<欧州最大の太陽望遠鏡「グレゴール(GREGOR)」は、太陽の微細構造を鮮明に撮影することに成功した...... > ドイツの研究チームによって開発された欧州最大の太陽望遠鏡「グレゴール(GREGOR)」は、2012年にスペイン領カナリア諸島テネリフェ島のテイデ観測所で設置され、2018年から、アップグレード(性能向上)のための研究開発がすすめられてきた。そしてこのほど、一連のアップグレードが完了し、太陽の微細構造を鮮明に撮影することに成功した。 太陽望遠鏡を再設計しアップグレード グレゴール太陽望遠鏡は、直径140万キロメートルという巨大な太陽のうちの50キロメートルを地球から詳しく観測できる。いわば、1キロメートル離れた場所から、サッカー場にある針を見るようなものだ。 研究チームは、最高の画質を実現するために、わずか1年で、グレゴール太陽望遠鏡の光学系、メカニクス系、エレクトロニクス系を完全に再設計した。このプロジェクトを主導した独キーペンホイヤー太陽物理学研究所(KIS)の物理学者ルーカス・クライント博士は「非常に刺激的であると同時に、極めて大変なプロジェクトでもあった」と振り返った。 キーペンホイヤー太陽物理学研究所のディレクターを務めるアルベルト・ルードヴィヒ大学フライブルグのスベトラーナ・バデュジナ教授も「このような望遠鏡のアップグレードには通常、数年を要するため、このプロジェクトにはリスクがあったが、素晴らしいチームワークと綿密な計画立てが実を結んだ」と成果を高く評価している。一連の研究成果は、2020年9月1日、学術雑誌「アストロノミー&アストロフィジックス」で公開されている。 欧州最大の太陽望遠鏡「グレゴール(GREGOR)」 KIS 黒点の進化とその複雑な構造が高解像度で映し出されている 望遠鏡の光学系は、鏡やレンズ、ガラスキューブ、フィルターなどから構成される複雑なシステムだ。わずか1つの要素に不具合があるだけで、システム全体のパフォーマンスに影響を及ぼし、望遠鏡に影響をあたえている要素を見つけ出すことさえ、非常に力量が問われる。研究チームは、毛髪の直径の1万分の1程度にまで磨いた軸外放物面鏡に入れ替えることで、乱視のように、画像がぼやけて歪む現象を解消した。 主な技術的成果は、すでに3月に達成されていたが、新型コロナウイルス感染拡大に伴う都市封鎖により、7月にようやく、アップグレードされたグレゴール太陽望遠鏡による太陽観測がテイデ観測所で行われた。 グレゴール太陽望遠鏡によって516ナノメートルの波長で撮影された画像では、太陽プラズマでの黒点の進化とその複雑な構造が高解像度で映し出されている。 KIS 430ナノメートルの波長で撮影された動画では、太陽表面の黒点とその周辺の動きが確認できる。黒点は、周辺よりも温度が低いため、黒く見える。 ハワイのハレアカラ天文台でも太陽表面の撮影に成功 高解像度の太陽観測が可能な太陽望遠鏡としては、グレゴール太陽望遠鏡のほか、米ハワイ州マウイ島のハレアカラ天文台の「ダニエル・K・イノウエ太陽望遠鏡」も、2020年1月29日、詳細な太陽表面の撮影に成功している。 バデュジナ教授が「グレゴール太陽望遠鏡のアップグレードにより、私たちは太陽の謎を解くための強力な手段を手に入れた」と述べているとおり、太陽望遠鏡の進化によって太陽磁場や対流、乱流、黒点など、太陽にまつわる様々な謎の解明につながると期待が寄せられている。 ===== The haunting closeup of a sunspot