<新型コロナと人種差別問題で発火寸前のアメリカで、しかも郵便投票の開票で何日も結果発表を待たされる時、何が起こってもおかしくないと、フェイスブックのザッカーバーグも身構える> 11月の米大統領選挙では、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で郵便投票が増えることから、例年よりも選挙結果の判明が遅れると予想されている。こうしたなか、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は、再び選挙をめぐる偽情報が出回る可能性があるとして、備えを進めている。 2016年の米大統領選では、ロシアのトロール(ネット荒らし・情報工作組織)がオンラインで選挙介入を行ったと結論づけられた。だが今回はホワイトハウス内部など、もっと「近いところ」から偽情報が発信される可能性がある。 ドナルド・トランプ米大統領が郵便投票を批判し続けているなか、ザッカーバーグは状況を深刻に受け止めていると語り、候補者が早い段階で(フェイスブック上などで)勝利宣言を行なえば社会不安を煽ることになり「問題だ」と指摘した。 ザッカーバーグは、CBSのニュース番組「CBSディス・モーニング」に出演。番組ホストのガイル・キングとのインタビューの中で、トランプまたは民主党大統領候補のジョー・バイデンが、票の集計が終わらないうちに勝利宣言を行うことの危険性について、次のように指摘した。 不信感を植えつけたいトランプ 「候補者の陣営が勝利宣言をして、その時点で行われている票の集計作業が『不正選挙の証拠だ』などと主張するようなことがあってはならない。そのような宣言や主張は危険だし、選挙の正当性を損なうものだと思う。選挙の後に人々が街頭で抗議したり、騒乱が起きたりするリスクを高める可能性もあると思う。それはとても問題だ」 これはフェイスブックだけが抱えている懸念ではなく、テレビ局や各種ソーシャルメディアの幹部も、今回の選挙をめぐる特殊な状況にどう対応するか頭を悩ませている。 これまでの大統領選挙と異なり、今回は票がきちんと集計されて結果が判明するまでにしばらく(場合によっては何日も)かかると予想されている。 ワシントンやオレゴンなど複数の州では、近年、不在者投票をはじめ郵便投票による選挙を成功させてきたが、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)により、今年は郵便投票がほかの州にも拡大されている。 トランプはこれまで何度も、郵便投票は「不正の温床」と不信感を植えつけようと試みてきた。郵便投票では票の集計が遅れ、結果が不正確なものになる可能性があると主張し、選挙を遅らせることもありうるとまで示唆していた(この案はすぐに議会共和党に退けられた)。 <参考記事>米「内戦」に備える新たな暴力集団ブーガルーとは何者か <参考記事>トランプの嘘が鬼のようにてんこ盛りだった米共和党大会(パックン) ===== トランプは7月、ツイッターに「全米で郵便投票を導入すれば(不在者投票ではない。それはいい)、2020年の選挙は歴史上最も不正確で不正にまみれたものになるだろう」と投稿。さらに「アメリカにとって大きな恥になる。国民が適正に、安全に投票できるようになるまで、選挙を遅らせてはどうか?」と書き込み、物議を醸した。 ニューヨーク・タイムズ紙の7月の報道によると、11月3日の投票後、トランプが選挙結果の正当性にケチをつけるためにやりそうな幾つかの事態にフェイスブックも備えていると報じた。例えば、トランプ陣営が「米郵政公社が投函された票をなくした」あるいは「複数のグループが投票を不正に操作した」などと主張した場合を想定して、議論が行われているという。 フェイスブックの製品管理および社会問題解決を担当するナオミ・グレイト副社長は、8月13日付のブログで、フェイスブックは既に「選挙結果をめぐる偽情報が出回る可能性について、積極的に選挙当局者たちと話し合いを行っている」と述べた。 コロナ禍や反差別デモが選挙を複雑に グレイトはさらにこう続けた。「複数の州の予備選がそうだったように、郵便投票が増えれば、選挙が終わって何日も経たなければ最終的な結果は判明しない。これまでのアメリカの選挙では、投票所が閉まるとすぐに暫定結果が報じられることが多かった。投票プロセスにかかる時間が長くなると、そのことが、選挙結果に不信感を植えつけるために悪用される可能性がある。投票日とその後に、信頼できる情報やニュースをどう提供するかが課題だ」 ザッカーバーグは、フェイスブックの個人アカウントでこう述べた。「2020年の選挙は既に激しい争いの様相を呈している。パンデミックの中での投票や、全米で展開されている反人種差別デモが、その選挙をさらに複雑なものにしている」 「こうしたなか、フェイスブックはこれまで以上にさまざまな措置を講じて、全ての人が安全でいられるように、常に情報を入手することができるようにしていく。そして最終的に全ての人が、投票という最も重要な場で意見を表明することができるようにしていく考えだ」 【話題の記事】 ・コロナ感染大国アメリカでマスクなしの密着パーティー、警察も手出しできず ・米大学再開をぶち壊す学生たち、乱痴気騒ぎでクラスターも発生 ・中国からの「謎の種」、播いたら生えてきたのは......? ・中国ステルス機2機が中印国境に到着、空中戦準備の可能性も ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます2020年9月8日号(9月1日発売)は「イアン・ブレマーが説く アフターコロナの世界」特集。主導国なき「Gゼロ」の世界を予見した国際政治学者が読み解く、米中・経済・テクノロジー・日本の行方。PLUS 安倍晋三の遺産――世界は長期政権をこう評価する。