン学習・感情評価研究(LEAP)部長は語る。 だから、新型コロナの自宅待機をどのように感じたか、子供に直接聞いてみるといい。ただし、親の解釈を押し付ける誘導質問ではなく、子供が心情を素直に吐露するきっかけとなる最小限の質問にとどめるべきだ。「子供の気持ちに好奇心を持つことが重要だ」と、バズマンは語る。 【関連記事】ズーム疲れ、なぜ? 脳に負荷、面接やセミナーにも悪影響 【関連記事】頭が痛いコロナ休校、でも親は「先生役」をしなくていい ===== まだ語彙が乏しい幼児の場合、規則正しい睡眠や食事ができているか、行動に大きな変化はないかを注意深く見守ろう。話ができる年齢の子が具体的な問題(「音楽の授業がなくて残念」など)を口にした場合、具体的な問題解決を望んでいるのか、それとも残念だという気持ちを吐露したいだけなのかを見極めよう。 9歳が24人とズームコール シャワーを浴びたり、パジャマを着替えたり、散歩に行ったりといった日課を持つことは、あらゆる子供の心身の安定を維持する助けになる。夕食後に家族で映画を見る日をつくったり、一緒に料理をしたり、トランプやボードゲームをするといった家族の交流も助けになるはずだ。 学齢期の子供なら、ズーム(Zoom)などで友達とビデオチャットをするのもいいかもしれない。10代にもなれば、スマートフォンでソーシャルメディアを十分活用しているだろうから、おそらくこの領域で親のサポートは不要だろう。 バズマンの家庭では最近、9歳の息子がキャンプで知り合った友達24人とズームコールをしたという。「大混乱になるかと思ったが、そうでもなかった」とバズマンは語る。大人のファシリテーターが整理係を務めたことも大きい。「息子にとってはとてもいい経験だった」 10歳前後の子供にオンラインで友達とおしゃべりをさせることに抵抗を感じるなら、どこまでなら許せるかを事前に考えておこう。一日のいつ、どのくらいの時間ならいいかを子供と話し合っておくといいだろう。会話内容が親に漏れ聞こえる程度の場所でなら許すのも一案だ。 だが、コロナ禍のような前例のない時期に、子供の心身の健康にとって何より重要なのは、親の精神状態が安定していることだと、多くの専門家は口をそろえる。エール大学のディラン・ジー助教(心理学)は、子供は親のストレスに「とても敏感だ」と語る。「困難な環境で、子供を守る最大の要因は、愛情が籠もっていて、親身になってくれて、一貫して世話をしてくれる人だ」 だとすれば、自宅待機中の子供はまさに自分にとって必要な人たちと一緒に過ごしていることになる。 ©2020 The Slate Group <本誌2020年8月25日号「コロナストレス 長期化への処方箋」特集より> 【関連記事】ズーム疲れ、なぜ? 脳に負荷、面接やセミナーにも悪影響 【関連記事】頭が痛いコロナ休校、でも親は「先生役」をしなくていい 【話題の記事】 ・12歳の少年が6歳の妹をレイプ「ゲームと同じにしたかった」 ・コロナ感染大国アメリカでマスクなしの密着パーティー、警察も手出しできず ・異例の熱波と水不足が続くインドで、女性が水を飲まない理由が悲しすぎる ・介護施設で寝たきりの女性を妊娠させた看護師の男を逮捕 ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます2020年8月25日号(8月18日発売)は「コロナストレス 長期化への処方箋」特集。仕事・育児・学習・睡眠......。コロナ禍の長期化で拡大するメンタルヘルス危機。世界と日本の処方箋は? 日本独自のコロナ鬱も取り上げる。 ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます2020年9月1日号(8月25日発売)は「コロナと脱グローバル化 11の予測」特集。人と物の往来が止まり、このまま世界は閉じるのか――。11人の識者が占うグローバリズムの未来。デービッド・アトキンソン/細谷雄一/ウィリアム・ジェーンウェイ/河野真太郎...他