<常に新しいものを追いかけ流行に敏感な韓国。だが最近のトレンドは変わってきているのかも> 今月から、韓国の各地で伝統美溢れる制服を着た学生たちを目にすることができるようになった。 文化体育観光庁傘下の韓国工芸デザイン文化振興院では、韓国の伝統衣装である韓服(チマチョゴリ)をモチーフにした新しい制服デザインを2019年4月から公募し、その結果53種類のデザインによる制作を行った。 その約1年後となる今年5月から試験的に導入する中高校を募集し、最終的に全国各地22校で、この2学期から実際に利用されている。導入校は、公募された学校のうち、教育庁と地方自治体から制服費支援を受けている学校と、支援を受けない学校の半分ずつから選出されているという。 53種のうち、チョゴリと呼ばれる韓服の上着をイメージしたデザインが多く、女子生徒のスカートは韓国伝統衣装を思わせるふんわりとしたフォルムをしている。 韓服はインスタ映えしてクール! また、男子生徒のズボンも、一般的なストレート型に加え、裾が絞られた伝統的なシルエットの物も用意された。女子生徒用にはスカートだけでなくズボン型の制服があるのも、今のジェンダーレスのトレンドを象徴している。 試験導入されまだ日が浅いが、ネットなどの反応を見ていると、韓国の女子中高生はタイトなデザインを好む傾向にあり「韓服をイメージしたふんわりしたデザインは気に入らない」という意見や、「見た目を重視するよりも、学生が動きやすく着衣しやすいデザインを優先するべき」といった反応もありつつ、「かわいい」「韓国の伝統美を生かしている」という好意的な意見も多い。 韓国では、数年前から韓服を着て宮殿などの観光地を回るというブームがあり、日本の京都に点在する貸し着物屋さんのように、貸し韓服屋さんが流行った。その写真をインスタグラムなどSNSに投稿する韓国人の若者も急増していた。このように、今韓国では「伝統的なものを取り入れることがクール!」という風潮がある。 朝鮮王朝のお姫様になれるコスメ 日本でもBBクリームをはじめとしてすっかり定着した"K-ビューティー"韓国コスメだが、先月「元祖韓国コスメ」ともいえる化粧品が270年の時を超え復元・販売されることとなった。 2015年8月、京畿道南楊州で発掘された18世紀朝鮮時代の王族であるファヒョプ(和協)という姫の墓から、当時彼女が使っていた化粧品が見つかった。彼女は韓国の時代劇『イ・サン』などに登場した21代国王ヨンジョ(英祖)の娘ではしかのため19歳で亡くなり、溺愛していた王はファヨプが使っていた化粧品も埋葬したという。靑華白磁と呼ばれる白地に美しく描かれた模様の陶器の中からは、当時ファヒョプが使っていた美顔水やクリームが残っていて、成分分析した結果、はちみつ・紅花・米粉・椿油などが検出された。 この分析結果を元に、国立故宮博物館と、韓国伝統文化大学、化粧製造会社コスメックスが共同開発し、先月新しいコスメブランド「Princess Hwahyup」を発表した。今後、クリーム、ファンデーション、リップバームから試験販売されるという。化粧品の容器は、当時と同様に小ぶりの靑華白磁で作られており、そのビジュアルで発売開始前から大きな注目を集めている。 ===== ミミダルが発売した高麗青磁柄のスマホケースとエアーポッズケース。외교부 서포터즈 모파랑TV / YouTube 陶磁器と言えば、先月デザイン会社ミミダルから発売された「高麗青磁柄スマホケース・エアーポッズケース」が大人気だ。先月初めに発売開始されたとたんSNSなどで話題となり、1週間で1万個を売り上げたという。その後、9月8日には生産が追い付かなくなり、ウェブサイトで配送遅延の報告を行う事態となっている。 このミミダルは、正式に会社となったのは去年2月からである。2018年に、クラウドファンディングで、伝統を生かしたペンケースを作りたいという企画から始まり、その後もクラウドファンディング・システムを生かして伝統美を意識したグッズを作り続けている。 ハン・サンミ社長のインタビューによると、ミミダルは大学の卒業生たちがサークルで何か作ろうという企画から始まった。その後、日本へ旅行に行ったときに、日本の若者たちが伝統的なデザインを取り入れた製品を使っているのを見て、自分たちも伝統を生かした製品を作ろうというのが、大ヒット商品を生んだきっかけだったという。"外国人が好きな韓国の伝統工芸ではなく、韓国人が好んで使える伝統柄製品を!"というコンセプトは、日本から得たインスピレーションだったのだ。 伝統の美に気付いたK-POPアイドルたち このように、海外に一歩足を踏み出してみると、自分の国の美に改めて気づくことがある。ここ最近、韓国内はもとより、インターナショナルな活躍が目覚ましいK-POPアーティスト達も伝統美を意識した衣装を取り入れ、海外の人たちに発信する姿が目立っている。 最近ネットフリックスで全世界にドキュメンタリー映画が配信され、初のフルアルバムがビルボードのアルバムチャート2位になるなど世界的にブレイクしている話題の女性アイドルグループBLACK PINK。彼女たちが、今年の夏に発表された曲「How You Like That」のミュージックビデオで、韓服を現代的にアレンジした衣装を着て登場し話題となった。 また、タイ人メンバーのリサの衣装は、タイの伝統衣装と韓服を組み合わせたような斬新なデザインで注目を浴びた。このミュージックビデオは1週間で2億回再生を記録し、衣装デザインをしたブランド「ダンハジュダン」は、オンラインショッピングモールの1日訪問者数が1万人以上増も加したという。 一方、最近再びビルボードのシングルチャートで1位にランクインし、世界中のファンを熱狂させている男性アイドルグループBTSも、2018年に発表した楽曲『IDOL』で、韓服をジャケットのように羽織ったり、伝統模様を生かしたり、伝統美をアレンジした衣装を身に着け話題となった。 観光キャンペーンの伝統音楽はラップ? 伝統音楽を現代の楽器で演奏するバンド、イナルチが起用された観光キャンペーンの動画にも韓服を着て観光地を回るカップルが登場。문화체육관광부 / YouTube さらに韓国観光公社の海外向け観光キャンペーンである「Imagine your Korea」に、今年のアーティストとして起用されたバンド「イナルチ」も多くの関心を集めている。 イナルチは、『新感染 ファイナル・エクスプレス』や『哭声/コクソン』など多くの映画音楽を手掛けてきたジャン・ヨンギュ氏を含む、7人組の韓国伝統音楽フュージョンバンドだ。ベースやドラム、また現代的な電子的リズムに合わせ、韓国伝統声楽であるパンソリの歌声が絶妙にマッチしている。 K-POPアイドルはラップが上手なグループが多いが、イナルチの曲の中には韓国の伝統的な歌唱でありながらラップを思わせる部分も多く、今昔が混ざり合って新しいハーモニーを生み出している。現在TVやイベントにも引っ張りだこで、韓国観光公社のキャンペーン動画はすでに2億回再生を記録し、今後新しいK-Musicとして注目を集めている。 海外に目を向けると、自分の国らしさを意識するようになる。グローバルに活動するK-popが、韓国らしさを取り入れ始め、デザイン会社が日本旅行で逆に韓国的な製品製作のアイディアを思いつくといったトレンドの流れも納得できる。 今の若者たちは、生まれながらにして世界と繋がっているだけに、自然と自分の国の美や伝統に目を向けやすくなっているのではないだろうか。 ===== 韓服はインスタ映えしてクール! この10月から韓国の伝統衣装である韓服(チマチョゴリ)をモチーフにした新しい制服が使われ出した。 채널A 뉴스 / YouTube 伝統の青磁柄のスマホケースとエアーポッズケース 。"外国人が好きな韓国の伝統工芸ではなく、韓国人が好んで使える伝統柄製品を!"というコンセプトから生まれたという。 외교부 서포터즈 모파랑TV / YouTube 伝統音楽パンソリを現代のラップにしたバンド、イナルチ 伝統音楽を現代の楽器で演奏するバンド、イナルチ。男性のパンソリはラップそのものという感じで、最新のK-POPと通じるところがある。문화체육관광부 / YouTub