<特定の教科が得意かどうかがクラス内での人気を左右する> 「スクールカースト」という言葉が流行ったことがある。クラスの中の階級という意味だが、こういうのがあるのは誰もが経験で知っている。 階級分けの基準は、メンバーの中でどれほど人気を得ているか、決め事などの際、どれほど影響力を持っているかだ。カーストが上位の子が遊びに来ると、わが子がいじめに遭わぬようにと、接待をする親もいると言う。 学級担任の教師にとっても、教室内のカースト構造は重要な関心事だ。それを可視化する技法として、ソシオメトリック・テストなども開発されている。「好きな子、嫌いな子の名前を挙げてください、その理由も書いてください」と尋ね、得られた回答をもとに学級内の人間関係図(ソシオグラム)を描く。「スキ」の矢印を多く集めている子は人気者で、「キライ」の矢印を多く向けられている子は良く思われていない生徒だ。 カーストの決定要因としては、ルックスの良さや腕っぷしの強さなどの他に、勉強の出来というのもある。子どもの本分は勉強で、学歴社会の度合いが強い日本では、勉強ができる子が賞賛の対象となりやすい。 勉強の得意度は、友人の多さと関連している。思春期の小学校6年生のクロス集計結果を示すと<図1>のようになる。勉強の得意度で分けた4つの群ごとに、友人の多さを比較したグラフだ。国立青少年教育振興機構の調査データを独自に集計して作成した。 2つの問いに有効回答をした2562人のデータで、タテの4つの群ともサンプル数は十分にある。群ごとに友人の多さを見ると、勉強が得意な群ほど、友人が多いという回答の比率が高い。青色の「とても思う」の割合は、勉強が最も得意な群では68.3%だが、最も不得意な群では37.1%しかいない。攪乱のないきれいな傾向だ。むろん例外もいて、勉強がとても得意な群にも、友人が全くいないと自覚している子(赤色)もいる。 ===== 勉強といっても複数の教科があるが、教科ごとに得意群と不得意群に分け、友人が多い子の割合を比べると面白い傾向が出てくる。得意な教科を尋ねた設問で当該教科を選んだ子を得意群、それ以外を不得意群とした。<表1>は、友人がとても多いと考えている児童の率(図1の青色)を、得意群と不得意群で比較したものだ。 どの教科を見ても、友人が多い子の割合は、不得意群より得意群で高い。座学では、社会と外国語において差が比較的大きい。外国語は、2008年改訂の学習指導要領より高学年で実施されている外国語活動(現行では教科の外国語)で、オーラルでのコミュニケーション能力の素地を養うものだ。これらが得意な子は、海外旅行経験などが豊富で話が面白いためかもしれない。 だが、それ以上に差が明瞭なのは体育だ。不得意群では38.6%であるのに対し、得意群は60.3%で、21.7ポイントもの差が開いている。これは経験則に照らしても頷ける。運動ができる子はスターになりやすく、不得手な子は体育の授業で恥をかいたりすることが多い。筆者自身、体育の授業に良い思い出はなく、皆の前で一人ずつ跳び箱を跳ばせるのは止めてほしい、と思ったものだ。 いわゆる「スクールカースト」の決定要因として、運動・スポーツの出来は大きい。だが、どの子どもも何らかの得意なものは持っている。必要なのは、それをすくい上げてほめたたえることだ。他者からの承認欲求は、思春期の年代では特に強くなる。 教育の目的は調和のとれた人間形成だが、バランスにとらわれすぎると、不得意なことの矯正ばかりに目がいきがちになる。それよりも得意なことを認識させ、肯定的に自己を捉え、明るい将来展望を持たせたい。丹念な児童観察・理解をもとにそれを成し遂げるのは、専門職としての教師の役割だ。 <資料:国立青少年教育振興機構『青少年の体験活動等に関する実態調査』(2016年度)> =====