<夫婦の収入と家事分担がどちらも同レベルの「対等夫婦」の割合は、日本ではわずか1.9%しかない> 現在では学生世代の半分が大学に進学するが、1人ならまだしも子を2人大学に通わせるのは大変なことだ。2人以上の子を大学・大学院に行かせている世帯の年収分布を見ると、半分が1000万円を超えている(総務省『就業構造基本調査』2017年)。 確かに大変そうだが、一馬力ではなく二馬力(共稼ぎ)ならどうにかなるとも言える。大学生の親年代の所得中央値は、男性正社員は650万円、女性正社員は350万円ほどだ(同上)。夫婦の合算で1000万円にはなる。 さまざまなところで言われているが、夫婦の共稼ぎが求められる時代だ。できれば対等の収入があり、家庭内の家事労働を対等に分担することが望ましい。こうした、生きる上でのパートナーシップがある夫婦は、いつでも柔軟に役割をチェンジし、先行き不透明な時代を生き抜いていける。 収入が対等で、家事分担も対等。こういう夫婦はパーセンテージでどれほどいるか。ISSP(国際社会調査プログラム)が2012年に実施した『家族と性役割に関する調査』では、夫婦の家事分担と収入について尋ねている。この設問への回答から、目的の数値を割り出せる。 パートナーのいる25~54歳の女性を取り出し、「夫は自分と対等以上家事をする」「夫と対等以上の収入がある」と答えた人の割合を計算した。また双方の回答をクロスし、どちらにも当てはまる人の割合も出してみた(個票データを利用)。この数値が「収入が対等で、家事分担も対等」という夫婦の率に相当する。 <図1>は、日本とスウェーデンの比較図だ。両方の設問に有効回答をした人が母数で、結果を面積図で表している。 夫が対等以上家事をするという女性は、日本は32.4%、スウェーデンは53.8%となっている(赤色)。夫と対等以上稼ぐ女性の比率は順に5.6%、38.9%でこちらは差が大きい(青色)。 2つの正方形が重なった緑色のゾーンは、双方の条件を満たす女性の比重だ。夫が自分と対等以上家事をし、かつ夫と対等以上の稼ぎがある女性の比率で、日本は1.9%、スウェーデンは20.5%と出た。生きるパートナーシップがある「対等夫婦」の出現率は、日本は53分の1、スウェーデンは5分の1ということになる。家事分担と収入という2つの観点で見ると、ジェンダー平等の差が実に明瞭となる。 ===== 以上は2国の比較だが、41カ国の対等夫婦の比率を出すと<表1>のようになる。<図1>の緑色の割合だ。 日本の対等夫婦の比率は、調査対象国の中では最も低い。意識の上ではジェンダー観は薄くなっているというが、実態のレベルでみると未だにワーストであることが分かる。2012年の統計だが、この無様な位置は知っておいていい。 日本の場合、対等夫婦の女性のサンプルが少なすぎて検証できないが、他国のデータで幸福度とのクロスを見ると、多くの国でこの群の女性の幸福度は他より高くなっている。男女の役割には幅を持たせた方がよい。稼ぎのない女性はDV被害や貧困と常に背中合わせだし、家事スキルのない男性は定年後にはただのお荷物だ。日本では、妻に去られた(死なれた)男性の自殺率はものすごく高い。 日本は、男女の性役割分業で社会が築かれてきた経緯があり、仕事・家事の双方に求められるレベルが非常に高くなっている。両方をこなすのは難しく、どちらか一方に特化するやり方が通ってきて、未だにそれは強く根付いている。それなら2つの役割のレベルを下げてしまえばよく、最近言われるようになった「ゆる勤(時短)」「手抜き家事」などはそのための戦略だ。これが不可能でないことは、欧米社会のルポルタージュを読むと分かる(『ドイツ人はなぜ、年290万円でも生活が豊かなのか』〔熊谷徹著、青春新書インテリジェンス刊〕など)。 女性の社会進出の促進がスローガンとして掲げられるが、男性の「家庭進出」も伴わないと女性は「仕事・家事・育児」のトリプルの負荷を負うことになる。日本の現状はそうで、女性の家事時間は専業主婦もフルタイム就業者もあまり変わらない。 コロナ禍で在宅生活が長くなっている今が、夫婦の役割差を是正する良い機会だ。 <資料:ISSP「Family and Changing Gender Roles IV - ISSP 2012」> *本稿のデータは、上記調査の個票データを筆者が独自に分析して算出したもの。 =====