<集中豪雨や異常低温が、第一次世界大戦中、欧州の死亡率は3倍に上昇させ、スペイン風邪の世界的流行の誘因となった可能性があることが明らかとなった......> 1914年から1919年にわたる欧州での異常気象が、第一次世界大戦の犠牲者の増加やスペイン風邪の世界的流行の誘因となった可能性があることが明らかとなった。 米ハーバード大学の気候科学者アレクサンダー・モア博士らの研究チームは、アルプスのコエッツリッツ氷河で採取した72メートルの氷床コアから気候史を分析し、2020年9月15日、その研究成果をアメリカ地球物理学連合(AGU)の学術雑誌「ジオヘルス」で発表した。 集中豪雨や異常低温が、第一次世界大戦の死亡率を3倍に上げた 氷床コアの分析によると、1914年から1919年までの間、海塩の成分であるナトリウムと塩素のレベルが上昇していることから、欧州の北西部からアルプスにかけて、北大西洋の冷たい海風が強く吹き込んだとみられる。この期間の欧州13カ国の降水量や気温と比較してみると、集中豪雨が続き、低温で寒かった時期と一致している。 このような集中豪雨や異常低温は第一次世界大戦下の西部戦線に影響を与え、1916年のヴェルダンの戦いやソンムの戦いでは、100万人以上が死亡または負傷した。第一次世界大戦中、欧州の死亡率は3倍に上昇。とりわけ、1914年から1915年、1915年から1916年、1917年から1918年の冬期に、海風の異常な流入によって異常低温や豪雨が発生した時期またはその直後、死亡率が上がっている。 第一次世界大戦 ソンムの戦い John Warwick Brooke-wikicommons 異常気象でマガモの季節移動が変化し、スペイン風邪の流行に? 一連の異常気象は、H1N1型インフルエンザウイルスの宿主であるマガモの季節移動に影響を与え、これによって欧州でのスペイン風邪の流行を悪化させた可能性もある。マガモは通常、秋に北東方面のロシアへ移動するが、1917年と1918年の秋は、悪天候のため、西ヨーロッパにとどまった。マガモの糞に汚染された水などを介して、H1N1型インフルエンザウイルスが人へと感染しやすくなった可能性がある。 スペイン風邪の世界的流行の原因についてはいくつかの説が示されているが、環境要因から研究されたものはまだ少ない。米ボストンカレッジ(BC)の疫学者フィリップ・ランドリガン教授は、一連の研究成果について「感染症と環境との相互作用について新しい視点をもたらす、非常に確かで刺激的な研究だ」と評価している。