<宇宙網と脳の自己組織化は、同様のネットワーク力学の原理によって形成されている可能性がある、との研究が発表された......> ヒトの脳は宇宙と類似性があるのかもしれない......。マウスの脳内の神経細胞(ニューロン)の画像と宇宙をシミュレーションした画像を並べた2006年8月14日付の米紙ニューヨーク・タイムズの記事は、世界中で話題となった。そしてこのほど、その類似性が定量分析によって裏付けられた。 小脳の約690億個の神経細胞と1000億個の銀河 伊ボローニャ大学の天体物理学者フランコ・バッツァ准教授と伊ヴェローナ大学の脳神経外科医アルベルト・フェレッティ准教授の研究チームは、宇宙学と神経外科学の観点から定量分析を行い、銀河がつながる水素ガスの大規模構造の宇宙網とヒトの脳の神経回路網(ニューラルネットワーク)を比較した。 2020年11月16日にオープンアクセスジャーナル「フロンティア・イン・フィジックス」で公開された研究論文によると、両者にはその規模に27桁以上もの違いがあり、その構造がもたらされた物理的プロセスも本質的に異なっているものの、両者の構造には、同様の複雑性と自己組織化が認められたという。 ヒトの小脳には約690億個の神経細胞(ニューロン)があり、観測可能な宇宙には少なくとも1000億個の銀河があるが、神経細胞や銀河が脳や宇宙全体の質量に占める割合は3割にも満たない。脳の77%は水、宇宙の73%は暗黒物質(ダークマター)でできている。また、神経細胞も銀河もフィラメント(細かい糸状の構造)を介して互いに接続し、自己組織化されている点も類似している。 研究チームは、ヒトの大脳皮質および小脳と宇宙網のシミュレーションを画像で定量的に比較した。 シミュレートされた宇宙網の物質分布(左)と小脳で観測された神経体の分布(右) 「同様のネットワーク力学の原理によって形成されている可能性がある」 宇宙学で銀河の空間分布を分析する際に用いる「スペクトル密度」を計算すると、小脳の揺らぎ分布は1〜100ミクロンであった一方、宇宙網の揺らぎ分布は500万〜5億光年であった。両者の規模には大きな違いがあるものの、相対的な揺らぎ分布は類似している。 銀河(左)と小脳の神経網(右)の比較 また、1個の神経細胞や銀河に接続するフィラメントの本数も近似している。3800〜4700のサンプルをもとに宇宙網を分析したところ、各銀河には平均3.8〜4.1本のフィラメントが接続していた。一方、1800〜2000のサンプルをもとに大脳皮質を分析すると、各神経細胞に接続するフィラメントは平均4.6〜5.4本であった。 研究論文では、一連の研究結果をふまえ、「宇宙網と脳の自己組織化は、同様のネットワーク力学の原理によって形成されている可能性がある」と結論づけている。 The Universe Appears To Be a Lot Like the Human Brain