<アラブの盟主サウジアラビアは、イスラエルのネタニヤフ首相の訪問を否定しているが、湾岸諸国にはパレスチナ人の土地をイスラエルから取り戻すよりイスラエルと協力してイランに対抗することを重視する雰囲気になっている> サウジアラビアの外相は、高齢のサルマン現国王を支える陰の実力者ムハンマド・ビン・サルマン皇太子が、同国を訪問中の米国務長官マイク・ポンペオとともにイスラエル当局と会談したという報道を否定した。 ポンペオは、首都リヤドで開催されたG20サミットに出席するためにサウジアラビアを訪れている。この訪問は、ポンペオの国務長官としての最後の旅だと広く認識された10日間の中東・ヨーロッパ歴訪の日程に組み込まれていた。 ポンペオはサウジアラビア入りする前に、イスラエルを訪問していた。その目的は、米大統領ドナルド・トランプと、イスラエル首相ベンヤミン・ネタニヤフが推し進めたイスラエル寄りの政策の功績を祝うことだ。 今回の歴訪にはまた、アブラハム合意を不動のものとするのが狙いもある。2020年夏に締結されたアブラハム合意は、アラブ首長国連邦ならびにバーレーンとイスラエルの国交正常化を決めた歴史的合意だ。湾岸地域の他の君主国もまもなくそれに追随すると見られるが、なかでも最も重要な国がサウジアラビアだ。 サウジアラビアとイスラエルは長年、政治と諜報で協力してきたが、正式な外交関係は結んでいない。 イスラエルのメディアは11月23日、ネタニヤフがサウジアラビアを訪問し、ムハンマド皇太子ならびにポンペオと会談したと報じた。イスラエルの教育相ヨアブ・ギャラントは同日、軍が運営するアーミー・ラジオに出演して、ネタニヤフの訪問を認める発言をした。「会談が実現したという事実と、それがこうして不完全ながらも公表されたことは、きわめて重大な意味を持つ」 会談が本当なら歴史的事件 イスラエルのハアレツ紙とニュースサイト「ワラ」が報じたところによると、会談にはイスラエル諜報機関モサドの長官ヨシ・コーヘンも同席した。 するとイスラエル国防相で、2021年に首相就任が決まっているベニー・ガンツ(与野党連立の条件としてネタニヤフとの首相輪番制が合意されている)は、「我が国の首相がサウジアラビアを極秘訪問した情報を漏らすのは無責任な行為だ」と批判した。 サウジアラビア外相のファイサル・ビン・ファルハンはイスラエル側の報道を否定し、次のようにツイートした。「ポンペオ米国務長官による今回の訪問中に、ムハンマド皇太子とイスラエル当局が会談したと報じられているようだが、そのような会談は行われていない。同席したのは、アメリカとサウジアラビアの関係者だけだった」 会談が本当に行われたのだとすれば、イスラエルとサウジアラビアの首脳会談としては初となる。イスラエルとアラブ諸国の緊張緩和が遅々として進まないなかでは、きわめて重要な出来事だ。 ===== アラブ諸国は何十年にもわたり、イスラエルによるパレスチナ占領が解除されるまでは、イスラエル政府とは関わらないという姿勢をとってきた。しかし湾岸諸国の新世代リーダーたちは、アラブの同胞の問題であるとはいえ解決が難しいパレスチナ問題を遠ざけるようになっている。 そしてむしろ、敵国イランの動向を注意深く見守ると同時に、イスラエルやアメリカとの関係を深めることでもたらされる経済効果と防衛力強化に期待を寄せている。 サウジアラビアは、湾岸諸国の中でも難しい立場ある。同国は、イスラム教の二大聖地であるメッカとメディナを守る「二つの聖なるモスクの守護者」だ。パレスチナを公式に見捨て、パレスチナが主張する聖地エルサレムの領有権も回復しないままとなれば、イスラム諸国におけるサウジアラビアの名誉が大きく損なわれることになる。 「パレスチナは文句ばかり言う」? にもかかわらず、ムハンマド皇太子はこれまでと比べ、パレスチナ問題にさほど力を入れていないと言われている。2018年に訪米した際には、アメリカのユダヤ教団体トップに対して、トランプ米大統領が提案した中東和平計画をパレスチナは受け入れるか、さもなければ「黙る」べきだと語ったと伝えられた。 米ニュースサイト「アクシオス」によると、ムハンマド皇太子は、「パレスチナ指導部は数十年にわたり、次々と機会を見逃し、提示されたあらゆる和平案を拒絶してきた」と述べた。「パレスチナはいい加減、提案を受け入れて交渉のテーブルに着くか、あるいは、口を閉ざして文句を言うのをやめるべきだ」 (翻訳:ガリレオ)