<台湾攻略に東風17号は必要ない。もしそれを東海岸に配備したとしたら、標的は明らかにアメリカだ> 中国が、台湾に近い場所に極超音速ミサイルを配備したとの報道を、中国国営メディアは「憶測にすぎない」と一蹴した。だが同時にこの報道からは同時に、いざとなればこれらのミサイルがどう使用されそうかも浮き彫りになった。 ここ数カ月、台湾海峡の緊張は増している。9月に人民解放軍が上陸を想定した実弾演習を行ったのに対し、台湾も上陸阻止のための訓練を行うなど、狭い海峡を挟んでにらみ合っている。 そんななか、香港のサウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)は10月18日、匿名の情報筋の話として、中国の人民解放軍が中国東南部の沿岸に極超音速ミサイル「東風(DF)-17」を配備したと報じたのに対し、中国共産党の機関紙「人民日報」の姉妹紙である環球時報は10月19日付けで長文記事を掲載した。 DF-17は中国で最も高性能の極超音速ミサイルで、最大で1550マイル(約2500キロ)の射程距離を持ち、これまでのミサイルよりも正確性が増しているとされると、SCMPの記事は伝えた。 だが環球時報は、ある軍事専門家の発言を引用する形で、こうした高性能ミサイルを台湾に用いることは、その射程距離を考えると「能力のムダ使い」になると伝えた。 米軍への「接近阻止・領域拒否」が狙い DF-17極超音速ミサイルが初公開されたのは、2019年10月1日。中華人民共和国建国の日に北京で行われた記念軍事パレードでのことだ。幅100マイル(約160キロ)ほどしかない台湾海峡の10倍以上の射程距離を持つ。 「(台湾)島と中国本土は距離が近いため、台湾の軍事拠点を爆撃するのは簡単だ」と、環球時報は記している。DF-17が配備された場合、このミサイルは「人民解放軍の作戦中に台湾問題に武力介入を企てようとするより強力な敵勢力、および中国の主権と領土の保全を脅かすその他の脅威を想定するものだ」という。 「台湾の軍事拠点は、人民解放軍のミサイル発射装置、および軍用機が搭載する空中発射式ミサイルの完全な射程内にある。そのため、台湾を爆撃するために高性能のミサイルを用いるのは、能力のムダ使いになるだろう」と、匿名の軍事専門家の発言を引用する形で、環球時報の記事は述べた。 DF-17が台湾付近に配備されたというSCMPの報道については、台湾の防衛アナリスト蘇紫雲も、極超音速ミサイルの使用想定に関して異を唱えている。 台湾政府が資金を拠出する研究機関、国防安全研究院の主任アナリストを務める蘇は、台湾の自由時報の取材に答え、極超音速弾道ミサイルは、台湾海峡で紛争が起きて外国の軍が干渉しようとした場合に、「接近阻止・領域拒否」を目指す中国の軍事戦略のために使われるだろうとの見方を示した。 ===== 蘇はさらに、これらのミサイル兵器は、アメリカの軍事基地や空母打撃群を狙うために用いられるだろうと述べた。その目的は、台湾を包囲し、台湾政府を支援しようとするあらゆる米軍部隊に攻撃を加えることにある。 DF-17ミサイルは大気圏のなかで超音速滑空することで、弾道ミサイル防衛システムを回避する能力を持つといわれるが、「命中率は低い」と、蘇は指摘する。「米軍にとってやっかいな存在ではあるだろうが、アメリカは既に有効な対抗手段を用意しているだろう」と蘇は付け加えた。 蘇は自由時報に対し、SCMP記事の矛盾点についても指摘した。中国軍は既に自国の東海岸沿いに、台湾への主要な攻撃手段として短距離の「東風(DF)-15」ミサイルをすでに配備しているというのだ。 再統一は「時間の問題」? 「人民解放軍が台湾に対してDF-17を使いたいのなら、中国の中央に設置するだけでいい。中国軍がミサイルの配備場所として東海岸を選んだという事実は、彼らの標的は米軍だいう『明らかな』しるしだ」と、自由時報は書いている。なお同紙は、台湾独立を支持する立場をとっている。 蘇は最後に、台湾のミサイル早期警戒システムはDF-17の発射および大気圏上層への上昇を検知できるとし、その後は高高度防衛ミサイル(THAAD)システムが即座に迎撃できると述べた。米軍も人工衛星や偵察機を利用して、移動式のミサイル発射装置や固定式施設の場所を特定し、破壊できる能力を持つはずだという。 アメリカが11月に大統領選を控え、中国から台湾への軍事的圧力はますます高まっている。環球時報は、武力による再統一は今や、「いつ、どうやって」行われるかの問題だと述べた。「現在の状況に鑑みれば、『武力による再統一』にもはや是非はない。あとはいつどうして行うかの問題だ」 (翻訳:ガリレオ)