<人気キッズ・ユーチューバーが地上波局の売上を追い抜いたという報道も出て、放送界は売上増に必死> 「地上波放送局SBSが、ニュース番組の途中にCMを放送!」 これが韓国でトップニュースとして報道されると聞いて、驚かれる方も多いのではないだろうか? 日本では当たり前であるテレビ番組途中のCM放送が、韓国では今大きな波紋を呼んでいる。一体何が起こっているのだろうか。 今回問題になっている番組の中間に流れるCMは、PCM(プレミアム・コマーシャル)と呼ばれている。「プレミアム」と言われると何か特別なCMのような気もするが、CM自体は普通のもので、日本では一般的によく見る光景だ。視聴者がチャンネルを変えやすい番組前後のCMよりも、番組途中の方が高視聴率であり、ここで流れるCMを韓国ではPCMと呼んでいる。もちろん、一般CMより広告単価も高くなっている。 番組内CM解禁はわずか2年前から 韓国では1974年から、放送法により広告は番組の前後にだけ可能とし、番組途中に入れることは禁じられていた。しかし、2018年11月に一度規制が緩められ、ドラマやバラエティは、地上波放送局でも2部または3部で割って、その中間にPCMを放送するようになった。 ところが、報道番組での広告においては、これまでの番組前後につくCMですら世論の風当たりはきつく、批判が集まりやすかった。例えばある大企業の不正を報道すべきときに、その企業が番組スポンサーだった場合、公平に報道できるのか? という批判である。 このため公共放送のKBSの場合、ニュース番組が中心のKBS1では、CMが流れたとしても政府広報など公共広告のみで民間企業のCMは一切入れないという徹底ぶりである。 9月21日の放送からPCMの導入が始まったのは、SBS局のニュース番組『SBS 8 NEWS』である。韓国では、夜の8〜9時頃のゴールデンタイムから放送が始まるニュース番組は、その局の看板番組と言われているほど注目度が高く。この時間帯に1日の出来事をまとめて放送し、多くの韓国人が視聴する。 ===== ニュースへのPCM導入に新聞協会がかみつく 今回『SBS 8 NEWS』は、これまでの55分番組から70分へ放送時間を拡大し、1, 2部で分けてその間にPCMを放送することとなった。また、同時に同局は人気調査報道番組である 『それが知りたい』も、今後2部に分けて放送され、中間にPCMを放送する予定と発表された。 これらの決定が公表されると、すぐに視聴者からの大きな批判の声が集まった。さらに、20日には韓国新聞協会から「視聴者権利侵害する地上波放送PCMを即刻規制しろ」という強い批判声明が出された。 韓国新聞協会は、「国民の財産である電波を使う地上波放送局は、公益性を守り、視聴者の視聴権を優先しなければならないという社会的合意が放送法に収められている。」として、「一日も早く地上波放送のPCM放送の規正と、さらに拡大せぬよう放送法令改訂など措置に乗り出すことを求める」と主張した。 PCM導入はMBCが先だったが 9月22日、国民の力党ジョ・ギョンヒ議員の発表によると、韓国の地上波4局(KBS·MBC·SBS·EBS)が、今年上半期にPCMを導入し放送した番組の数は86作品に上ったという。これは、昨年1年間で4社が放送したPCM放送作品数とほぼ同じであり、今年は下半期を合わせると、去年の倍以上になる見込みだという。 今回注目を集めている『SBS 8 NEWS』だが、地上波のニュース番組でPMC導入放送を始めたのはこの番組が初めではない。今年6月MBCは、メインニュース番組 『ニュースデスク』でPCM放送を開始している。地上波以外でいえば、総合編成チャンネルJTBC『ニュースルーム』も、100分の放送時間を1, 2部で分けてPMC放送を開始した。 しかし、この2番組が『SBS 8 NEWS』と違い批判が少ないのは、1部では普通のニュース、2部ではテーマを組んで深く掘り下げる調査報道と、まるで別番組のような構成にしているためだろう。こうすることによって、1つの番組の途中にCMが流れるという感覚は薄らいでいる。 ===== 地上波局は規制が厳しいと訴え 視聴者の反感を買ってまで、地上波のニュース番組がPCM導入を踏み切った背景には、地上波放送局の財政難がある。地上波4局は、総合編成放送局やケーブル放送局との競争の中で、地上波だけが規制にがんじがらめになっていると訴え続けている。 ここ5年間の地上波4社のPCMによる収益は、2919億ウォンと推算される(国民の力党調べ)。 という事は、通常PCM単価は一般広告より1.5〜2倍高いとされ、財政難に苦しむ地上波放送局は、苦肉の策としてPCM枠を切り売りしていくしかないと考えているようだ。 広告、ニュースともにYouTubeにさらわれて 財政難の根底にあるのは、視聴者の地上波離れ・テレビ離れだろう。去年5月、地上波放送局MBCの労働組合が出した声明文が発端となり、「MBCの収益をたった1人で超えた6歳のユーチューバー」というニュースが報道された。 労働組合は、「地上波放送局であるMBCの広告売り上げが、6歳の子供のユーチューブチャンネル"ボラム・チューブ"の広告収益とほぼ同額である。MBCは、経営危機ではなく生存危機が近づいている」と発表した。その後、ボラム・チューブの売上が実際にはMBCよりもかなり少ないことが判明したが、放送局の危機感は今も変わってはいない。 またユーチューブといえば、韓国ではかつてメディアに在籍していたことのあるフリーの記者がユーチューブ上で独自のニュース番組を始めて人気を集めている。PCMなど企業広告が多く入ってしまうと、報道の信ぴょう性が疑われ、今後ユーチューブ・ジャーナリストの方が真実を報道しているという認識が広まっていく可能性もある。そうなると、ますますテレビ離れは加速し、地上波ニュース番組は悪循環に陥ってしまうだろう。 韓国の地上波放送局は、ニュース番組のPMC導入という大きな一歩を踏み出した。これがさらなる地上波離れに繋がらないといいが、そうならないためには単純に目先の広告費を稼ぐためにPMCをどんどん増やすだけではなく、より魅力的な番組作りに向けた改革にも力を入れる必要があるだろう。 ===== 問題になった『SBS 8 NEWS』10月4日のヘッドライン 問題になった『SBS 8 NEWS』10月4日のヘッドライン SBS NEWS / YouTube