<ドイツのオスナブリュック大学の研究による、ワタリガラス(ハシブトガラスよりも一回り大きい渡り鳥)には大型の類人猿並みの物理的・社会的な能力があることが明らかになった......> 大型類人猿と同程度の知的能力 カラスは頭がいいということは、日頃の行動からよく言われているが、このほど発表された実験により、カラス、なかでもワタリガラス(ハシブトガラスよりも一回り大きい渡り鳥)には大型の類人猿並みの物理的・社会的な能力があることが明らかになった。実験結果は、自然科学や臨床研究に関するオンライン学術誌サイエンティフィック・リポーツに発表されている。 今回ワタリガラスの認識力を調べる実験を行ったのは、ドイツのオスナブリュック大学の認知科学者シモーネ・ピカ博士が率いるチームだ。同博士によると、これまでもさまざまな研究者が同様の実験を行ってきたが、その多くは、1つのタスクだけでワタリガラスの能力を評価するものだったという。 ピカ博士は科学誌サイエンティフィック・アメリカンに対し、1つのタスクだけによる実験では多くの場合、「人が何かを隠しているかを果たしてワタリガラスが理解できるか否か、しか分からない」と話した。 そこでより包括的なワタリガラスの能力を評価するため、同博士のチームは、物理的タスクや社会的タスクをこなす合計33種類のテストをカラスに行わせた。物理的タスクでは、カップの中に隠した物を見つけられるかや、数を理解できるかといった能力を評価。社会的タスクでは、実験者が出す合図を理解できるか否かといった能力を評価した。 これは、チームの1人である、マックス・プランク進化人類学研究所のエステル・ヘルマン博士が2007年に行った、チンパンジーやオランウータンといった大型の類人猿と人間の子どもの能力を比較した実験に倣ったものだ。 生後4カ月で人間の2歳半とほぼ同等の知的能力も 実験に使ったワタリガラスは、人工飼育された8羽だ。生後4カ月、8カ月、12カ月、16カ月に同じテストを実施した。実験の結果、ワタリガラスはわずか生後4カ月でほとんどのタスクをこなすことができ、その後、月齢の変化によって大きな能力の違いは見られなかった。 ワタリガラスの社会は離合集散型(個体が群れたり離れたりする社会)であり、また同じつがいで長期間過ごす一夫一婦制であるという。同博士らは、そのため生存や生殖には協調や連携が非常に重要であることから、早い段階で物理的・社会的に高い認識能力を身に付けるのではないかと考えている。 ===== さらに今回の実験では、カラスの能力は、ヘルマン博士が過去に実験を行ったチンパンジーやオランウータン(ともに成体)と同程度だったことが分かった。ヘルマン博士は、過去の実験結果と照らし合わせ、社会的タスクについては人間の2歳半の子どもがワタリガラスを上回るものの、物理面については、どのタスクも2歳半の子とワタリガラスとでほぼ同レベルではないかと考えている。 とはいえピカ博士はサイエンティフィック・アメリカンに対し、今回の実験について、対象が8羽のみだった点や野生のワタリガラスではなかった点について留意すべきだと述べ、「人間以外の動物における認知能力の進化をきちんと理解するには、今回のワタリガラスの実験のように、これまでよりも幅広い比較が必要だ。それにもっと多くの種にテストを行う必要もある」と話した。