<微生物の作用により鉱石から有価金属の抽出を促進する「バイオマイニング」が、地球外でも活用できる可能性があることが明らかとなった......> 微生物の作用により鉱石から有価金属の抽出を促進する「バイオマイニング」は、金や銅など、金属資源の生産に広く用いられている。微生物の活性を利用して鉱石を溶解させる「バイオリーチング」は、バイオマイニング技術のひとつだ。このほど、バイオリーチングが地球外でも活用できる可能性があることが明らかとなった。 小型バイオマイニングデバイスを10年かけて独自に開発 英エジンバラ大学英国宇宙生物学センターの研究チームは、マッチ箱サイズの小型バイオマイニングデバイスを10年かけて独自に開発し、2019年7月、米フロリダ州のケープカナベラル空軍基地から打ち上げられたスペースXのロケット「ファルコン9」を通じてこのデバイス18個を国際宇宙ステーション(ISS)に搬入。 国際宇宙ステーションでは、7月30日から3週間にわたり、火星、地球、微小重力の3種類の重力をシミュレーションした条件下で微生物が月にも豊富にある玄武岩から希土類元素(レアアース:REE)をバイオリーチングできるのか、実験が行われた。 Credits: Rosa Santomartino, UK Centre for Astrobiology/University of Edinburgh その結果、微生物は、火星や月でも、鉱石から有用物質を抽出するのに役立つ可能性があることが示された。一連の研究成果は、2020年11月10日にオープンアクセスジャーナル「ネイチャーコミュニケーションズ」で公開されている。 バイオリーチングの効率は1.1〜4.29倍も高かった 宇宙に前哨基地を設置する際、地球から材料を輸送するには大きなコストがかかることから、宇宙環境でのバイオマイニングの実現可能性には大きな期待がかけられている。 この小型バイオマイニングデバイスでは、月や火星でもよく見られる玄武岩が「スフィンゴモナス・デシカビリス」、「枯草菌」、「クプリアヴィドゥス・メタッリデュランス」という3種類の微生物の溶液に浸されている。 一連の実験では、重力が変化してもバイオリーチングによる希土類元素の抽出率に有意差はみられず、「スフィンゴモナス・デシカビリス」はいずれの重力下でも、バイオリーチングの効率が1.1〜4.29倍も高かった。この実験結果は、「微小重力が微生物反応に影響をもたらす」との従来の説とは一致していない。 人類の宇宙進出の助けとなるのか...... 研究チームは、その理由のひとつとして「この実験では、微生物に十分な養分を与えたためではないか」と考察している。つまり、理論上、微生物に適切に養分を与えれば、様々な重力下でバイオマイニングが実現できるというわけだ。 研究論文の筆頭著者でエジンバラ大学の宇宙生物学者チャールズ・コケル教授は「我々の実験は、太陽系でのバイオマイニングの科学的・技術的実現可能性を後押しするものだ。宇宙バイオマイニングは、宇宙での自立した人間の存在をサポートする可能性がある」とその成果を強調している。 ===== Biomining in Space