<フェイスブックなどの暴走を止めるには、GDPRのようなプライバシー保護の仕組みが必要。米規制当局は次に、インターネットの透明性も高めなければならない> 米司法省は10月20日、ネット検索と広告の分野で公正な競争を妨げているとしてIT大手のグーグルを反トラスト法(独占禁止法)違反の疑いで提訴した。市場の独占を武器に社会を食い物にしてきたとされる巨大企業の精査は、世界的に歓迎すべき動きだ。 アメリカは過去10年間にインターネット上で表面化した最大の課題に対処するため、ネット規制の包括的アプローチを推進しなければならない。今回の提訴は重要な動きだが、法の網が捉えるべきはグーグルのみではない。 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)によって、ネット規制の重要性はさらに高まっている。新型コロナは「仮想経済」への移行を加速させた。仕事や学校はかなりの部分がオンラインに移行。遠隔医療サービスは拡大した。ネットショッピングは急増した。 私たちの生活は根本的に変わるのか。新しい日常はどんなものなのか。答えはまだない。だが短期的に見れば、オンラインでの情報交換が世界中で拡大し、さまざまな企業や学校、保険会社などがより多くの個人情報を共有しつつあることは明らかだ。 こうした動きは全て、ほぼ規制ゼロのオンライン・プラットフォーム上で起きている。デジタルコミュニケーションが社会の基本サービスになりつつある今、私たちは誰が個人情報にアクセスして、それをどのように利用するのかを問う必要がある。 私たちは毎日同じソーシャルメディアやビデオ会議を使い、検索エンジンで調べものをする。その結果、これらのサービスを提供する企業は、競合他社を排除し、ますます経済的に強くなる。 EU並みのデータ保護を さらに巨大IT企業は、データを吸い上げ、それを分析して売れる「情報」に仕立て、インターネットを自社の利益を最大化するために都合のいい空間に作り替えようとしている。私たちがネット上で何を見て、何を消費するかを独占的にコントロールしようとしているのだ。 今回の大統領選でドナルド・トランプ現大統領が再選されても、民主党のジョー・バイデン前副大統領が勝利しても、アメリカの次期政権はこの緊急事態に対応しなければならない。議会と協力して、意味のあるネット規制法を成立させなければならない。 ===== しかし、ビジネスモデルが必然的に搾取的になるフェイスブックのような企業を、具体的にどうやって規制すればいいのだろうか。 インターネット分野で支配的なビジネスモデルは、膨大な量の個人情報や独自のネットワーク情報を無制限に収集し、効果的なコンテンツの配置や広告の配信のために、外部から見ると極めて不透明だが高度なアルゴリズムを使う。さらに業界全体の傾向として、民主主義的な規範の遵守などをことごとく犠牲にしても、プラットフォームの力強い成長を優先する。 こうした商業的な行き過ぎに、次期米政権は連携して対応しなければならない。 その第一歩は、連邦レベルの包括的なプライバシー法を制定することだ。2018年に成立し今年1月から施行されたカリフォルニア州の消費者プライバシー法は、州レベルで消費者保護を前進させる有意義な一歩となった。しかし、連邦レベルの一貫したアプローチがなければ、企業は州ごとに異なる継ぎはぎ状の規制に対応せざるを得ない。 ネット上で個人のプライバシーを保護するためには、ヨーロッパの一般データ保護規則(GDPR)のような枠組みが必要だ。GDPRは、消費者が個人データを効果的に管理できるようにして、EU全域で国際企業に対する規制環境を単純化したものだ。 プライバシーの保護とは、消費者が自分のデータ──およびそのデジタルな価値──を自分で管理できるようにすること。そして、消費者を商品に変えてデジタル広告主に販売するという商業的枠組みをオプトアウト、つまり、本人の意思でいつでも拒否できるようにすることだ。 無料サービスという欺瞞 次に、アメリカの規制当局は、あらゆる意味でインターネットの透明性を高めなければならない。大手IT企業は、ユーザーのどのような情報を収集しているか、本人にリアルタイムでは伝えていない。さらに、ユーザーのデータを処理して「行動洞察」を行っているが、洞察の内容や分析手法は明らかにしていない。 ピュー・リサーチセンターによると、アメリカの成人の79%が、企業が自分のデータをどのように収集しているかを懸念している。また、データ収集のリスクはメリットを上回ると考える人、そして企業が自分のデータを収集していることを自分がコントロールできていないと感じている人は、それぞれ81%に上る。 これらの背後にあるアルゴリズムについて、企業がこれまで以上に透明性を高めることは、技術的に不可能ではない。自ら実践する動機付けがなされていないだけだ。立法者と規制当局は企業に透明性を強制することができるし、そうするべきだ。 ===== 最後に、巨大IT企業が公共の利益を犠牲にして成長を目指すことに対抗するために、立法者は市場の競争を活性化させる方法を検討し、反トラスト法とその執行を強化しなければならない。 アメリカの裁判所はあまりに長い間、消費者の被害に焦点を当てた判例を確立してきた。しかし、大手IT企業の経営者は、自社のサービスはユーザーにとって「無料」だと繰り返し間違った主張をしている。その主張がまかり通る業界では、消費者の被害という指標に基づいて効果的に規制することはできない。 IT市場は「規模の経済」が働きやすく、独占企業が生まれやすい土壌があることを織り込んだ規制をするべきだ。 技術政策は正念場を迎えている。搾取的な業界が数十年にわたり蓄積してきた経済力に手綱を掛けようと、極めて大きな政治的意思が働いている。今回のグーグルの提訴は、巨大IT企業の規制について、有意義で包括的な改革政策を進める機会をもたらす。 誰が率いるにせよ、次期政権はその機会を捉えなければならない。ネット上で消費者を保護する有意義な法案を可決するために、党派を超えて取り組むべきだ。 From Foreign Policy Magazine <2020年11月3日号掲載>