<副大統領候補にハリスが指名されたことでインド国内はお祭り騒ぎに。だがイスラム教徒を抑圧し、カシミール問題への他国の関与を拒絶するモディ政権はむしろ米民主党を警戒している> 8月19日、カリフォルニア州選出のカマラ・ハリス上院議員が正式に民主党の副大統領候補に指名された。ハリスは母親がインド出身の移民ということもあり、米インド系移民団体などは「インド系アメリカ人がアメリカで本当のメインストリームになる」と大絶賛している。 ハリスの指名は、インド国内でも大きな反響があった。メディアやSNSでは彼女のインドのルーツが話題になり、お祭り騒ぎになった。インドメディアでは、モディ首相のおかげで近くなった米印関係のさらなる関係強化を期待する声が上がった。 だが現実には、民主党が副大統領候補としてハリスを選択したことは今後、インドとの関係で問題を引き起こす可能性がある。米国内外で「両刃の剣」にもなりかねない。 その理由の1つに、モディが率いる与党「インド人民党(BJP)」がヒンドゥー至上主義政党であり、それに米民主党がどう対応していくのかがある。モディ政権は昨年12月、不法移民に市民権を与えるインド市民権改正法(CAA)を成立させたが、それまでも疎外してきたイスラム教徒のみを対象外にし、各地で抗議デモが発生した。 人権や公民権などを重視する米民主党はこの事実にどう対応するのか。少なくとも、中国のウイグル族に対する抑圧を批判しつつ、インドのイスラム教差別に目をつむるのはダブルスタンダードと言われかねない。 実はモディ政権は以前からハリスの言動を警戒している。特に、インドが絶対的ライバルであるパキスタンと領有権を争うカシミール問題についての発言だ。カシミール紛争はインドで最もセンシティブな問題の1つで、他国の関与を一切拒絶してきた。 カシミール地方とは、インド北部とパキスタン北東部に広がる地域のことを指す。インド側カシミールにはイスラム教徒が多く暮らすこともあって、1949年に特別な自治権が与えられたが、モディは2019年8月に自治権を剝奪。しかも現地が暴発しないよう、厳しい外出禁止令を敷いた。住民は何カ月もインターネットやスマホの通信を禁止され、多くが仕事すらできない状態に陥った。 この事態に、当時ハリスはモディ政権を批判し、「必要なら介入もある」と発言。また、別のインド系の米下院議員がカシミールの通信遮断を中止するよう促す議会の決議を求めた際も、ハリスは支持を表明している。 こうした動きから、モディ政権はハリスの副大統領候補指名を、もろ手を上げて歓迎するわけにはいかない。それどころか、激震が走ったはずだ。 【関連記事】副大統領候補ハリスが歩み始めた大統領への道 バイデンが期待する次世代政治家の「力」 【関連記事】カマラ・ハリスは2024年のアメリカ大統領になる!【パックン予測】 ===== 米国内に目を向けても、こうしたハリスの立場はインド系住民に影響を及ぼしそうだ。米国内のインド系の割合は1%ほどで2016年の大統領選ではその77%が民主党のクリントン候補に投票したという。今回はモディ支持者を中心に、票が共和党に流れるとの見方もある。トランプがインドと良好な関係を築いていることもあり、さらなる関係強化をトランプに期待する向きがあるからだ。 とはいえ、カシミール問題をクリアできれば、インド系副大統領の誕生は、インドにとっても強力な後ろ盾になり得る。特に最近、国境問題から中国発のモバイルアプリ禁止まで、対立が強まっている中国と対峙していくにはアメリカの存在は大きい。 もしアメリカにバイデン政権が誕生すれば、モディ政権はハリスとどこかのタイミングで意思疎通を図る必要があるだろう。さもないと、ハリスの存在が両国にとって頭痛の種になりかねない。 <2020年9月15日号掲載> 【関連記事】副大統領候補ハリスが歩み始めた大統領への道 バイデンが期待する次世代政治家の「力」 【関連記事】カマラ・ハリスは2024年のアメリカ大統領になる!【パックン予測】 【話題の記事】 ・大丈夫かトランプ 大統領の精神状態を疑う声が噴出 ・中国からの「謎の種」、播いたら生えてきたのは......? ・地下5キロメートルで「巨大な生物圏」が発見される ・中国は「第三次大戦を準備している」 ・ハチに舌を刺された男性、自分の舌で窒息死 ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます9月15日号(9月8日発売)は「米大統領選2020:トランプの勝算 バイデンの誤算」特集。勝敗を分けるポイントは何か。コロナ、BLM、浮動票......でトランプの再選確率を探る。