<女性を安い労働力とみなした80年代以降の日本社会のひずみは、現在の未婚化・少子化に繋がっている> スウェーデンの教育学者エレン・ケイは「20世紀は児童の世紀」と言ったが、21世紀は女性の世紀、もっと限定すると「働く母親の時代」と言っていいだろう。 こういう意識は日本社会でも共有され、政府は毎年の『男女共同参画白書』で女性の就業率等のデータを公開している。その定番は、女性の労働力人口率の年齢カーブだ。このグラフは過去とくらべて形が変わっている。以前は結婚・出産期に谷がある「M字」型だったが、現在では谷がほとんどない。これをもとに、女性の社会進出が進んだと書かれることが多い。 だが、未婚で働き続ける女性が増えたことも考えられ、働き方の中身を問わなければならない。大きくはフルタイムとパートに分けられるが、日本では正規と非正規という従業地位区分もある。同時間、同じ仕事をしても、この2つのグループの間に大きな賃金格差があるのはよく知られている。 2017~20年に各国の研究者が共同で実施した『世界価値観調査』によると、日本の成人女性のフルタイム就業率は19.4%、パート就業率は25.8%で、パートの方が多い。欧米ではフルタイム就業率が高く、アメリカは41.1%、スウェーデンは51.7%と半分を超える。 日本も昔と比べたら数値は上がっている、と思われるかもしれない。では、80年代前半の第1回調査のデータと比較するとどうか。<図1>は、3カ国(日本、アメリカ、スウェーデン〔図中の瑞典〕)のフルタイム就業率の変化をグラフにしたものだ。 アメリカ、スウェーデンは上がっているが、日本は下がっている(28.2%→19.4%)。女性の社会進出が進むのは世界的潮流だが、日本の女性のフルタイム就業率は低下している。男女雇用機会均等法が制定される以前よりも低い。 ===== 働く女性は増えているのに、フルタイム就業率は下がっている。すなわち他の働き方が増えているのだが、フルタイムとパートの就業率を積み上げた棒グラフ<図2>にすると、それが明瞭になる。 自営を除く就業率だが、日本でも働く女性は増えている。だがフルタイムとパートで色分けすると、増えているのは後者で、前者は減っている。増分の多くはパートのようだ。 アメリカとスウェーデンでは、パートが減りフルタイムが増えている。スウェーデンでは32.8%から51.7%と大幅な増加だ。トータルの就業率が下がっているのは、成人学生が増えているためだろう。この国の成人女性の12.3%が学生で、これが生涯学習の先進国と言われるゆえんだ。 共働きが常識になった現代 一口に女性の社会進出と言ってもその様相は国によって違い、欧米はフルタイム増によるが日本はパート(非正規)依存であることが分かる。今世紀初頭に新自由主義のナタが振るわれたが、女性はそれを下支えする安い労働力として取り込まれている。働き方の量ではなく、質の向上が今後の課題と言える(山口一男・シカゴ大学教授)。 女性のトータルの就業率を見て「良し」とするのではなく、その中身を注視しなければならない。安い働き方しかできないならば、女性は結婚相手の男性に高い収入を求めざるを得ない。しかし今では若年男性の給与も下がっているので、そういう望みは叶いにくい。それならと、実家にパラサイトして理想の相手を待ち続ける――。社会全体の未婚化・少子化は、その集積に他ならない。 男性の腕一本で家族を養える時代など、とうに終わっている。二馬力で行けば、稼ぎ手を柔軟にチェンジすれば何とかなる。大事なのは、こういう展望を若者が持てるようにすることだ。保育所の増設は、その方策の中核となる。80年代では欧米も日本と近い状況で、変わったのはその後だ。「為せば成る」は実証されている。 <資料:『世界価値観調査』> =====