<リモートワークで自由になるのはあくまで働く場所だけ。時間が自由になるわけではなく、チームで働いていることに変わりはない> コロナ禍によって、これまで出社が当たり前だった日常から、リモートワークに移行している企業が増えてきている。急激な変化の中、自宅でもストレスなく集中して働くことができる人がいる一方、うまく仕事が進められない、成果が上がらないと感じている人も多いのではないだろうか。また、どうマネジメントをすればいいか悩むマネージャー層もいるだろう。 そこで注目を集めているのが、「700名のスタッフほぼ全員がリモートワーク」という働き方をすでに6年実践している、株式会社キャスターのCOO(最高執行責任者)を務める石倉秀明だ。その経験と実例をもとに新著『会社にはいかない』(CCCメディアハウス)を上梓した石倉に、リモートワークの問題点、導入のポイント、マネジメント法、そしてリモートワークがこれからの社会に与える影響について詳しく聞いた。 ◇ ◇ ◇ ――リモートワークだと仕事が進めづらい、コミュニケーションが取りづらい、マネジメントがしづらいといったことがよくいわれる。リモートワークでは何に気をつければいいのか? まず、「リモート」が問題なのではなく「ワーク」が問題になっている、ということを最初に伝えなければならない。たとえば、みんなが出社して働いているときは、コミュニケーションに行き違いはなかったのか? 社員の評価は適切に、完璧にできていたのか? 誰もが満足するチームビルディングができていたのか? もし、できているのであれば、仕事の進め方や人間関係、マネジメントに悩む人は少なかったはず。でも、実際はできていない。つまり、リモートワークだからできないということではなく、そもそもこれらは難しいことだ。 仕事をする中では様々な課題が出てくるが、それらの根本原因は「働く場所」ではなく、あくまで「仕事」の問題。その「仕事」の問題が「リモート」になると、さらに解決が難しいように感じる人が多くなるのかもしれない。 ――言われてみると、たしかに問題は「リモート」ではなく「ワーク」にあることがわかる。それでは、成果を出せる人と出せない人、その違いはどこにあるのか? 僕がCOOを務めるキャスターは700人ほぼ全員がリモートワークだが、特別な才能を持っている人は多くはないと思う。キャスターに来るまでは同じ会社に長く勤められなかったり、自身の能力を発揮できなかったりといった人もいる。ただ、いまキャスターで働いている人はみんな、「当たり前のことを当たり前にできる人」ばかりだ。 たとえば、「約束を守る」「わからないことがあれば質問をする」「仕事が終わらないなら早めに相談する」「表と裏で違うことを言わない」といった、働く基本ともいうべきことがしっかり実践できる。こうしたことを積み重ねていくことで、仕事で関わる人に安心感を与えられる。それが成果に繋がっていくと僕は考えている。 ===== ――多くの人は、その当たり前のことが当たり前にできていなかったとも言えるかもしれない。ただ、リモートがメインになると、コミュニケーション不足になりがちで、リアルと違って相手の感情が読みづらい、またマネージャーは、部下が本当に仕事をしているのかなど疑心暗鬼になるという声も多いのでは? 会社にいると、空気を読むというか、その人の空気感でいまどういった状態なのか、なんとなくわかるように思うかもしれない。でも、リモートだとそれは期待できない。 僕はいつも「察してほしいはやめよう」と伝えてる。思っていること、考えていることは、自分が伝えない限り相手には伝わらない。リモートの場合は、すべて書き出すしかない。デジタルなコミュニケーションだとやや冷たく感じることもあるから、そこは気をつけて、たとえば「!」を使ったりして感情を伝えることも大事だ。 そして、コミュニケーションが不足しているとマネージャーが感じるのであれば、自ら雑談ルームを立ち上げて運営してみて欲しい。「作ったけれど、みんなあまり雑談しない」と言う人もいるが、作っただけではダメ。作って、自ら発信していく。それを繰り返さなければ、誰も発信するようにはならない。 「リモートワークになった途端、業務連絡しかしなくなった」という声も聞くが、それでは新しいアイデアは出てこない。会社で話していたように、チャットで雑談をする。それをするかしないかで、その部の雰囲気はずいぶん変わる。 それと疑心暗鬼になるという指摘。それはもう、相手を信じるしかない。自分が信じると決める。そこからでないと、話が進まない。 キャスターでは、「結果、つまり事実」だけで評価している。ドライに感じる人もいるかもしれないが、本当にそうだろうか? やるべきことが明確で、求められている結果を出せばきちんと評価される。そんな環境でなければ、人は頑張り続けることは難しいのではないか。公平で的確な評価をするために必要なのは、明確な目標設定。一人一人に明確な目標を設定し、その目標に対する結果に基づいて評価する。とてもシンプルなことだ。 これは、リモートワークでしか使えない方法ではない。オフィスに出社していても同じことをするべきだと思うが、意外にこの当たり前のことがこれまでできていなかったのではないか。 ――結果だけ、アウトプットさえ出していればいい、ということになるのか? よく誤解されるが、それは違う。 たとえば、アウトプットさえ出していれば、1日8時間働かなくていいと考える人がいる。たしかに1日8時間働く理由はないが、会社の規定で8時間勤務となっていれば、8時間勤務する必要があるはずだ。 リモートワークで自由になるのは、あくまでも働く場所だけ。時間が自由になるわけではない。それに、特別な人以外は、時間と成果はある程度比例する。短い時間で成果が出せるというのは、かなりレアだと僕は思う。 そして、もうひとつ。仕事は1人でしているわけではない。アウトプットさえ出せばいいという考え方には、チームで働く人の視点や、自分を評価してくれる人の視点が欠けているのではないか。リモートでもチームで働いていることに変わりはない。みんなとコミュニケーションをとりながら、チームとして成果を最大化するために働くことがやはり問われる。人からの信頼を得るには成果だけではない。いかにコミュニケーションをとりながら、その成果を出すか。そこに尽きると僕は思う。 ===== ――これからリモートワークは定着すると考える経営層も多いという。これからどんなふうに働き方は変わっていくと考えればいいのか。 リモートワークになると、通勤時間が削減できる。1日あたり2~3時間浮いたという人もいるだろう。月間にすると、40~60時間の削減になる。その時間に副業を始めたり、新しい勉強を始めたり、家族との時間を増やしたり、趣味の時間を充実させたり......と、人生がより豊かになるのではないだろうか。 働き方が多様になると、どんなふうに暮らしていくか、が日々の充足感に直結する。そう考えると、これからの時代は仕事以外の時間をどう過ごすのか、が重要になってくると思う。 そして、自分だけの仕事を生み出せるようにもなってくる、「個の時代」が加速すると考えている。個人が仕事を生み出せるようになれば、働き方のバリエーションは一気に拡大する。個人の強みとは「n=1」でもビジネスを成立させられること。誰か1人のためだけでも仕事が成り立つ。これは、企業にはできないことだ。 こうした仕事が増えれば、組織で働くことが難しい人も、働きやすくなる。働くという可能性はこれからますます広がっていくと考えられる。 『会社には行かない 6年やってわかった 普通の人こそ評価される リモートワークという働き方』 石倉秀明著 CCCメディアハウス (※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)