<トランプがぶち壊してきた多国間貿易の枠組みを見直し、CPTPPへの復帰を再考せざるを得なくなる> 11月15日、アジア太平洋地域の15カ国が世界最大規模の貿易協定に署名した。これにより、世界貿易の欧米離れと東アジアへのシフトがさらに加速すると予想される。この東アジア地域包括的経済連携(RCEP)は、2012年に中国の提唱によって始まり、その後なかなか交渉が進まなかったが、ドナルド・トランプ米政権が貿易保護主義を追求したことで、早期妥結の必要に迫られていた。アメリカはRCEPに参加していない。 RCEPでは、今後20年をかけて関税が段階的に撤廃され、税関手続きが円滑化される。域内の数多くの二国間貿易協定の代わりとして、ひとつの決まりの下に貿易を行えるようになる。RCEP経済圏は世界の人口およびGDP(計26兆2000億ドル規模)の約30%を占め、この成立により世界最大の自由貿易圏が誕生したことになる。 ピーターソン国際経済研究所の推定によれば、RCEPにより2030年までに世界のGDPは1860億ドル増加し、中国、韓国と日本が他の加盟国よりも大きな利益を得る見通しだ。日中韓のほかにオーストラリア、ニュージーランド、およびASEAN(東南アジア諸国連合)の加盟10カ国(ベトナム、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイとブルネイ)がRCEPに加盟している。インドは2019年まで交渉に参加していたが、中国製品の流入が国内市場に打撃をもたらすことへの懸念から参加を見送った。 注目される外交的な意味合い 既存の地域貿易協定によって既に関税が引き下げられていることから、RCEPの成立で貿易面にすぐに大きな変化が見られることはないだろうとアナリストらは指摘する。だが中国政府がアジア太平洋地域での影響力増大を狙うなか、RCEP成立の地政学的な意味合いを過小評価すべきではないだろう。シティリサーチは15日付の報告書の中で、「RCEPの持つ外交的な意味合いは、経済的な意味合いと同じぐらい重要なものかもしれない。これは中国によるクーデターだ」と指摘した。 トランプ政権は過去4年をかけて、アメリカの長年の貿易政策を撤回し、各種国際協定を破棄し、追加関税を導入。2017年には、バラク・オバマ前政権のアジア回帰政策の一環でもあり、世界最大の自由貿易圏となるはずだったTPP(環太平洋経済連携協定)から離脱した。アメリカを除くTPP参加国はこれを受けて、2018年に包括的かつ先進的TPP協定(CPTPP)に署名した。中国はこのCPTPPに参加していない。 ===== 米大統領選での勝利を確実にしたジョー・バイデンは、就任後にアメリカをCPTPPに復帰させるかどうかについて、まだ態度を明らかにしていない。だがアメリカにとって打撃となるRCEPの成立を受けて、米政府がCPTPPへの復帰問題に再び着目する可能性は高い。 From Foreign Policy Magazine