<暗黒物質がほぼ存在しない銀河が見つかり注目されていたが、「大質量銀河に接近したことで、この潮汐力によって引きちぎられる『潮汐破壊』の影響によるものだ」との研究論文が発表された...... > 質量を持つが、電磁波を放射しないため光学的に直接観測できない「暗黒物質(ダークマター)」は、銀河の形成や進化において重要な役割を担っていると考えられている。 暗黒物質が集まり、集合体として成長すると、この重力の作用によって水素やヘリウムなどのガスが集まり、やがてガスが冷やされて高密度になると、ここから恒星が生まれ、恒星が集まって銀河が形成される。この理論によれば、暗黒物質から生じる重力がなければ、ガスが集まらず、銀河を形成できないはずだ。 ハップル宇宙望遠鏡の観測データを分析 しかし、2018年3月、暗黒物質がほぼ存在しない銀河「NGC 1052-DF2」が、高度547キロの低軌道を周回するハップル宇宙望遠鏡(HST)によって初めて見つかり、天文学者たちを大いに驚かせた。 2019年10月には、地球から4500万光年の位置で、暗黒物質がない2つ目の銀河「NGC 1052-DF4 」も発見されている。 豪ニューサウスウェールズ大学、スペインのラ・ラグーナ大学(ULL)、アメリカ航空宇宙局(NASA)らの共同研究チームは、ハップル宇宙望遠鏡の観測データを用いて「NGC 1052-DF4」が暗黒物質を持たない原因を分析し、「大質量銀河に接近したことで、この潮汐力によって引きちぎられる『潮汐破壊』の影響によるものだ」との研究論文を2020年11月26日、学術雑誌「アストロフィジカルジャーナ」で発表した。これによると、「NGC 1052-DF4」の近くにある巨大銀河「NGC 1035」の重力が「NGC 1052-DF4」を引き裂いており、この過程で暗黒物質が取り除かれているという。 暗黒物質がないのは潮汐破壊の影響による...... 研究チームは、ハップル宇宙望遠鏡の観測データをもとに、カナリア諸島ラ・パルマ島のロケ・デ・ロス・ムチャーチョス天文台に設置されているカナリア大望遠鏡(GTC)やテネリフェ島・テイデ天文台の80センチ望遠鏡(IAC-80)を用いて地上からの観測も補完させながら、「NGC 1052-DF4」の光と球状星団(恒星が球状に密集した集団)の分布を分析した。 その結果、「NGC 1052-DF4」の球状星団の空間分布は、これらの球状星団が母銀河からはぎ取られていることを示していた。これは潮汐破壊が起きたことを裏付けている。 また、光の分析により、「NGC 1052-DF4」から遠ざかる物質で形成される潮汐の尾も確認された。これもまた、潮汐破壊が起きたことを示す証左といえる。 研究チームがさらに分析したところ、「NGC 1052-DF4」の中心部はそのままで、恒星の質量のわずか7%程度しか潮汐の尾には存在しなかった。このことから、恒星よりも密度の低い暗黒物質がまず先に銀河からはぎ取られた後、現在は、外側の恒星も同様にはぎ取られ始めていると考えられる。 「『NGC 1052-DF4』に暗黒物質がないのは潮汐破壊の影響によるものだ」とする今回の研究結果は、銀河の形成や進化にまつわる従来の理論とも整合しており、天文学者間での議論はしばらく落ち着きそうだ。 Hubble Views Galaxy Lacking Dark Matter