英製薬大手アストラゼネカは8日、オックスフォード大学と開発する新型コロナウイルスワクチンの臨床試験(治験)を世界的に中断したと発表した。大規模な後期治験も含まれる。被験者1人に、説明できない疾患が生じたためとしている。 同社のワクチン候補は開発が先行しているものの1つとみられおり、最近では日本での治験開始を発表していた。 アストラゼネカは、独立委員会による安全性データの検証を行うためワクチン投与を自主的に中断したとの声明を発表。治験のスケジュールに影響が及ぶ可能性を最小限に抑えるため、今回の単独案件の検証を迅速に行うよう努めていると表明した。 また今回の対応について「治験の1つで説明できない疾患の可能性が生じた場合に取るべき所定の措置だ」と説明した。 アストラゼネカのワクチン候補は英オックスフォード大学と共同開発中で、米国や英国、ブラジル、インドなどで異なる段階の治験を実施中。9月上旬には日本で治験を開始したことを発表した。日本はこのワクチンが開発に成功した場合、1億2000万回分の供給を受けることでアストラゼネカと合意している。 疾患が生じた被験者は英国で報告された。治験中断について最初に報じた医科学メディア「スタット」によると、被験者は回復する見込みだが、疾患の詳細や発生時期は今のところ明らかにされていない。 米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)が事情に詳しい関係筋の情報として伝えたところによると、英国の治験で脊髄に炎症が起きる横断性脊髄炎が被験者1人に確認された。横断性脊髄炎はウイルス感染によって引き起こされる場合が多い。この疾患がアストラゼネカのワクチン候補と直接関係があるかどうかは不明という。アストラゼネカはこの報道についてコメントを控えた。 スタットによると、同様の反応の兆候を調査するため、アストラゼネカの他のワクチン試験や、他のワクチンメーカーが行っている試験にも影響が及んでいる。 アストラゼネカの試験に資金を拠出している米国立衛生研究所(NIH)はコメントを控えた。 アストラゼネカの声明は「大規模な臨床試験では偶然に病気が発生するが、注意深く独立した調査が行われなければならない」としている。 アストラゼネカの米上場株は引け後の時間外取引で8%超下落。一方、ワクチン開発で競合する米モデルナは4%超、米ファイザーは1%弱、それぞれ上昇した。 モデルナは、自社が実施中しているワクチン試験への影響は現時点で承知していないとしている。 菅義偉官房長官は9日午前の会見で「厚生労働省で企業から詳細な情報を収集している」としたうえで、承認申請があった場合は「治験などのデータと最新の科学的知見に基づき、有効性と安全性確保の観点から、承認の可否について適切に判断してく」と述べた。[ロイター]Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます 【話題の記事】 ・ロシア開発のコロナワクチン「スプートニクV」、ウイルスの有害な変異促す危険性 ・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ ・コロナ感染大国アメリカでマスクなしの密着パーティー、警察も手出しできず ・ハチに舌を刺された男性、自分の舌で窒息死   ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます9月15日号(9月8日発売)は「米大統領選2020:トランプの勝算 バイデンの誤算」特集。勝敗を分けるポイントは何か。コロナ、BLM、浮動票......でトランプの再選確率を探る。