<第一陣として発表されたバイデン政権の主要閣僚候補者は、民主党左派からも共和党からも文句が出ないベテラン中心に> ジョー・バイデン次期大統領が第一次主要閣僚候補は、バイデンが最高司令官として成功を収めるうえで欠かせない民主党内のある派閥の支持を得られた。その派閥とは党内でも左寄りの「進歩派」だ。 民主党内の急進的左派と共和党主導の議会上院の間で微妙なバランスをとるためには、綱渡りのような曲芸が要求される。そのことをよく知っているバイデンは、いわば「昔のお仲間」を呼び戻した。 バイデンは24日、次期政権の閣僚の一部として、候補者6人を正式に発表。「わが国と国民の安全を守るチームだ」と紹介した。 閣僚候補者名簿に名を連ねるのは、各分野で数十年の経験がある専門家、およびオバマ政権の元閣僚たち。民主党内のリベラルな勢力を満足させると同時に、閣僚人事を承認する上院の共和党議員との関係悪化を避けることができる人選になっている。 今のところ共和党からの反応は、好意的だ。 「よかったのは、バイデンが多くの点で極左勢力に抵抗していることだ」と、ベン・サッセ上院議員(共和党、ネブラスカ州)は言う。 バイデンが選んだ候補の多くは進歩派の民主党員にとっては第一選択肢ではないだろう。だが少なくとも今回発表された財務省、国土安全保障省、気候変動対策に関わる主要閣僚の候補については、賛同できる人選であることは明らかだ。議会や権利擁護団体のかなり急進的な左派のメンバーの一部からは、候補者を賞賛する声すらあがっている。 気候変動と戦う覚悟 バイデンは、オバマ政権で国務長官を務めたジョン・ケリーを、今度から閣僚レベルのポストに格上げされる予定の気候変動問題担当の大統領特使に指名した。ケリーは、バイデンとバーニー・サンダース上院議員(無所属、バーモント州)が設立した気候タスクフォースの議長をアレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員(民主党、ニューヨーク州)と共に務めた。 政権の気候変動対策を率いるポストにケリーを選んだことは、さまざまな民主党員から称賛された。 気候変動問題に包括的に取り組む「グリーン・ニューディール」法案をオカシオコルテスと共同でまとめたエド・マーキー上院議員(民主党、マサシューセッツ州)は、気候変動に取り組むうえで「ケリーをしのぐ人材はいない」と語る。この選択は「外交政策と国家安全保障に関する卓越したリーダーシップ」を反映している、とマーキーは付け加えた サンダースの2020年大統領選挙運動の元共同議長であり、グリーン・ニューディールを支持するロ・カーナ下院議員(民主党、カリフォルニア州)は、ケリーを「気候変動と戦う勇敢な指導者」と評した。 気候変動対策を政策の目玉として2020年大統領選にむけた民主党予備選に出馬したワシントン州知事ジェイ・インスリー(民主党)は、ケリーの指名を「優れた選択」と評価し、バイデンの決定は「科学に従って、地球を救い、何百万人もの雇用を創出しようとするバイデンの真摯な覚悟を再認識させるものだ」と述べた。 ===== 財務長官について、議会の多くの進歩派はエリザベス・ウォーレン上院議員(民主党、マサチューセッツ州)が選ばれることを望んでいたかもしれないが、ウォーレン自身もジャネット・イエレンを指名したバイデンに拍手を送った。承認されれば、オバマ政権下でFRB(米連邦準備理事会)初の女性議長になったイエレンは、初の女性財務長官になる。 「ジャネット・イエレンは財務長官としてまさに適任だ」と、ウォーレンは述べた。「最も成功したFRB議長の一人として、ウォール街の金融機関にも立ち向かい、ウェルズ・ファーゴ銀行に小口の顧客に対する不正営業の責任をとらせた」 移民を代弁するリーダー 「リボルビング・ドア・プロジェクト」「デマンド・プログレス」といったリベラル団体は、イエレンの起用を「進歩派の勝利」と位置付け、彼女は「正しい方向への大きな一歩を意味する存在だ」と語った。これらの団体は共同声明を出し、失業を減らすために赤字財政を支持し、気候変動に対処する政策を後押しし、銀行規制の強化を提唱し、ウェルズ・ファーゴの不正な営業慣行に「前例のない厳しい処分」を科したイエレンは、財務長官に適していると述べた。 「イエレンは銀行規制の厳格化を求め、ルールを破る相手には罰を与えることを恐れない人物であることを行動で示した。そのスタンスは、経済政策とは企業やウォール街ではなく一般の人々の利益を反映すべきであるという世論の大多数の意見と一致している」 移民問題を統括する国土安全保障省長官にバイデンが選んだのは、オバマ政権で同省の副長官を務めていたキューバ系アメリカ人弁護士アレハンドロ・マヨルカスだ。承認されれば、マヨカスは中南米系として初の国土安全保障省長官となる。 リベラル派の進歩派議員連盟で共同議長を務めるプラミラ・ジャヤパル下院議員(民主党、ワシントン州)は、この人選を「説得力のあるスマートな選択」と呼んだ。 マヨルカスは、移民活動家からも歓迎されている。 中南米系アメリカ人の政治団体「ラティーノ・ビクトリー」は、マヨルカスの指名は「バイデン・ハリス政権のあらゆるレベルで中南米系の権利を確保するための偉大な一歩になるだろう」という声明を出した。 「移民をアメリカの強みと見るリーダーが、ついに登場することになる」と、国立移民法センターのマリエレナ・ヒナカピー所長は付け加えた。 次期国連大使にリンダ・トーマスグリーンフィールドを選んだバイデンの選択は、党派を超えて支持された。トーマスグリーンフィールドは、オバマ政権とトランプ政権でアフリカ問題担当国務次官補を務めた。 ===== リベラルな投票行動を重ねてきたジェフ・マークリー上院議員(民主党、オレゴン州)は、トーマスグリーンフィールドと国務長官に指名されたトニー・ブリンケンを「アメリカの国際関係を軌道に乗せるために必要な、外交における経験と品性を備えている」と語った。 ビル・キャシディ上院議員(共和党、ルイジアナ州)は、ルイジアナ州出身のトーマスグリーンフィールドを祝福した。 国家安全保障担当大統領補佐官に選ばれたのは、バイデンの副大統領時代に国家安全保障顧問を務めたジェイク・サリバンだ。進歩派議員連盟のメンバーであるテッド・リュウ下院議員(民主党、カリフォルニア.)は、サリバンを「最高!」と評した。 世界を率いる用意 進歩派は、これまでのバイデンの選択に全体としては喜んでいるものの、一人だけ激しく反発している候補がいる。オバマ政権で大統領首席補佐官を務めた元シカゴ市長ラーム・エマニュエルだ。 オカシオコルテスのようなリベラル派は、2014年の黒人少年ラクアン・マクドナルド射殺事件に関わる警察の隠蔽工作にエマニュエルが関与していたことから、閣僚に入る資格はないと主張している。バイデンはエマニュエルを米通商代表に検討していると伝えられている。 それでも、これまでのところバイデンは、物議を醸す人物ではなく、身内の民主党と共和党の一部から歓迎される候補者に的を絞っている。 「アメリカが再び軌道に乗り、世界から逃げるのでなくその先頭に立ち、国際的交渉の議長役を務める準備ができたことを示再び強国として国際秩序の担い手となる心構えができていることを反映したチームだ」と、バイデンは語った。「敵には立ち向かい、同盟国は拒絶せず、アメリカの価値観のために立ち上がる用意がある」 バイデンは共和党主導の議会上院に対し、これら閣僚候補の迅速な承認を強く求めた。 「議会上院のみなさん。私は優れた候補者たちが速やかに承認されることを願っている」と、バイデンは語った。「そして、党派を超えて力をあわせ、誠意をもってアメリカのために前進することを願っている」