<フランス、オーストリアとイスラム過激派のテロが連続し、欧州全域に緊張感が高まるなか、イギリスはテロ警戒レベルを引き上げた> ヨーロッパでは今、各地でイスラム過激派によるテロが相次ぎ、さらなる攻撃への不安が高まっている。オーストリアとフランスで発生した複数のテロ事件を受けて、イギリスでもテロの警戒レベルが引き上げられた。イギリスの対テロ当局者によれば、それはテロの「可能性がかなり高い」ことを意味する。 イギリスのプリティ・パテル内務大臣は、合同テロ分析センター(JTAC)が、テロの警戒レベルを「重大(substantial)」から「深刻(severe)」に引き上げたことを発表した。 「これは予防措置であり、特定の脅威に基づくものではない」とパテルは言い、イギリス全土で警備体制を強化するなか、イギリス国民は「警戒すべきだが、恐れるべきではない」と注意を喚起した。高まるテロの脅威に対処するために態勢を立て直し、対応策を強化する重要な措置はすでに講じられている。 「イギリスは現実的かつ深刻な国内テロの脅威に直面している」と、パテルは語った。「国民は警戒を続け、不審な活動があれば警察に報告するようお願いしたい」 2日の夜、オーストリアの首都ウィーンでテロとみられる銃撃事件が起き、4人が死亡、17人が負傷した。ナイフとライフルで武装した銃撃犯は、市の中心部にあるユダヤ教の礼拝堂(シナゴーグ)付近をはじめ市内6カ所で発砲した。 テロ発生は避けられない フランスのニースでは10月29日、ナイフによる襲撃で3人が死亡した。10月16日には教師のサミュエル・パティがパリ近郊で首を切断されて殺害される事件が起きている。 イギリスの警戒レベル引き上げの決定を行ったJTACは、ロンドンにある軍事情報活動第5部(MI5)に拠点を置く機関で、警察、政府、治安機関のテロ対策専門家で構成されている。 フランスにおけるテロ事件によって国内のイスラム教徒コミュニティと政府の間の緊張は高まっており、今後もテロ攻撃は「避けられない」と専門家は本誌に語った。 イギリスの警戒レベルは、昨年11月に5年ぶりに「深刻」から「重大(substantial)」に下がっていた。「深刻」レベルは5段階中2番目に高く、その上には「危機的(critical)」しかない。最高位の「危機的」までレベルが上がったのは、2017年5月のことで、マンチェスター・アリーナでのアリアナ・グランデのコンサートで発生したテロがきっかけだった。 ===== オーストリアの警察は3日、ウィーンで起きた一連の銃撃事件の容疑で14人を逮捕した。銃撃の実行犯の1人は現場で射殺された。男は2019年12月に刑務所から釈放された20歳の「イスラム過激派のテロリスト」だったと、オーストリアのカール・ネハンマー内相は語った。 テロの実行犯を探す捜査は今も進行中だが、当局は警察に射殺された銃撃犯は単独で行動していた可能性があると考えている。一部の目撃者は、複数の銃撃犯を見たと話しており、警察は事件の具体的な状況を解明するために、スマートフォンで撮影された動画約2万本を検証している。 フランスでこのところ頻発しているテロ攻撃には、単独で行動する一匹オオカミのイスラム過激派が関わっている。パリ近郊の学校の外で歴史教師だったパティの首を切ったチェチェンの若者は、その後警察に射殺された。この事件を機にフランス政府が新たにイスラム過激派の取り締まりを強化すると、チュニジア人男性がニースのノートルダム寺院で3人を刺殺する事件が起きた。 各国首脳らはウィーンの銃乱射事件を強く非難している。フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、ヨーロッパは攻撃にさらされても、決して「あきらめてはいけない」と語った。イギリスのボリス・ジョンソン首相は「恐ろしい攻撃に深いショックを受けた」と述べた。この事件に関して、イギリスは「できる限りの方法で支援する準備ができている」と、パテルは表明した。