<大統領選でアメリカが混乱するなか、中国は選挙で選ばれた代表を議会から追放し、香港における唯一の平和的変革の手段を封じてしまった。これを放置すれば、アメリカの民主主義への攻撃に発展しかねない> 香港の議会に当たる立法会で11月12日、民主派議員15人が辞表を提出した。香港政府が前日の11日、反中国的姿勢を理由に同僚議員4人の議員資格剝奪を決めたことへの抗議行動だ。 これに先立ち、中国政府の立法機関である全国人民代表大会常務委員会は、香港の議員たちに中国への忠誠を求める次のような決定を行っていた。「香港独立」を主張・支持する、香港に対する中国の主権を認めない、外国や外部勢力による干渉を求める、その他国家安全保障を脅かす行為を行った場合、議員資格を失うというものだ。 中国は事実上、代議制民主主義による香港の統治を11日に終了させたのである。フィナンシャル・タイムズ紙のジャミル・アンダリーニは同日、「中国による香港の『再植民地化』は近く完了する可能性がある」と指摘した。 1997年に香港がイギリスから返還される前、中国は「一国二制度」の下で50年間の「高度な自治」を約束していた。だが、返還後はこの国際公約を公然と破り続けてている。なかでも今年6月30日に施行された香港国家安全維持法は、中国本土の役人がやりたい放題できるようにする内容であり、実質的に香港の法治はこれで死んだ。 中国は選挙で選ばれた代表を議会から追放することで、香港における唯一の平和的変革の手段を封じてしまった。一時は全人口の4分の1以上に当たる推定200万人が参加した大規模な抗議行動を支えた若者と中流層は、今後も抵抗を続けるはずだ。 現地で6カ月間、民主化運動を報道し続けたアメリカ人ジャーナリストのマイケル・ヨンが語ったように、中国は人々の「反乱」に直面している。反乱は一時的に沈静化することもあるが、ほとんどの場合は「形を変えて」復活すると、ヨンは言う。「勇気のある香港人は戦い続ける。アメリカは彼らを支援しなければならない」 中国の習近平(シー・チンピン)国家主席がこのタイミングで香港に手を出したのは、アメリカが大統領選の混乱に気を取られていると判断したからだ。もしトランプ大統領が反応しなければ、間違いなく他のターゲット、例えばアメリカそのものを狙うことも可能だと考えるだろう。いずれにせよ、習政権はアメリカの民主主義だけでなく、代議制民主主義による統治の概念自体への攻撃を強めている。 中国政府や共産党系メディアは嵐のような反米プロパガンダを発し続けている。特に11月3日の大統領選後の不確実性を、自国の統治形態のほうが優れている証拠として利用しようとしている。 ===== 大統領選当日、共産党系の大衆紙・環球時報の胡錫進(フー・シーチン)編集長は「アメリカは劣化している」とツイートした。同紙の社説も、アメリカの政治システムの「制度的問題」を指摘し、「アメリカのエリートは政治的な傲慢さに別れを告げ、集団的な反省をする時が来た」と主張している。 つまり、香港に残された代議制統治の最後の一片に対する習の攻撃は、自由社会全体に対する広範な挑戦の一部なのだ。 トランプは2019年の香港人権・民主主義法と20年の香港自治法に基づき、香港の自治を損なう動きに関与した習とその他の共産党幹部を制裁対象に指定すべきだ。この法律は制裁対象個人だけでなく、彼らと取引のある金融機関への制裁も認めている。 トランプは断固たる行動によって、アメリカは中国を恐れないと示すことができる。中国の悪行は政府・党のトップの指示であることを、トランプは明言すべきだ。 習は今回の大胆な動きで、香港を完全に抑え込んだと思っている。何らかの代償を支払わせなければ、次はアメリカの民主主義への攻撃を強めるだろう。 <2020年11月24日号掲載>