<日本の人口は2008年をピークに減少に転じたが、住宅数はその後も人口を上回るペースで増加し続けている> 日本の社会は人口減少の局面に入っており、これからどんどん縮小していく。1年間の人口減少は50万人ほどで、近い将来、1年で100万人減る時代となる。毎年、千葉市くらいの政令市がごっそり消えていくわけだ。 その一方で、人を入れるハコ(住宅)は増え続けている。筆者が住んでいる三浦半島の南西でも、建設中の住宅がちらほら見られる。よく言われるように、日本人の新築嗜好は強い。人口減少の時代だというのに、新しい住宅が雨後の筍のように建つ。その実態をデータで可視化すると<表1>のようになる。総務省『住宅土地統計調査』の実施年のデータだ。 戦後初期から人口は増え続けるが、2008年をピークに減少の局面に入っている。一方の住宅数は、戦後一貫して人口を上回るペースで増加している。戦争で多数の家が焼かれてしまったので、「住」の供給は国にとって至上命題であった。だが人口が減り始めた今でも増え続け、2008年は5759万、13年は6063万、18年は6241万と過去最高を更新している。 2008〜18年の10年間で、人口は1.3%減ったが、住宅は8.4%増えている(右欄の指数)。今後、この乖離はますます大きくなるだろう。 新築嗜好は今に始まったことではなく、人口減少時代での住宅増加を上手く説明できない。おそらくは、賃貸住宅が増えているためとみられる。家族サイズの縮小(単身化)により、1ルームのような狭小住宅への需要が増しているし、土地の相続税対策としてアパートを建てる地主が増えているとも聞く。 ===== しかし、借り手となる人間の数が減っているので賃貸経営も楽ではない。2018年の『住宅土地統計』によると、共同住宅の借家数(居住世帯あり)は1664万、賃貸用共同住宅の空き家数は378万となっている。両者の合算に占める後者の割合(空き部屋率)は18.5%となる。今では、賃貸アパート・マンションの部屋の約2割が空き部屋ということだ。 なお地域差もある。<表2>は、同じやり方で計算した、47都道府県の賃貸共同住宅の空き部屋率を高い順に並べたものだ。 5%刻みで色分けしたが、25の県で20%、8の県で25%を超えている。上位の栃木や山梨では、賃貸部屋の3分の1近くが埋まっていない。市区町村レベルで見たら、4割、5割という数値も出てくるだろう。 東京のような大都市はまだマシだが、地方での賃貸経営は厳しいようだ。だが、さら地は地方に多く、地主は業者にそそのかされ、税金対策でアパートを建てようという考えに傾いてしまう。三重県の田園地帯にレオパレスのアパートが立ち並ぶ「レオパレス銀座」をテレビが取り上げていたが、全国各地でこうした珍光景が見られるようになる。 需要もないのにアパートを建てるのは、①自然破壊、②景観悪化、③犯罪の温床化、という弊害をもたらす。こういう行動に地主を掻き立てるなら、さら地から高い税金を取るなど止めたほうがいい。ないしは税金免除の対象を、子どもの遊び場や保育所建設など、社会性のある土地供与に限ればいい。 上述のように、既に378万もの賃貸アパート・マンションの空き部屋がある。横浜市の人口と同じくらいだ。その一方で、住居に困っている人は数多くいる。コロナの影響で失職し、家賃を払えず「住」を失った人もいる。行政が家賃を補助する形で、使われないでいる378万もの空き部屋(住資源)を活用すべきだろう。 これから先は人口減少が続く。こういう時代にあって、住宅の乱築などはしない方がいい。なすべきは、既存のハコの活用だ。上手くデータベース化し、供給と需要をリンクさせれば、「住」に困る人は大幅に減るだろう。前に本欄でも書いたが、空き家が増えすぎて「タダでいいから、ハウスキーパーとして住んでくれ」と頼まれる時代が来る(「家はタダで借りる時代-0円借家は実際にある」2019年6月5日掲載)。こういう楽観を持てるようになるはずだ。 <資料:総務省『住宅土地統計』(時系列統計表)> <関連記事:世界で唯一、日本の子どものパソコン使用率が低下している> <関連記事:学力よりも性別で年収が決まる、日本は世界でも特殊な国> =====