<ジブラルタル海峡周辺を通る船に対して、3頭のシャチが執拗に体当たり攻撃を仕掛ける事例が相次いでいる。これまでにないシャチの行動の意外な原因とは> スペインとポルトガルの沖を通る船にシャチが体当たり攻撃を加える事件が増えている。異常な行動だが「ひどくなる一方だ」と、海洋生物学者らはいう。 今年の夏以来、この海域を航行する船の乗組員から、シャチが、時には何時間も船に体当たりを続けたという報告があがっている。このような行動は、以前はごくまれにしか報告されていない。シャチはなぜ船を攻撃目標にするのか。 シャチに体当たり攻撃を受けた船の報告が増えた後、スペイン当局は報告があった海域において、全長15メートル未満の船の航行を禁止した。それより小さい船は、全長10メートルに達することもあるシャチの攻撃に耐えられないかもしれないからだ。2時間に及んだ攻撃の様子は、下の動画で見ることができる。 数名の科学者が非公式の調査チームを結成し、体当たりの事例を調査した。そこでわかったのは、攻撃のほとんどが 同じ3頭の若いシャチによって行われているということだった。観察を続けたところ、この3頭が怪我をしていることもわかった。 怪我の原因が船への攻撃によるものかどうかは不明だ。 いずれにせよ、攻撃は続いている。「ひどくなる一方だ」と、調査チームの一員である生物学者のルノー・ド・ステファニスはBBCに語った。 舵を狙う意外な理由 シャチは船や乗員を襲う気なのか。あるいは船に対するある種の「復讐」なのか。研究者はむしろ、遊びに関連しているのではないかと推測する。 同じく調査に関与した海洋哺乳類研究コーディネーター(CEMMA)の研究者ルース・エステバンはBBCに、シャチが「常に舵を標的にしているようにみえる」と語った。船の動きを司る部分だからかもしれない、と彼女は言う。 「場合によっては、舵を動かすことで、船全体を動かすことができる。ビデオのなかには、船をほぼ180度回転させていた例もあった」と、エステバン。「(高い知能を持つ)シャチは、自分の力で本当に大きなものを動かしたことがわかり、ものすごくいい気分になるのかもしれない」 「私はシャチが狩りをするところのを見たことがある」と、ルノーは言う。「シャチは狩りをするとき、声を出したり、姿を見せたりしない。気づかれないよう獲物に忍び寄る。シャチがマッコウクジラを攻撃するところを見たことがあるが、それは猛烈な攻撃だった。だがこの3頭は違う。これは遊びだ」 船とシャチの様子を観察した結果、主に攻撃に関わっているのは、特定された3頭のシャチのうちの 2頭だった、とルノーは言う。「たいていはこの2頭だ。大変な興奮状態になっている」と、彼はBBCに語った。「ただ、遊んでいるだけだ。とはいえ、ますます始末に追えないものになっている」 ===== シャチは遊んでいるつもりでも、その巨体は船舶を危険にさらす。 研究チームは現在、シャチの攻撃に関する情報を共有し、船の乗組員と協力して異常行動に関する情報を集めている。シャチに「攻撃」された船を検査し、3頭の目撃情報を探している。 エステバンは10月の時点で、シャチの怪我は治癒しているように見えると本誌に語った。シャチは通常、夏が終わればジブラルタル海峡を去っていく。これで3頭の体当たりが終わるのか、来年も繰り返されるのか、誰にもわからない。 =====