<アパートなどの借家に住む単身高齢者の割合は全国で3割を超え、都市部の東京23区では約半数にもなる> 人口の高齢化が進んでいるが、年金等の社会保障だけではなく、住まいの問題も懸念される。世帯の3割は借家住まいで、高齢になると賃貸を借りにくくなる。独り身の場合は特にそうだ。 孤独死ともなれば家主はたまらない。特殊清掃の費用がかさみ、次の入居者に貸し出す際は家賃を大幅に下げなければならない。家賃滞納に業を煮やして明け渡しの裁判に勝っても、歩くのもままならない老人を追い出すわけにもいかない。外に放り出したら生命の危険があると判断される場合、明け渡しの強制執行はできないことになっている。 老人には貸したくないという家主の思いは、太田垣章子氏の『老後に住める家がない、明日は我が身の漂流老人』(ポプラ社)という本を読むと痛いくらい分かる。だが高齢化・未婚化が進んでいるので、不動産屋を単身の老人が訪れることは少なくない。借り手がつかないと商売にならないので、招かれざる客であっても譲歩せざるを得ないのが現実だ。 借家住まいの独居老人がどれほどいるかは、総務省『住宅土地統計』から分かる。最新の2018年データだと、世帯主が65歳以上の世帯は1894万世帯だが、単独世帯か否か、持家か借家か、という観点で4つに区分し、比重を面積図で表すと<図1>のようになる。 単身世帯が3分の1を占め(横軸)、そのうちのまた3分の1が借家世帯だ。借家の単身高齢者世帯は214万世帯で、高齢者世帯全体の11.3%となる。2018年10月時点の統計だが、高齢化・未婚化の進行により、この割合は増えることはあってもその逆はない。 サービス付きの高齢者住宅(サ高住)に住んでいる人はどうなのか、という疑問もあるが、ここで分析しているのは主世帯(1住宅に1世帯の世帯)なので、サ高住の世帯は含まれないと考えられる。アパートなどに住んでいる単身高齢者が大多数と思われる。 ===== 地域差もあり、都市部では借家住まいの単身高齢者が多い。東京では、高齢者世帯の18.5%、単身高齢者世帯の45.2%にもなる。未婚が進み、かつ地価が高いので持家が簡単に手に入らないためだ。地域の人間関係も希薄なので、誰にも発見されぬまま孤独死するリスクも高い。気をもんでいる家主も多いはずだ。 東京都内の地域別にみると、もっと高い数値が出てくる。<表1>は、同じ数値を都内23区別に計算したものだ。 大都市の東京23区では、借家住まいの単身高齢者が多い。高齢者世帯に占める率が2割を超える区が多く、7つの区では単身高齢者世帯の半分を越えている。北区では、単身高齢者の6割が借家住まいだ。ここまで多いとなると、行政としても町内会や地域ボランティアを組織化して、定期的な見回りなどを実施しているだろう。 借家住まいの単身高齢者の量的規模を可視化したが、データで見るとかなり多いことが分かる。大都市ではむしろマジョリティだ。家主の側も、別居している子どもに定期的に様子見に来てもらう、管理会社に連絡を入れる、という条件を出しているのかもしれない。安否確認が途絶えたら鍵を開けて入ってもいいという承諾書をとっていることも考えられる。 他にも、電気・ガス・水道といったライフラインの利用状況を見る、トイレのドアにセンサーを設置し、一定期間開閉がなかったら管理会社に連絡がいくようにするなど、安否確認(孤独死防止)の策はいろいろある。ICTが進化しているので、それを精緻化するのは難しいことではない。 賃貸住宅の顧客は、以前は単身の若者だったが、今後は単身高齢者となる。孤独死防止の装置を備える費用は、ある程度は国や自治体が負担しなければならない。生活の基盤となる住居の保障は「公」の役割だ。 <資料:総務省『住宅土地統計』(2018年)> =====