<すでに主要メンバーら6人が公開銃殺されていたが、その他のメンバーの女子大生も粛清された> 北朝鮮で今年7月、首都・平壌の総合レジャー施設で組織的な売春を行っていたグループが摘発された事件については、本欄ですでに伝えた。 米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によれば、市内の東大院(トンデウォン)区域にある総合レジャー施設・紋繍院(ムンスウォン)の責任者が、有名映画俳優、平壌音楽舞踊大学、平壌演劇映画大学の教授らが20代前半の美貌の女子大学生に「1カ月に500ドル(約5万3000円)以上儲かる仕事がある」などと声をかけ、施設内のカラオケ店で売春させていたというものだ。客は、中央党(朝鮮労働党中央委員会)や平壌市党(党平壌市委員会)の幹部らだった。 報告を受けた金正恩党委員長は、自分が大事にしている平壌音楽舞踊大学、平壌演劇映画大学の学生が売春に加担したことに激怒。組織の主要メンバーら6人を公開銃殺させた。 司法機関の幹部がRFAに語ったところによると、平壌での過去の売春組織摘発事例で死刑になったケースはなかったが、今回は同様の行為が全国に広がっていることと、中央の幹部や女子大生が関与するという事件の重大性を鑑みて公開銃殺を行ったもようだという。 そしてRFAの続報によれば、処罰の対象はその後、大幅に拡大した。 俳優や大学教授に対しては、奥地の農村への追放という処分が下された。本来なら処刑されてもおかしくないほどだが、金日成主席や金正日総書記から何度も高い評価を受け、映画界への功労が大きかったことが勘案されたようだ。 さらに平壌市の幹部によると、中央と司法機関の合同グルパ(取り締まり班)が、平壌音楽舞踊大学、平壌演劇映画大学での調査を行い、売春に加担した200人の学生を取り調べた。 そのうち、常習的に売春を行ったり、クラスメートを誘ったりしていた50人に対しては退学と、3カ月から6カ月の労働鍛錬刑の処分が下された。つまり、強制労働を強いられる刑務所の労働鍛錬隊に送られたということだ。事実上の粛清で、彼女らが北朝鮮社会の表舞台で活躍できる可能性はなくなった。 <参考記事:女性芸能人らを「失禁」させた金正恩の残酷ショー> 加担の程度が軽い100人に対しては、教養(再教育)処分が下された。これは、刑法ではなく行政処分について規定した人民保安取締法と行政処罰法に定められた最も軽い処分だ。 一方、咸鏡北道(ハムギョンブクト)の司法機関の関係者によると、道内の清津市内で売春行為に対する大々的な取り締まりが行われ、40人が摘発されたが、その中には、市内の大学に通う女子大生が多数含まれていたという。 <参考記事:北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは...> [筆者] 高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト) 北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)、『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)、『北朝鮮ポップスの世界』(共著、花伝社)など。近著に『脱北者が明かす北朝鮮』(宝島社)。 ※当記事は「デイリーNKジャパン」からの転載記事です。