<さまざまなサービスや電子機器にAIが使われている──。そんなニュースは日常的になったが、そのニュースもAIで作られる時代に> 「憧れの職業」の一つとして、常に上位に挙げられる「アナウンサー」。多くは放送局の職員でありながら、芸能人さながらメディアの表舞台に立つ花形職業である。しかし、そんな彼らも近い将来、AIに職を奪われてしまうかもしれない。 11月6日、韓国の総合編成チャンネルMBNの報道番組「MBN総合ニュース」で、韓国内初となるAIアナウンサー、キム・ジュハさんがTV画面に登場し注目を集めた。 AIキム・ジュハさんは、今年の9月からMBNオンラインに登場し、番組のユーチューブチャンネルなどで「キム・ジュナAIニュース」を配信していた。そして11月、満を持してテレビの本放送に出演する運びとなったのだ。 AI「キム・ジュハ」さんのモデルは、実在する女子アナウンサー「キム・ジュハ」さんだ。AI専門会社Money BrainがMBNとAIの共同開発をして誕生したという。 オリジナルのキム・ジュハアナウンサーの放送中の姿や動き、そして声をAIに覚えさせ、さらに5日間10時間ずつ計50時間、別撮りした映像を教え込ませた。初日の放送では、オリジナルとAIの2人のキム・ジュハさんが対談する「人間アンカー VS AIアンカー 勝者はどっち?」というコーナーも放送され話題となった。 今回開発されたAIアナウンサーは、1000文字の原稿のニュースを1分もあれば映像と音声を合体させて放送可能な状態にできるそうだ。さらに全身のショット、腰から上のショット、服装等17通りの姿からニュースに合ったイメージを選ぶことができるという。 他局も追随、局アナはリストラの時代? 韓国ではMBNに続き、ニュース専門チャンネルであるYTNも、イーストソフト人工知能研究所と共同で男性アナウンサーをモデルにしたAIアナウンサーを現在開発しており、来年にはお目見えする予定だという。韓国では今後、ますますAIアナウンサーが開発され登場していくことだろう。 このように続々とAIがニュースを読むようになってくると、人間のアナウンサーは減ってしまうのではないかと心配になるが、実はすでにその傾向はすでに始まっていた。 「2019年放送産業実態調査報告書」によると、2018年12月基準活動中のアナウンサーの数は694名(フリーアナ除外)であると記載されている。2014年には755名だったが、毎年減少傾向にあるようだ。 最近でいえば、韓国地上波放送局3社のうち、KBSは今年の新人アナウンサー採用はなく、昨年も全国(ローカル局含む)で3名のみ採用した。MBSとSBSに至っては、ここ2年間採用していない。 ===== AIアナでリードする中国はロシアに派遣まで 実は、報道分野に関しては、すでにAIが導入されている。2016年ごろから、国民日報、毎日経済新聞、ソウル経済新聞、韓国経済新聞などの新聞社では、データを入力すると、株式市場や不動産、天気予報などの原稿を自動で書いてくれるAI記者が活躍中だ。 また、今年4月からは、聯合ニュースが天気予報とPM2.5などのデータを把握し、自ら記事を書くAI記者を採用している。近い将来、ニュースは記事の作成もそれを読むアナウンサーも、人間に代わってAIがその役割を担う日が来るのは確実だ。 今回、韓国で史上初となるAIアナウンサーのTVデビューが発表されたが、世界初のAIアナウンサーは誰だかご存じだろうか? 実は2年も前に中国で登場している。 中国国営放送である新華社通信が、2018年11月中国で開かれた世界インターネット大会にてAIアナウンサーを発表し注目を集めた。こちらは、男性アナウンサーで、キム・ジュハさん同様、新華社通信に勤める実在のアナウンサーをコピーして作られている。 その後、昨年3月に新小萌さんという女性アナウンサーが正式TVデビューした。さらに、英語を得意とする男性AIアナウンサーも登場し、6月には、リサというロシア人のAIアナウンサーも発表している。新華社通信の発表によると、リサは中露外交70周年を記念して共同開発されたAIアナウンサーであるという。 日本にもAIアナはいるけれど もちろん、日本でも数人のAIアナウンサーたちが活躍している。有名なところでは2年前NHKの報道番組「ニュースチェック11」にて登場した「ニュースのヨミ子」さんだ。これは本物のアナウンサーをモデルにした中国や韓国とは異なり、かなりキャラクター化されている。それもそのはず、ヨミ子さんの外見を手掛けたのは、一世風靡したキャラクター「コップのフチ子さん」を生み出したタナカカツキが担当したそうだ。ヨミ子さんは、見た目もフチ子さんとよく似ている。 「ニュースチェック11」が去年放送最終回を迎え、「ニュースのヨミ子」さんは今、「ニュース シブ5時」という番組にて、その週のニュースランキングを紹介するコーナーを担当している。 ほかにも、今年2月にテレビ朝日が発表した「花里ゆいな」さん。AIベンチャーのSpateeが開発した音声AIアナウンサー「荒木ゆい」さんなどが活躍しているが、どちらも外見はアニメ調の画像で、韓国や中国のように実際に人間に代わってニュース番組に出演することは想定していないようだ。 毎年「AIに仕事を奪われ、無くなる職業」ランキングなど発表されている。一説によると10年後には約半分の職業が人間の手を離れ、AIが代わって働いてくれるようになるそうだ。そんなSF映画のような世界、まだまだ先の話だろうと思っていたが、実際中国と韓国ではすでにAIが表舞台の一端を担うようになってしまった。 たしかに、AIアナウンサーを雇用すると時間も費用も節約でき、その分より良い番組作りに生かせるかもしれない。それでもなお、AIより生身の人間アナウンサーを使うメリットはどこにあるだろうか。そして、今の自分の職業は、AIよりも人間でなくてはならない必然性はあるのだろうか? 改めて考えさせられる事例である。 ===== AIアナvs.人間のアナウンサー 11月6日、韓国の総合編成チャンネルMBNの報道番組「MBN総合ニュース」で、韓国内初となるAIアナウンサー、キム・ジュハさんがTV画面に登場し注目を集めた。 MBN News / YouTube