<ブレグジットの移行期間が終了する12月31日を控え、EUと交渉を続ける英政府だが、合意を得られない可能性が高い。そんななか、中国がイギリスに触手を伸ばしている> ブレグジット(英EU離脱)の移行期間が終了する12月31日を控え、通商協定なしの「合意なき離脱」の可能性が高まっている。それに伴うイギリス経済の弱体化を好機とみている国がある。中国だ。 ジョンソン首相は12月9日にEUのフォンデアライエン欧州委員会委員長と土壇場の会談を行ったが、合意できなかった(13日に期限が延期されたが、まとまらない可能性が高い)。(編集部注:13日、合意に至らなかったが、交渉をさらに継続することで合意) その直前の8日、中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報紙(英語版)はイギリス経済を救うため、中国に目を向けるべきだと訴えた。 イングランド銀行(英中央銀行)のベイリー総裁は11月、合意なき離脱の経済的衝撃は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)よりも深刻なものになると警告した。だが同紙は、中国にはイギリスの「迅速かつ持続可能な」経済回復を強力に後押しする力があると主張した。 イギリスにとって中国は最大の貿易相手国の1つ。英国家統計局(ONS)によると、今年第2四半期にはパンデミック中の電子機器やマスクの需要が追い風となり、最大の製品輸入国に躍り出た。 この数字は「両国間の経済貿易関係強化」の表れだと、同紙は指摘。「ブレグジットは中英協力の否定的要因にも、チャンスにもなり得る」として、全てはジョンソンと英政府の決定次第だと主張した。 同紙はさらに、イギリスはこれ以上「政府による差別」や「アメリカ主導の対中技術戦争」に加担してはならないと忠告した。ブレグジット後の経済的苦境からアメリカ依存を強める可能性が高いと判断して、クギを刺した格好だ。 既に英政府は今年7月、2027年までに第5世代(5G)通信網から中国の通信機器大手・華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)の機器を全て排除すると決定。11月には、来年9月から5G通信網へのファーウェイ製機器の新規導入を禁止すると発表した。 中国指導部はキャメロン元首相時代のような英中関係の「黄金時代」復活を願っているようだが、実際にはかつてなく困難な状況にある。 英議会では、原子力、通信、防衛、民生転用可能な軍事技術など、重要分野への外国企業の投資を阻止する権限を政府に与える国家安全保障・投資法案が審議されている。 ===== ラーブ外相は新疆ウイグル自治区における中国政府の政策に反対を表明。イギリス政府は香港の国家安全維持法と民主派議員の資格剝奪をめぐり、対中制裁を検討中だ。政府はまた、来年1月から香港住民が対象になる英国海外市民旅券所持者の英市民権取得に道を開くと約束している。 与党・保守党内からも、中国への強硬姿勢を求める圧力が強まりそうだ。4月に発足した中国研究グループはバイデン米次期大統領と歩調を合わせ、中国の影響力に対抗する「民主主義10カ国」(D10)連合の結成を主張した。 トム・トゥゲンハート下院議員を議長とする同グループは、アメリカが既に中国共産党員に科した制裁と同様の措置を提唱するとも予想されている。「民主主義国は中国へのアプローチを再考する必要がある」と、トゥゲンハートは声明で述べた。 「私たちは中国に国際的な義務を守らせることに注力すべきであり、そこには中国共産党の人権侵害と国際法違反に対応した一連の措置を準備することも含まれる」 中国が送る秋波にジョンソンはどう反応するか。 <2020年12月22日号掲載>