<消費者が好んでグーグルを使っている限り事業解体は不満と混乱を生むだけだと専門家> 米司法省は10月20日、グーグルを独占禁止法違反で提訴した。この訴訟の結果としてグーグルが解体されることになれば、消費者の間に不満と混乱が生じるだろうと、あるアナリストは予想する。 調査会社フォレスター・リサーチの上級アナリスト、コリン・コルバーンは本誌に対し、「この訴訟が消費者にどのような利益をもたらすのか分からない」と語った。「総じてプラスになるとは思えない。大抵の人はグーグル検索を気に入っている」 すぐに何かが変わるということはないだろう。グーグルの親会社であるアルファベットは、潤沢な手元資金を使って徹底抗戦するだろう。コルバーンは、訴訟が10年にわたって延々と続く可能性も十分にあると指摘する。 グーグルが各種スマートフォンに自社の検索エンジンをプリインストールさせるのを阻止して、Bing(ビング)やヤフー、DuckDuckGo(ダックダックゴー)などの企業により多くのチャンスを与えても、消費者がちょとした操作で使い慣れたグーグルの方に変えれば結局何も変わらないとコルバーンは言う。「自分たちの好きなものに悪影響が及ぶと考えれば、消費者はグーグルの味方をするだろう」 同じような訴訟の繰り返しになる可能性 ウェブトラフィック分析サービスを提供するスタットカウンターによれば、現在グーグルはアメリカの検索市場で88.14%のシェアを保有している。これに対してBingは6.67%、ヤフーは3.19%、DuckDuckGoは0.12%、Ecosia(エコジア)は0.12%でMSNは0.05%だ。 コルバーンは今回の提訴について、グーグルが検索部門で独占的な地位を築くのを許した(一部には政府の監視の目が甘かったからだという指摘がある)ことに対する、政府による「償い」の可能性もあると言う。 訴訟の行方次第では、フェイスブックやアマゾンなどの主要企業が恩恵を受けることになる可能性がある。いずれの企業も現在、自社の顧客向けの広告配信技術を開発中だ。グーグルが今後、政府との和解の一環として広告事業の売却を余儀なくされれば、これらの企業が得をすることになるだろうとコルバーンは言う。 もしグーグルの広告事業が解体されれば、ベンチャーキャピタルが新たな技術を携えて市場に参入し、新たな市場リーダーが台頭して独占的地位を築く可能性もある。そうなれば司法省は、「大きな利益をあげて経営が安定している革新的な企業による市場独占に関する懸念」という、今とまったく同じ問題に直面することになる。要するに、今後も主な登場人物(や企業)の名前は変わっても、内容はほとんど同じ訴訟がずっと続く可能性があるということだ。 ===== しかし調査会社IDCのメディアおよびエンターテインメント部門担当副社長であるカルステン・ワイデは、グーグルの解体は消費者に「より安価な新製品」という恩恵をもたらすと予想する。 「グーグルはあまりにも巨大で、ほかのすべての事業者をぶっ潰してしまう」と彼は本誌に語った。「マイクロソフトは、グーグルと大差はあっても検索部門で2位になるために、何百万ドルもの投資を行っている。競争がさらに激化すれば、もっと多くの企業が力を伸ばすだろう。それは全ての人にとっていいことだ」 たとえば、もしも司法省が訴訟に勝ってクロームが別会社になれば、複数のスタートアップ企業がユーザー向けにより良いプライバシー保護機能の開発で競争し、台頭する可能性もある。あるいはグーグルよりも安い料金を提示する新たな企業が出てくる可能性もあるとウェイドは指摘し、「全体としてみれば、解体は良い効果をもたらすと思う」と語った。 米司法省は、グーグルが競争を阻害する行為によって、検索サービス市場で独占的な地位を保ってきたと主張。広告事業で得た何十億ドルもの資金を携帯電話メーカーやアップルのサファリなどのブラウザ、通信事業者などに支払ってグーグルをデフォルト(標準)の検索エンジンにさせ、競合他社よりも不当に優位な立場を得たと指摘している。 グーグル側は猛反論 司法省は20日に首都ワシントンの連邦地裁に提出した64ページに及ぶ書類の中で、グーグルは長年「排他的な事業契約」によって意図的に「流通経路を断ち、ライバルをブロック」してきたと主張した。 また司法省は、グーグルは各デバイスメーカー(アップル、LG、モトローラやサムスン)、通信事業者(AT&T、Tモバイルやベライゾン)やブラウザ開発事業者(モジラ、オペラやUCWeb)に対して、「毎年数十億ドルを支払い」、自社の検索エンジンが「確実にデフォルト設定される」ようにしてきたとも指摘した。 グーグルのグローバル問題担当上級副社長であるケント・ウォーカーはこれについて、司法省の提訴には「重大な欠陥がある」と反論した。 「利用者は強制されたからでも、代わりの手段が見つからないからでもなく、自ら選んでグーグルを使用している」と彼は声明で述べた。「この訴訟はまったく消費者の助けにはならない。むしろ、より質の低い検索エンジンを促進し、スマホの価格を高騰させ、人々が好みの検索サービスを利用するのを難しくすることになる」 グーグルは多くのデバイスに、デフォルトの検索エンジンとしてプリインストールされているが、ユーザーは簡単な操作で切り換えることができる。ダイアルアップ接続サービスの切り換えを行うために、新しいソフトウェアのCD-ROMを購入してインストールを行わなければならなかった1990年代と今では大違いだ、とケントは指摘した。 また消費者には幅広い選択肢が提示されていて、2019年の全世界のアプリダウンロード数は、過去最高の2040億件に達した。アマゾンやインスタグラム、フェイスブック、スナップチャットやスポティファイをはじめとする多くの人気アプリは、プリインストールされていないとも彼は主張した。