<中国とドイツらの研究チームは、月面で放射線の時間分解測定を初めて実施し、研究成果を発表した......> アメリカ航空宇宙局(NASA)が「アルテミス計画」において2024年に有人月面着陸を目指すなど、各国で月探査への動きが活発となっている。宇宙飛行士にとって重大なリスクとなるのが、宇宙放射線の被爆だ。これによって、白内障やがん、中枢神経変性疾患などが引き起こされるおそれがある。 地表の200倍以上、国際宇宙ステーション内部の2.6倍 中国科学院国家空間科学中心(NSSC)と独キール大学らの国際研究チームは、2019年1月に月の裏側で月面着陸した中国の無人探査機「嫦娥4号」にキール大学が開発した線量計「LND」を搭載し、1月3日から12日と1月31日から2月10日までの間、月面で放射線の時間分解測定を初めて実施した。 一連の研究成果は、2020年9月25日、学術雑誌「サイエンス・アドバンシス」で発表されている。 宇宙飛行士が宇宙服に保護されているのと同等に保護された「LND」は、宇宙放射線がヒトに及ぼす生物学的影響を推定するべく、等価線量で放射線を測定した。 その結果、宇宙放射線の線量当量率は57.1毎時マイクロシーベルトと、地表の200倍以上にのぼった。月面の平均線量当量は1日あたり1369マイクロシーベルトで、同時期の国際宇宙ステーション(ISS)内部での線量当量に比べて2.6倍も高い。これは、国際宇宙ステーションが部分的に地球の磁気圏によって宇宙放射線から守られているためだと考えられる。 宇宙飛行士が月面に滞在できるのは約2ヶ月が限度か 研究論文の共同著者でキール大学のロバート・ウィマー=シュバイングルーバー教授は、月と地球との往復に要する約2週間の被爆量も考慮したうえで「宇宙飛行士が月面に滞在できるのは約2ヶ月が限度だろう」との見解を示している。 月には宇宙放射線を遮る磁場や大気がなく、月面の放射線場は惑星間空間と似ている。そのため、今回の研究成果は、月探査だけでなく、有人火星探査など、将来の惑星間ミッションにも役立つと期待が寄せられている。