<人気番組をパクったユーチューブチャンネルが大ヒット。だがそこにいたのは経歴まで偽物の男たちだった> 今年は、コロナ禍のお籠り生活が続いたためか、さまざまなユーチューブコンテンツが人気を集めた。韓国では地上波放送局MBCの人気軍隊バラエティ『本当の男(진짜사나이)』をパロディしたユーチューブ番組『偽物の男(가짜사나이)』が評判になり、シーズン1終了後、さらにパワーアップしたシーズン2もユーチューブ配信されていた。そして、それだけに留まらず、なんと映画化の企画も出ていたそうだ。 ところが、先日このコンテンツが突然、動画全面非公開となってしまった。人気が高かっただけに、視聴していたファンは驚きを隠せず、ニュースでも報道されるほど話題となった。一体このユーチューブチャンネルに何があったのだろうか? 70年間、戦争が終結していない韓国 『偽物の男』を語るためには、まず元となった『本物の男』を紹介しなければならない。これは韓国MBCが2013年4月から放送していた軍隊系リアリティ番組だ。芸能人、スポーツ選手らが韓国軍に入隊し、訓練所内で生活する姿を追ったリアリティ番組で、徴兵制のある韓国ならではの企画だ。シーズン1、2と、「女性兵士」の特別バージョン。そしてパワーアップしたシーズン3にあたる『本物の男300』も放送された。さらに、KBS1でも1泊2日短期入隊番組『兵営体験 本物の男』というものまで作られた。 それだけ人気のあるのは、入隊前の男性ならこれから来るであろう軍隊生活を事前予習でき、入隊経験のある男性なら苛酷な軍隊生活を懐かしめる。また女性なら今軍隊にいる恋人や家族の暮らしに思いを馳せたり、除隊を待っていた頃を振り返る、といった具合で、韓国民なら誰もが自分のこととして感情移入できる内容だからだ。 これまでの出演者は、俳優のキム・スロや、芸人ホ・ギョンファン、歌手でタレント活動もしているヘンリー、スピードスケート選手ビクトリー・アンなど多様だ。また、実際の軍隊生活と違う点として各シーズンとも外国人タレントも数名参加していることが多い。 日本でも人気のあるアイドルグループのメンバーの出演もあり、これまでZE:Aのパク・ヒョンシク。MADTOWNのジョタ(イ・ジョンファ)。また、女性兵士版ではBLACKPINKのタイ人メンバー・リサ、MOMOLANDのジュイ、Brown Eyed Girlsのナルシャなども軍隊入隊経験を果たしている。 このように多くの韓国人から愛され認知度の高いTVシリーズとなった『本物の男』だが、これをパクリ、さらに過激な訓練にして作られたのが『偽物の男』である。 ===== パクリ企画にかかわらずタレントまで起用 『偽物の男』はユーチューブコンテンツとして配信された。チャンネルの運営は、エクササイズ系ユーチューブチャンネル「フィジカルギャラリー」と、戦術研究/開発/訓練を行う企業MUSAT Inc.が行っている。MUSATとは、Multi UDT/SEAT Assault Tacticsの略であり、動画内ではアメリカ海軍の戦術方式の中でも、体力的、精神的にさらに厳しいレベルの訓練を体験する内容だ。 『偽物の男』は、今年7月9日からシーズン1がスタート。配信直後からネットを中心に話題となり、1話目はアップロードするや否や200万回再生を記録している。出演者は、ラッパー1人とユーチューバーなどの配信系有名人5人、計6人である。 シーズン1が最終回を迎えると、すぐにシーズン2の製作が開始され、10月1日からその1話目が配信開始された。シーズン2では出演者も全14名に増え、ユーチューバーたちに加え、元サッカー選手であるキム・ビョンジ、フランス系の俳優ジュリアン・カン、スピードスケート・ショートトラック選手クァク・ユンギなど前回よりも知名度の高い出演陣がそろった。 さらに、視聴者の関心を集めたのが、MUSAT Inc.に所属する訓練教官たちだ。動画内では、アメリカ軍経験者やボディーガード経験者であるマッチョでイケメンな教官たちが、顔出しで訓練の解説をするインタビューシーンも多く、訓練生たちと同様に教官たちの人気も上がっていった。 出演者の過去の悪行をネット民が晒す このように、ユーチューブチャンネルとして大成功したかのように見えた『偽物の男』だったが、一体なぜ公開中止に追い込まれたのだろうか。 もともとトレーニングを積んだ軍人が受ける訓練であるため、その過激さに批判が集まっていた。特に精神的訓練ともいえる水攻めでは、水恐怖症の訓練生を何度も波が打ち寄せる浜辺に寝かせ、体を震わせ嘔吐しながらも訓練を続けさせる姿には一部やりすぎの声も上がっていた。しかし、多くの視聴者は苦しみながらも耐え抜き、一歩一歩成長する訓練生を応援しながら配信を楽しんでいた。 配信停止となった理由は、次々と出演者の問題が明らかになったからだ。特に教官たちの私生活や偽証を、ネット民たちが続々と暴露しだした。 教官の中でも、甘いマスクとカリスマ性で人気のあったイ・グン氏については、 ●軍隊で部下に200万ウォン借りてそのまま返していない容疑 ●アメリカ市民権保持者と思われながら実は韓国人である ●米軍と国連軍で勤務したと言っていたがウソ ●路上で女性にセクハラ容疑 ●他の教官と一緒に不法な風俗店へ出入りしていた といった疑惑が噂されるようになった(後日、本人が韓国の媒体のインタビューでこれらの噂について反論している)。 ===== 人気教官、色仕掛けの詐欺にひっかかる さらに、配信停止を決定的にしたのが、人気教官ローガン氏の「モムキャムフィッシング」疑惑である。「モムキャムフィッシング」とは、最近韓国で増えている詐欺の一つで、リベンジポルノに似た手口だ。韓国人で使っていない人はいないと言われるメッセージアプリのカカオトーク。この中のオープントークで詐欺が行われることが多いという。 ビデオ通話で知らない者同士1:1の映像チャットと思いきや、実はその映像が録画されている。相手の女性は全裸や半裸状態なことが多く、話しかけているが音声が聞こえない。被害者の男性が「音声が出ない」と文字で伝えると、女性は「音声アプリダウンロードして。」などと言われ、リンクを送信してくるという。 ダウンロードの画面をクリックすると同時にスマートフォンの中の個人情報が抜き取られ、1:1で行っていた恥ずかしい行為の動画をネタに脅迫が始まるという仕組みだ。これ以外にも様々なルートを用いて仕掛けられる罠があるが、基本的に許可なく撮影された動画や画像を元に行われる詐欺は「モムキャムフィッシング」と呼ばれている。 『偽物の男』出演の人気教官ローガン氏は、この色仕掛けの詐欺に引っかかってしまったそうだ。その画像を、フォロワー数33万人をもつ「チョン・ベウ」というまったく関係のない男性ユーチューバーが、自身のチャンネルの生配信中に写真を公開し騒ぎとなった。今被害が深刻化している詐欺行為の証拠ということで、配信日の翌日である先月15日には、早速ソウル江東警察署が捜査を開始している。警察は、チョン・ベウを不法撮影物流布及び名誉毀損など疑いで捜査し、正式立件可否を決める方針であると発表した。 リアリティ番組の出演者は創作された「登場人物」 警察まで巻き込む騒ぎとなった『偽物の男』だが、20日のMUSAT Incの発表によると、妊娠中だったローガン氏の奥さんは、一連の騒動によりストレスで流産してしまったそうである。ローガン氏は、今回の関係者を民事と刑事事件両方で訴える構えを見せている。 ここ最近リアリティ番組出演者への誹謗中傷が後を絶たない。今の時代、検索サイトを使えば個人情報やSNSでの過去の発言を誰でも簡単に見つけることができるために、一部の悪意を持った視聴者は出演陣の荒さがしをし、拡散することに必死なようだ。 生まれてからこれまで、何の罪も欠点もない人なんていないだろう。何か小さな糸口が見つかれば、世間は一斉に出演者叩きに走ってしまう。視聴者は、リアリティ番組も所詮作られたフィクションであり、登場する人たちはあくまで創作された「登場人物」であることを頭に入れて視聴する必要があるのではないだろうか。 【話題の記事】 ・韓国もフランスも続々と キッズ・ユーチューバーへの規制始まる ・韓国へ「股」をかけて活躍する日本のセクシー俳優たち ===== 『偽物の男』の本当の姿は? 『ニセモノの男(가짜사나이)』でカリスマ的人気を誇った教官イ・グン氏については、国会の国政監査に招喚すべきと言い出す国会議員まで出る始末...... JTBC News / YouTube BLACKPINKリサも経験『本物の男』 こちらが本家『本物の男』。BLACKPINKのリサが出演した『本物の男 300』。 KOCOWA TV / YouTube