<命と睡眠が脅かされ1日のリズムは崩壊、不眠の改善は日常の工夫がカギに。本誌2020年8月25日号「コロナストレス 長期化への処方箋」特集より> 新型コロナウイルスが猛威を振るい始めてから、睡眠導入剤の助けなしにぐっすり眠れたのはたった3晩だけだ。とはいえ寝付くのは早い。神経が疲れ切っているからだ。今はご多分に漏れず、私も1日15時間ネットでニュースをチェックし、せっせとメールを送り、オンライン会議をし、くよくよ考え込んでいる。 だからいったん寝付いても夜中にパッと目が覚める。そして、ありとあらゆる心配事に襲われる。 もう一度眠ろうと寝返りを打つが、頭が冴え、興奮は高まるばかり。レイオフの嵐が吹き荒れていること、フードバンクの前に食料支援を求める人たちが列を成していること。高齢の親に会えないこと......。 夜中にベッドの上で悶々としているのは、私だけではないだろう。「平常時でも、睡眠に関する悩みで最も多いのは不眠だ」と、睡眠専門の神経科医ブランドン・ピーターズは言う。「当然、ストレスが多い時期には悪化する」 津波や地震、ハリケーンなどの自然災害の被災者がしばしば睡眠障害を訴えることはこれまでの研究で分かっている。だが新型コロナのパンデミック(世界的大流行)はこうした災害とは全く異質だ。 ニューヨーク大学医学大学院の心理学者ジュディット・ブランは、2010年のハイチ地震の被災者を対象に不眠症の事例を研究してきた。「地震は非常に激しい災害だが、続くのは30秒程度。新型コロナは全く違う」と、彼女は言う。「ウイルスについては事前に情報があり、自分の住む地域に広がることも予想でき、心の準備もできる。ただ、パンデミックは人々の自由を奪う。命と生活が脅かされる不安を抱えながら、それに対して何もできない。そんな無力感が人々を打ちのめす」 「ノー・コロナ」時間を持とう 医師は通常、不眠に悩む人に生活習慣や生活環境を見直すようアドバイスする。だが困ったことにコロナ禍は全ての人に漏れなく「新しい生活様式」を強いる。毎朝決まった時間に起きて出勤する必要がなくなったこともその1つ。「けじめがなくなり、多くの人がだらだら寝坊するようになった」と、ピーターズは手厳しい。それでは夜中に目が覚めて、寝付けなくなるのも無理はない。 もしかしたら私たちが抱えているのは贅沢な悩みかもしれない。避難所で暮らす地震などの被災者と違って、コロナ禍では少なくとも自宅のベッドで眠れる。その気になれば起床・就寝時間も自分で管理できる。 【関連記事】ズーム疲れ、なぜ? 脳に負荷、面接やセミナーにも悪影響 【関連記事】頭が痛いコロナ休校、でも親は「先生役」をしなくていい ===== 毎朝起床時に15~30秒日光を浴びることで体内時計をリセットできると、ピーターズは言う。正午以降はカフェイン摂取を控えること。アルコール類の飲み過ぎもノー。寝付きは良くなるが、夜中に何度も目が覚め、睡眠の質が低化するからだ。 睡眠時間の目安は7~9時間。大人は必ずしも8時間取る必要はない。 ブランによれば、栄養バランスの良い食事を取り、日中は仕事や家事などの日課をこなすことも大事だ。 そして、コロナ関連の情報をシャットアウトする時間をつくること。「朝から晩までニュースを見ていたら、脳は処理できなくなる」と、ブランは言う。「一日中ずっと心配事で頭をいっぱいにしてはいけない」 私は午後8時以降を「ノー・コロナ」時間と決めた。友達宛てのメールに心配事を書いたり、私たちの地域がどうなるか夫と話し合ったりしない。もちろんツイッターはご法度。「効果は必ず表れる」と、ブランは請け負った。ぜひともそう願いたい。 ©2020 The Slate Group <本誌2020年8月25日号「コロナストレス 長期化への処方箋」特集より> 【関連記事】ズーム疲れ、なぜ? 脳に負荷、面接やセミナーにも悪影響 【関連記事】頭が痛いコロナ休校、でも親は「先生役」をしなくていい 【話題の記事】 ・コロナ感染大国アメリカでマスクなしの密着パーティー、警察も手出しできず ・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ ・韓国、新型コロナ第2波突入 大規模クラスターの元凶「サラン第一教会」とは何者か ・韓国、ユーチューブが大炎上 芸能人の「ステマ」、「悪魔編集」がはびこる   ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます2020年8月25日号(8月18日発売)は「コロナストレス 長期化への処方箋」特集。仕事・育児・学習・睡眠......。コロナ禍の長期化で拡大するメンタルヘルス危機。世界と日本の処方箋は? 日本独自のコロナ鬱も取り上げる。 ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます2020年9月1日号(8月25日発売)は「コロナと脱グローバル化 11の予測」特集。人と物の往来が止まり、このまま世界は閉じるのか――。11人の識者が占うグローバリズムの未来。デービッド・アトキンソン/細谷雄一/ウィリアム・ジェーンウェイ/河野真太郎...他