<このままでは敗北するというアメリカ側に対し、米軍が台湾に戻れば戦争だと中国> 米海兵隊のウォーカー・D・ミルズ大尉は、米陸軍大学発行の軍事誌「ミリタリーレビュー」最新版で、米軍は台湾に駐屯すべきだとする論文を発表。これに中国共産党機関紙系のタブロイド紙「環球時報」の編集者・胡錫進が、ツイッター上で強い反発を表明した。 ミルズは論文の中で、東アジアのパワーバランスがアメリカや台湾から中国寄りに傾きつつあると指摘。アメリカに「台湾の主権を守る決意があるならば」、台湾に地上軍を駐屯させることを検討すべきだと主張した。 「龍の抑止」と題した論文の中で、ミルズは現在のパワーバランスでは台湾への奇襲攻撃の「可能性がより高まっている」と警告。米指導部は「中国との意図的かつこれまで以上に世界規模に及ぶ紛争」に反対する国際的圧力に「勇敢に立ち向かう」べきだとの考えを述べた。 「人民解放軍(PLA)の攻撃に対して米軍が迅速に対応できないとしたら、残された道は2つ。PLAがあっという間に台湾に侵攻するのを受け入れるか、時間もコストも代償も伴う上に成功の保証もない作戦の遂行を余儀なくされるかだ」とミルズは書いている。 「正義の戦いを始める決意」 これに噛みついたのが、中国政府内でもより強硬派の見解を反映している環球時報の胡だ。彼はツイッターにミルズの論文のタイトルを投稿し、「アメリカと台湾でこのような考えを持っている人々に警告する」とコメントを添えた。 「米軍が台湾に戻れば、PLAは中国の領土を保全するための正義の戦いを始める決意だ。中国には反国家分裂法がある」と胡は続けた。2005年に制定された同法は、台湾が独立を宣言した場合、中国政府は台湾への武力行使も辞さないと予告するものだ。 胡のこのコメントと時を同じくして、中国は大規模な軍事演習を実施、中国軍の複数の戦闘機が停戦ラインである台湾海峡の中間線を越えて台湾の防空識別圏に入り、台湾が中国に警告を発する事態が発生していた。 台湾国防部はこの一件について、「一つの中国」政策の下で台湾を吸収したいと考える中国本土による「嫌がらせであり脅し」だと非難した。アメリカは1979年に制定された台湾関係法で、台湾の防衛に協力することがアメリカの義務であると定めている。 ===== 『A Critical Decade: China's Foreign Policy 2008-2018(重要な10年間:2008-2018年の中国の対外政策)』の著者である米バックネル大学国際関係学部のジューチュエン・チュ教授は、「胡のツイートは無視できない。もしもアメリカが本当に台湾に部隊を配備すれば、米中関係は大きく変わり、米中間の軍事衝突が引き起こされることになるだろう」と指摘。「中国政府から見て、台湾への米軍配備は中米関係の根底を壊す行為であり、反国家分裂法を侵害する行為だ。それは戦争の大義名分になる」と本誌に語った。 米地上軍を台湾に派遣するという提案は「問題の複雑さをひどく過小評価している」と指摘し、さらにこう述べた。「台湾問題は、軍事的に解決できる軍事問題ではない。この問題は歴史や政治、外交、経済、安全保障や大国同士の対立などが絡み合った複雑な問題だ」 ロンドン大学東洋アフリカ学院・中国研究所のディレクター、スティーブ・ツァンは、アメリカ政府が台湾に米部隊を配備することを計画している兆候は今のところないとの見解を示し、胡の警告が「必要な、あるいは理にかなったものには思えない」と語った。 「中国と台湾の間で緊張が高まるなか、アメリカが台湾国防軍との協調・協力関係を強化していることが見てとれる。だが協調・協力関係が強化され合同軍事演習が行われたからといって、アメリカが台湾に部隊を配備するということにはならない」 <参考記事>台湾有事を想定した動画を中国軍が公開 <参考記事>尖閣問題への米軍介入で中国軍との戦闘は不可避──仮想「東シナ海戦争」の結末 ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます9月29日号(9月23日発売)は「コロナで世界に貢献した グッドカンパニー50」特集。利益も上げる世界と日本の「良き企業」50社。PLUS 進撃のBTS