<ロックダウンをせずに独自の感染対策を貫くスウェーデンでは、死者の9割を占める高齢者に対する行動制限も緩和しようとしている> スウェーデンは新型コロナウイルス対策としてロックダウン(都市封鎖)を実施せず、独自の方針を貫いてきた。若者を含む人口の大半には「密を避ける」程度の感染防止策ですませる一方、死亡リスクの高い70歳以上の高齢者に対しては他人との接触を避けることを求めてきた。今度は、高齢者に対しても感染防止のための制限を緩和する考えだ。 世界的に論争の的になっているスウェーデンの反ロックダウン戦略を指揮してきたアンデシュ・テグネル博士は、BBCラジオ4のインタビューで、「高齢者に、これ以上の完全隔離は必要ないと言うつもりだ」と語った。 新型コロナによるスウェーデンの死者のうち、70歳以上の死者は5269人で全体の89%を占める。そのスウェーデンにとって「優先すべきこと」は、高齢者に課したルールを「減らす」ことだ、とテグネルは言う。「それが今の私たちにとって一番の問題だからだ」 「高齢者もこれからは、一般の人と同じように、大勢の人の集まりを避け、人と距離を取ればいい」と、テグネルは言う。多くの死者を出したことへの罪滅ぼしなのか。 ホームでの面会も解禁 スウェーデン公衆衛生局のウェブサイトのアドバイスはこれまで、「感染防止の観点から、70歳以上の人には他の人との密接な接触を避けることを要請する」となっていた。 6月13日に規制を一部緩和し、70歳以上でもウイルス感染の症状がなければ旅行をしてもかまわないことにしたが、公共交通機関の使用は避けてほしいと勧告していた。「なるべく車など自力で移動するか、事前に座席を予約できる公共交通機関を利用してほしい」と呼びかけてきた。 10月1日には、半年の間続いていた老人ホームへの訪問禁止も解除された。 「約6カ月の間、老人ホームにいる親族に会いに行くことが禁じられていた。親子や夫婦でも会えなかった。このルールの緩和は国民に強く支持されたと思う。今は訪問できるようになったが、マスクをつけ、距離を保つことは必要だ」と、ストックホルム大学のトム・ブリットン教授(数理統計学)は本誌に語った。 ===== ジョンズ・ホプキンス大学(JHU)の20日の報告によると、スウェーデンは現在、ヨーロッパで7番目に死亡率が高く、10万人当たりの死者数は58.12人に達している。 スウェーデンで高齢者の死者数が多いことについて、テグネルは、「こんなに死亡率が高くなければよかったのにと誰もが残念に思っている。まったく予想できなかったことだと言っておきたい」と語った 「われわれは積極的に、わかっていてこのリスクを取ったわけではない。スウエーデンでは高齢者を犠牲にしたようなものだ、という批判があることは知っているが、そんなことはまったくない、と断言する」 ロイター通信によると、スウェーデンの新型コロナによる死者のうち約2600人が高齢者介護施設の入居者だった。 今年7月に発表された研究によると「スウェーデンの新型コロナ死者数の70%以上は、高齢者ケア施設に滞在中の人々だった(2020年5月中旬現在)」という。 さらに、「新型コロナの犠牲者は、ほとんどが高齢者である。スウェーデンでは、2020年5月16日時点の死亡者の割合は70代で22%、80代が41%、90代が25%で、70歳以上が88%を占めている」としている。 高リスクだった施設入居者 だが、研究を共同執筆したレシオ研究所(ストックホルム)のダニエル・クライン研究員はそうした見方を否定する。「スウェーデンにおける医療と高齢者ケアの状況は、2020年3月までの2年間についてはAまたはA +の評価を与えてもおかしくない、すばらしいものだった。スウェーデンの制度は超高齢者と病人の死亡率を抑制していた」と本誌に語った。 「2020年3月に新型コロナウイルスが老人ホームやその他の高齢者介護サービス施設を襲ったとき、悲しいことにたくさんの高齢者がウイルスに屈した。だがその前の2年間、スウェーデンでは優れた医療と高齢者ケア制度のおかげで、多くの高齢者が死を免れ、命を長らえていた。そのため、新型コロナの感染拡大時には、施設に死亡リスクが高い人々がたくさんいた。この事実を無視するのは無責任だ」と、バージニア州にあるジョージ・メイソン大学の経済学教授でもあるクラインは言う 高齢者ケアが良すぎたために犠牲も増えたのだとすれば、皮肉だ。