<新型コロナ危機をきっかけに、アメリカに代わってEUの最大貿易国にのし上がった中国は大喜び。アメリカも中国の欧州進出に警戒感を高めるが> EUの最大の貿易相手国という新たな立場を、中国は経済の急成長による成果のひとつとして歓迎している。だが国際秩序における中国の台頭は、アメリカだけなく、他の西側諸国からも懸念と批判を引き起こしている。 12月4日の記者会見で、中国外務省の華春瑩(ホァ・チュンイン)報道官は、先日発表されたEUの貿易統計の結果を「中国とEUの両方にとって良いニュース」と称賛した。 欧州連合統計局(ユートスタット)が発表した統計によると、今年の1月から9月までの対中貿易額は4255億ユーロ(約5168億ドル)で、同時期の対米貿易額4125億ユーロ(約5010億ドル)を追い越した。 重要な月は7月だった。統計の発表に伴うユートスタットの説明によれば、「2020年の最初の9カ月間、EUの最大の貿易相手国は中国だった」。 「この結果は輸入の増加(+4.5%)によるもので、輸出は横ばいだった。同時に、対米貿易は輸入(-11.4%)、輸出(-10.0%)ともに大幅に減少した」 華報道官は、この結果は中国と欧州が強固な関係を築いている証拠だと述べ、EUは何年も前から中国にとって最大の貿易相手国となっており、この関係はさらに大きく発展する余地があると語った。 「互いに重要な貿易相手国である中国とEUは、経済において相互に補完的な役割を果たしている。協力関係にある広い分野における可能性は非常に大きい」 米中の熾烈な争い EUの貿易におけるアメリカと中国の順位の入れ替わりは、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が世界経済に打撃を与えるなかで起きた。新型コロナウイルス感染症は中国で最初に発生したが、中国は早い時期に流行を食い止め、貿易を再開させた。 だが他の国々、とくに西側諸国では新型コロナが荒れ狂い、感染者と死者の数は日々増え続けている。なかでもアメリカは最悪の状態だ。 中国とアメリカは国際舞台における立場を示すために世界各国に競って支援を提供し、時には相手を貶めるような動きもあった。 欧州諸国も新型コロナで大打撃を受け、国全体のロックダウンや日常生活の様々な混乱に苦しむなか、最新の貿易統計は「中国とEUの経済貿易関係の回復力と可能性を示している」と華は語り、この関係は欧州と中国のどちらにとっても幸先がいい、と主張した。 「中国とEUの貿易の急成長は、社会経済の発展を強力に後押しし、互いに国民の生活を改善した」と、華は述べた。 さらに、中国とEUが今年9月、農産物の相互貿易を促進するために地理的表示に関する保護協力協定に署名したことを指摘。「中国とEUの経済および貿易の協力関係をさらに拡大する」ための投資促進法に協議が進んでいると語った。 ===== 中国との協力のこのモデルは、ヨーロッパだけでなく、世界全体に適用される、と華は言う。 「今後、新たな開発パラダイムを発展させる一方で、中国はさらに経済を開放し、EUはじめ他の国々により多くの機会を提供するだろう」と、華は付け加えた。「われわれは、EUが貿易・投資市場の開放を続け、中国と協力して経済のグローバリゼーションと貿易と投資のための開かれた自由な環境を支えることを望む」。 19世紀に世界最大の経済大国といわれた中国は往年の地位を取り戻そうとしており、その勢いに、西側諸国では多くの人が驚き、狼狽している。 中国は現在、経済では世界第2位だが、第二次世界大戦後に中国共産党が政権を奪った時点では5位だった。中国は今後10年ほどで世界最大の経済大国になると予測されている。 バイデン政権で欧米が統一歩調? ヨーロッパではフランスやドイツ、イギリスといった国々が、中国の経済や人権の分野での強引な行動やアジアにおける地政学的紛争について非難の声を上げた。 だが一方で、フランス・ドイツとアメリカとの関係も良好とは言えなかった。ドナルド・トランプ米大統領は中国政府に対して好戦的な態度を取る一方で、ヨーロッパの同盟諸国との関係の見直しも望んでいた。アメリカの政権交代を来月に控え、EUはすでにジョー・バイデン次期米大統領との連携を目指す新たな戦略の立案を始めている。 EUの欧州委員会は2日、「グローバルな変化に向けたEUとアメリカの新たなアジェンダ」と題する11ページの文書を発表。「意見の近いパートナーとの新しいグローバルな同盟関係のかなめ」となる枠組みを提案した。 この新たな戦略において中国は「協力に向けた交渉相手であり、経済的な競争相手であり、制度的ライバル」であると位置づけられている。 また、EUはさらに強力になりつつある中国への対応が必要だとする一方で、貿易戦争を始めて国際市場を揺るがしたトランプ政権の対中政策を非難している。 「国際社会において中国が強引さを増していることによる戦略的課題に関し、開かれた民主社会であり市場経済であるEUとアメリカの意見は一致している。たとえ最良の対応についての意見が常に一致するとは限らないにしても」とこの文書には書かれている。 ===== バイデンはこれまで、自身の今後の中国政策についてほとんど明らかにしていない。だが、2日にニューヨーク・タイムズが報じたインタビューの中でバイデンは、トランプの対中通商政策も含め、短期間のうちに急いで新たな決断を下すことはないと示唆した。 「すぐに動くつもりはない。関税についてもそれは同じだ」とバイデンは述べた。拙速は避けるというわけだ。 それよりもバイデンは同盟国とともに「首尾一貫した戦略を立てる」ことを目指すと述べた。また同盟国に対しては、就任後の早い時期にアメリカが「同じページへと」立ち返る手助けをして欲しいとしている。 翌3日、中国共産党機関紙人民日報系のタブロイド紙「環球時報」は、立場や優先課題が異なるアメリカとEUが対中政策で足並みをそろえられるかどうかは疑問だとする論説を掲載した。 「ヨーロッパはアメリカとの新たな西側の団結を根っこではちゅうちょしているかも知れない。トランプ政権の過激な対中政策から言ってもそうだ。新たな摩擦は避けられないだろう」 「だが、西側の団結について定義する役割がヨーロッパ側に回り、一方でアメリカ側が決断を下す機会が減ってリソースを提供することばかり増えていった場合、アメリカ政府がそうした団結のあり方を受け入れることはないだろう」 また同紙は「中国の挑戦および中国がもたらした脅威」という考えは「大部分は想像の産物」だと切り捨てた。 米議会も中国に厳しい視線 だがワシントン政界では、中国の脅威はこれまでになく現実味を持って受け取られている。米議会の諮問機関「米中経済安保検討委員会」は1日、年次報告書を議会に提出。この中には米中関係の課題に関する575ページにわたるレポートも含まれていた。 レポートでは過去20年の委員会の歴史上初めて、中国がアメリカを「追い上げている」ことではなく「追い抜いている」ことに焦点を当てたという。 レポートによればヨーロッパは、中国が影響力拡大を狙う主要な舞台の1つだ。 中国外務省の華報道官は在ワシントンの中国大使館から本誌へのコメントの中で、同委員会について「中国に対するイデオロギー的な偏見に常にとらわれてきた」と主張。「委員会がこれまでにでっち上げてきたレポートの中の中国への非難中傷についても、事実に基づく根拠はない」と述べた。