<背景には、ベラルーシをはじめとする東欧や太平洋におけるNATOやアメリカとの覇権争いがある> ロシアは極東および西の国境の先に複数の脅威を認め、それらの地域でアメリカなどの外国勢力による活動の抑止を試みると共に、中国との関係強化に乗り出している。 9月17日、ロシアの空挺作戦部隊はベラルーシ西部の(ポーランドとの)国境地帯で、ベラルーシ軍と合同演習を実施した。同日、ロシアのアンドレイ・ルデンコ外務次官は、ベラルーシ大統領選の不正疑惑やアルメニアとアゼルバイジャンの衝突について、ジョン・サリバン駐ロシア米大使と電話会談を実施。この中でサリバンに対して、「(アメリカによるこれらの地域での)内政干渉や不安定化の画策、一方的な仲裁はいかなる形でも容認しかねる」との考えを伝えた。 ルデンコはこの前日、駐ロシア中国大使の張漢暉ともベラルーシについて話をしている。ロシア外務省の公式声明によれば、この会談で2人は「さまざまな分野で、これまで以上に両国の交流を深めていくことについて意見交換を行った」という。 ロシアと中国はいずれも自国の国境付近で、外部からの侵略の兆候に目を光らせている。中国の王毅外相は16日、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が発生して以来、初めてロシアの当局者たちとの直接会談に臨んだ後、この問題について国営メディアの新華社通信にこう語ったという。 合同演習で固い絆をアピール 「一部の国が一方的ないじめを行っている。他国の内政にいたずらに干渉し、中国とロシアを強く非難し、この2つの国の周辺地域の安全と安定を脅かしている」と王は主張。さらに「中国とロシアは山のごとく団結し、壊れることのない友情で結ばれている」と語った。 ロシアにとっての最も差し迫った懸念は、おそらくベラルーシだ。ロシアの長年の盟友であるベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領は、8月に行われた大統領選の不正疑惑とそれに抗議する反体制派の取り締まりについて、西側諸国から激しい批判を浴びており、事態の鎮静化に向けてロシア政府に支援を要請。ベラルーシもロシアも、ベラルーシと国境を接するNATOの軍事同盟が混乱をあおっていると批判している。 ロシアとベラルーシの軍は現在、ベラルーシとポーランドの国境地帯で砲弾の実射を伴う合同演習を行っている。ロシア国防省によれば、テロ対策が目的だと言う。 ===== 合同演習は2015年以降、ロシアとベラルーシ、セルビアの3カ国で行われており、約1500の部隊が参加し、100の設備が配備される予定だった。だが今年は、セルビアが直前に演習への参加を取りやめると発表。ベラルーシとの合同演習に反対していた「EU(欧州連合)からの多大で不当な圧力」(ベラルーシ当局)を受けたことが理由だという。 マイク・ポンペオ米国務長官もベラルーシ問題についてコメントし、特にロシアを強く批判している。ポンペオはイギリスのラーブ外相と会談を行った後、「全ての国、特にロシアに対して、ベラルーシの主権を尊重するよう」促したと語った。 だが西の国境に懸念を募らせる一方で、ロシア当局者たちは、東の国境でも防衛強化の必要性を感じている。 ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は17日に幹部会議の中で、「東部戦略地域は軍事的・政治的に緊迫した状況が続いている」と指摘。「東部軍管区では、新たに発生した脅威をなくすために幾つかの措置を取る考えだ。特に重要な区域では部隊の増強を行っている」 ロシア政府も状況を注視している。ロシア国営のタス通信によれば、同国のドミトリー・ペスコフ大統領報道官は17日に、「地域外の勢力による軍事行動の活発化は、地域の安定化にとって悪影響だ」と警戒感を示した。 中国と懸念を共有 ショイグもペスコフも、外国勢力の脅威について詳しい説明はしなかったが、ショイグは航空・防空部隊の増強を求めた。このわずか数日前、ロシア海軍太平洋艦隊のMiG-31戦闘機と東部軍管区のSU-35S戦闘機がベーリング海およびオホーツク海の上空で、米空軍のB-1B戦略爆撃機に対して緊急発進を行っていた。 このような出来事は珍しいことではない。だがこの一件に先立つ8月下旬には、アラスカ沖で米航空宇宙防衛司令部(NORAD)がアラスカ沖でロシア軍の海上哨戒艦2機の進路を牽制する事態が発生し、ポンペオが太平洋などでの「ロシアの活動が増えている」と警告していた。 ロシアはまた、アメリカがヨーロッパとアジアにミサイル防衛システムを配備していることに、かねてより懸念を表明してきた。アメリカが中距離核戦力(INF)全廃条約を離脱したことで、中距離ミサイルシステムについても懸念を募らせている。 こうしたなか中国も、東方での騒乱の気配を感じている。王毅は新華社通信に対して、「外部の一部勢力が、さまざまな理由をつけて地域内の国々の内政に干渉している。新たな『カラー革命』を煽る動きさえみられる」と語った。この『カラー革命』について、中国とロシアは「西側諸国の影響による一連の世界的な反乱」とみている。 ===== 中国はアジアで、領土や貿易、人権の問題をめぐってアメリカとの対立を激化させている。アメリカはヨーロッパから中国の投資事業を追い出そうとも狙っており、ポンペオは17日、リトアニアとの間で「5G通信網に関連した安全保障上のリスクを軽減する」ための基本合意書に署名した。アメリカは5G通信網について、中国共産党が国と関わりの深い事業者を利用して悪用していると非難している。 中国はこれらの主張を否定。王毅は新華社に対して(明らかにアメリカを指した発言の中で)、国際社会を分裂させ、中国とロシアを操ろうとする動きがみられると語った。 「一極支配体制を維持するために、これらの勢力は中国、ロシアやその他の新興経済国を悪意をもって攻撃し、不当に抑圧している。さらには、いわゆる『新冷戦』の状態をつくり出そうと、ほかの国々に対して自分たちの味方につくよう強要しているのだ」 <参考記事>中国は「第三次大戦を準備している」 <参考記事>ロシアの毒殺未遂にメルケルが強気を貫けない理由 ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます9月22日号(9月15日発売)は「誤解だらけの米中新冷戦」特集。「金持ち」中国との対立はソ連との冷戦とは違う。米中関係史で読み解く新冷戦の本質。