<ベーリング海でタラ漁をしていたアメリカの漁船団の前に突如、ロシア艦隊が現れ、「ここはミサイルエリア、危険、出ていけ」と命令されて、漁船団はパニックに陥った。「こんなことは許されない」はずなのだが> 8月26日、漁船数隻で漁をしていたアラスカの漁師たちは、ベーリング海の国際水域で軍事訓練を行うロシア海軍と遭遇し、ただちに米軍当局に報告した。 現場にいた漁師の一人は、28日にアラスカ公共メディア(A P M)で、あのロシア艦隊のようなものを見たのは初めてだと語った。 26日にトロール漁船ベステローデン号上でロシア海軍の演習を目撃したスティーブ・エリオットは、ベーリング海でスケトウダラ漁をしていたときに、船の無線からロシア人の声が聞こえてきたという。その声はすぐにロシア語から英語に変わり、近くの漁船は軍艦の進路から外れるようにと警告してきた。 「ロシアの軍艦3隻と補助艦2隻が真っ直ぐこちらに向かってきた」と、船上からエリオットは証言した。「ロシアの艦隊は、漁船団のすぐそばを通りすぎた」 ロシアの軍用機から警告を受け、その場を離れるよう命じられた船もあったとAPMは報じた。翌27日、米軍当局はロシア軍が軍事訓練を行っていることは承知しており、付近のロシア軍の活動はすべて追跡していると述べた。 「でていけ」と警告 だが漁船団は、この事件のおかげで漁が妨害され、危険な目にあったと主張する。「何の予告もなく、本当にびっくりした」と、ベーリング海のスケトウダラ漁に従事する大型漁船13隻の組合で事務局長を務めるステファニー・マドセンは言った。 「少なくとも24〜36時間は混乱がひどくて、漁どころではなかった。その間、何が起きたのかと事実を確認しようと必死だった」と、マドセンは語った。「演習が続く間は、何が起こるかまだわからない」 APMによれば、軍事演習は9月まで続く予定だという。 タラ漁船ブルーノース号乗組員のマイク・フィッツジェラルドは、ロシアの軍用機が6度も船の進路を妨害し、指定した航路で水域から「最高速度で」出ていくように命じられたと語った。 北アメリカ航空宇宙防衛司令部(NORAD)は28日、ロシアのTu-142対潜哨戒機6機──2機1組が3組──の進路をインターセプト(牽制)したと発表。ロシア軍機はアラスカ防空識別圏を約5時間飛行し、アラスカ沿岸から50海里以内に接近したが、アメリカやカナダの領空には入らなかったという。 <参考記事>中国軍艦5隻、オバマ氏訪問のアラスカ沖で確認 米「意図不明」 <参考記事>ロシア爆撃機がアラスカに接近、米戦闘機がインターセプト ===== 「普段からベーリング海で漁をやっている人間だから、俺たちも、ものすごく怯えたわけじゃない」と、フィッツジェラルドはAPMに話した。「でも、本当に起きたことがわかったときには、腰を抜かしそうになった。ロシア軍用機に脅された。『危険地域、ミサイルエリア、ここから出ていけ』という警告を送ってきた。こんなことは前代未聞だし、ベーリング海で安全を守ってもらえないなんて、絶対に間違っている」 フィッツジェラルドはまた、ブルーノース号の船上からアラスカ沖で浮上するロシアの潜水艦を見たと言った。アメリカ北方軍(USNORTHCOM)は27日、「アラスカ沖で、海面に浮上したロシアの潜水艦の監視を続けている」と述べ、「われわれは、責任の範囲で、外国の軍艦を含む疑わしい船舶を綿密に監視する」とつけ加えた。 米沿岸警備隊のキップ ・ワドロー報道官は27日、複数の漁船からロシアの活動について不安の訴えが寄せられていることをAP通信に明かした。 漁船は水産資源などの独占権がアメリカに属する排他的経済水域で操業していた、とワドローは述べた。ただし、国際水域であれば、他国の船にも航行の自由がある。 アメリカ北方軍によれば、ロシア軍の海洋活動は「米国領海の外の国際水域で行われている」という。 米国務省は28日、ロシアの活動を非難する声明を発表。トランプ政権は「ベーリング海における米国漁船とロシア軍の接近遭遇」についての報告を調査する、とラリー・ピクサ報道官は述べた。「こうした接触の原因は、ロシア海軍が海洋演習を行ったためだ」 米軍当局者は、アメリカ沿岸でのロシア軍の軍事活動、特に発見と追跡が困難な潜水艦によるものは、アメリカの安全保障上の脅威となる、と警告した。 米海軍のアンドリュー・ルイス中将は今年2月、アメリカの東海岸は、ロシアの潜水艦が出没しているため、もはや海上交通の「安全な避難所」とは考えられないと述べている。 ・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ ・異例の猛暑でドイツの過激な「ヌーディズム」が全開 ・台湾のビキニ・ハイカー、山で凍死 ・中国は「第三次大戦を準備している」 ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます2020年9月8日号(9月1日発売)は「イアン・ブレマーが説く アフターコロナの世界」特集。主導国なき「Gゼロ」の世界を予見した国際政治学者が読み解く、米中・経済・テクノロジー・日本の行方。PLUS 安倍晋三の遺産――世界は長期政権をこう評価する。 ===== 【動画】Tu-142をインターセプトしたアメリカとカナダの戦闘機