<東南アジアに生息するバンドヘビが、首や背中から毒を分泌するヒキガエルを腹から切り裂き、臓器を食べる適応行動が確認された。下等なヘビでは初めての発見だ> 東南アジア原産のヘビの一種の、極めて残酷な捕食行動をとることが確認された。捕らえたヘリグロヒキガエルの腹を切り開き、まだ生きたまま内臓をひとつずつ食べていくのだ。 学術誌「Herpetozoa」に発表された報告によれば、研究者たちは2016年から2020年にかけて、タイ北東部に生息するバンドククリヘビによる、この「ゾッとする」捕食行動を確認した。 ほとんどのヘビは獲物を「丸呑み」することが分かっており、獲物を切り裂いたり、体の一部を切り取ったりする方法は珍しい。だがタイの研究チーム(ルーイ・ラチャパット大学の研究者2人、Maneerat Suthanthangjai と Winai Suthanthangjaiと無所属の科学者Kanjana Nimnuamは、バンドククリヘビが毒を持つヘリグロヒキガエルを捕らえ、生きた状態のまま牙で腹を切り開く様子を3回にわたって確認した。 3回とも、ヒキガエルはなんとかヘビを振り払おうと、白い毒液を分泌して必死に抵抗。だが最終的にはヘビが「ヒキガエルの腹の中に頭を突っ込み、幾つか臓器を引きずり出して呑み込んだ」と研究報告に書かれている。ククリヘビとヘリグロヒキガエルの格闘は最長で約3時間にも及んだという。 バンドククリヘビとヒキガエルの格闘 WINAI SUTHANTHANGJAI(ルーイ・ラチャパット大学) ヘビでは初めて見られた高度な技 報告書によれば、「ヘビが獲物の体内に頭を突っ込み、内臓を取り出して食べ、残りを捨てる行動が確認されたのは、今回が初めて」だ。 研究者たちは4例目として、バンドククリヘビがヘリグロヒキガエルを攻撃し、丸呑みしたケースも確認した。この時のヘリグロヒキガエルは、ほかの3例の完全に成長したカエルに比べて明らかに若く、体も小さかったという。 バンドククリヘビがなぜ、獲物の体を切り開いて内臓をひとつずつ食べるのか、理由は分かっていない。研究者たちは、体の小さなヒキガエルは毒が弱いが、成長したヒキガエルは毒が強すぎて丸呑みできないために、こんな食べ方を編み出したのではないかと推測している(ヘリグロヒキガエルは首や背中にある特殊な腺から強力な毒液を分泌する)。 あるいは、バンドククリヘビがこのカエルの毒に耐性を持っている可能性もあると、彼らは示唆している。体の小さなヒキガエルは丸呑みしたということは、あとの3匹については、体長約90センチメートルの成長したバンドククリヘビにとっても「大きすぎて丸呑みできなかった」のかもしれない。 その両方の理由が当てはまる可能性もある。成長したヒキガエルは体が大きすぎることに加えて、毒も強すぎるために丸呑みできなかったのかもしれない。 報告書の著者のひとりであるデンマーク人研究者のヘンリク・ブリンソーは声明の中で、「現在のところ、理由は一切分からない。だが我々は今後もこの魅力的なヘビについて観察を続けていく考えで、その生態についてさらなる興味深い発見ができることを期待している」と述べた。 ===== バンドククリヘビはミャンマー南東部、タイ、カンボジア、ラオスやベトナム各地に生息しており、アジアのより幅広い地域に生息しているククリヘビ(全80種)の一種だ。獲物に大きな、出血を伴う傷を負わせる力を持っていることで知られ、その特徴からネパールのグルカ兵が使う短刀「ククリ」にちなんだ名前がつけられた。 「ククリヘビには噛まれないようにした方がいい」とブリンソーは警告する。「ククリヘビは獲物の血流に、血液の凝固を阻害する物質を注入するため、噛まれると何時間も血が止まらない可能性がある。牙は相手の皮膚を『刺す』のではなく『引き裂く』ようにできており、噛まれると切り裂かれるように感じるだろう」 彼はさらにこう語った。「血液凝固を阻害する物質は、目の後ろ側にある2本の腺から分泌される。何時間もかけてヒキガエルの内臓を取り出す際に、この分泌物が役立っている可能性が高い」 ブリンソーは本誌に、今回の発見はヘビやその多様性に関するさらなる理解につながる可能性がある、「きわめて大きな」意義があるものだと語った。 「これまで、毒を持つカエルの腹部を狙って攻撃し、首や背中にある毒腺に触らないようにすることができる動物としては、哺乳類や高い認知能力を持つ鳥が注目されることが多かった」と彼は言う。 「だが今回の発見で、認知能力がさほど高くないそのほかの脊椎動物でも、同じような適応ができることが確認された。ヘビの捕食戦略は多様性に富んでいることは証明されており、今回のような行動はその新たな一面を示している」 ===== バンドククリヘビとヒキガエルの格闘 WINAI SUTHANTHANGJAI(ルーイ・ラチャパット大学)